子どもの権利条約、母子手帳に 世田谷の小学生の願いがきっかけ - 東京新聞(2018年11月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111602000283.html
http://web.archive.org/web/20181116120306/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111602000283.html

十一月二十日の「世界子どもの日」は、国連で「子どもの権利条約」が採択された日にあたる。この条約を、東京都世田谷区は来年度から母子健康手帳母子手帳)に掲載することを決めた。「条約の思いが広まって、暴力やいじめなどで悲しい思いをする子が減ってほしい」と願う一人の小学生の呼び掛けがきっかけだった。 (奥野斐)
母子手帳への掲載を訴えたのは、同区在住で白百合学園小六年の坂口くり果さん(12)。子どもの貧困や搾取問題に取り組む認定NPO法人「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」のキャンプなどに参加し、差別や虐待から子どもの基本的人権を守る国際条約の存在を知った。
条約は、各国政府や団体が訳して普及しているが、「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」版は子どもが主語。坂口さんが特に好きなのは、第六条「きみには、生きる権利がある」、第八条「きみは、世界で特別な一人」、第一二条「きみには自分の意見や気持ちを周りに伝える権利がある」という。
同時に、貧困や暴力で苦しむ子どもがいるのは海外だけではないことにも気付いた。「この条約を多くの人に知ってほしい」と考えた坂口さん。昨秋、予防接種を受けたときに母子手帳を見て「全ての親が持つ母子手帳に載せられたら」と思い付いた。
坂口さんと母親が区に問い合わせると、以前は掲載していたこともわかった。母子手帳は最低限の掲載内容を厚生労働省が規定しているが、自治体が独自で加えることもできる。世田谷区は、二〇一〇年度版まで子どもの権利条約を掲載していたが、ページ数を減らすレイアウト変更で削っていた。
坂口さんは、活動するNPOや同区の風間穣(ゆたか)区議を通じ、今年八月に保坂展人区長に面会。九月の区議会定例会で取り上げられ、保坂区長は「来年度版から必ず条約の記載をするよう指示をした」と答弁した。同区は毎年八千〜九千冊を配布。条文すべては困難とみられるが、来年度版から条約の骨子を掲載する予定という。
坂口さんは「子どもにも大人と同じ権利があるんだなと分かった。子どもも条約を知って『守られているんだな』と実感したら、いじめをすることも減ると思う。みんなに広げていきたい」と話した。

子どもの権利条約> 1989年11月20日に国連で採択され90年に発効。日本は94年に批准した。前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加などの包括的な権利を実現・確保するために必要な事項を具体的に定めている。