<自民党総裁選 改憲の行方>(4)参院選「合区」解消 矛盾放置 対立軸にならず - 東京新聞(2018年8月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201808/CK2018082102000165.html
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自民党が掲げる改憲四項目の条文案で、唯一選挙に関係するのが参院選の「合区」解消だ。自民党金城湯池とされる地方の定数増につながるため、「我田引水」との批判がつきまとうが、総裁選で対立軸とはなっていない。
合区は二〇一六年の前回参院選から導入。都道府県単位の選挙区のうち、改選一人区の鳥取、島根と高知、徳島をそれぞれ一つの選挙区にまとめた。人口の少ない地方と、都市部の選挙区の「一票の格差」を縮小するためだ。最近の参院選について最高裁が、投票価値の平等を求めた憲法一四条を逸脱するとして「違憲状態」と度々判断してきたことが背景にある。
これを根本的に転換しようとしているのが自民党の条文案だ。国政選挙の選挙区を設ける際に「地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案」するとして人口以外の要素も認め、特に参院選は各選挙区で「改選ごとに少なくとも一人」を選べるという規定を、憲法四七条に追記する内容。「一票の格差」が小さくなくても違憲と判断されにくくする狙いだ。
自民党は先の通常国会で、合区で候補者から漏れた現職を救済できる「特定枠」を一部導入する改正公職選挙法を成立させた。改憲の条文案は、憲法を変えることで合区の存在自体を消そうとしている。
合区対象の鳥取県が地盤の石破茂元幹事長(衆院鳥取1区)は、合区が「地方の発言力の低下につながり、東京一極集中に拍車がかかる」として、この改憲を「どうしてもやらなければならない」と強調する。
安倍晋三首相も、石破氏ほど積極的な姿勢は見せないが、ほかの改憲項目と同様に合区解消の改憲を進めるべきだとの考えに立つ。
だが、三年ごとに半数改選する参院選で、各都道府県から最低一人を選べるようにするのに、なぜ改憲が必要なのかという疑問の声も。一四条の平等原則や、国会議員を「全国民を代表」する存在とした四三条と矛盾する改憲という指摘もある。
この条文案だと参院議員は事実上「地域代表」という性格が強まるのに、参院の役割や権限をどう変えるかなどの議論も放置されたまま。今のところ自民党以外に賛成する政党は見当たらない。
総裁選立候補を目指す野田聖子総務相は、今月発表した総裁選向け政策で合区解消の改憲について具体的に言及していない。 (妹尾聡太)