自民改憲案 脱「人口比」を優先 揺らぐ「投票価値の平等」 - 毎日新聞(2018年2月17日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180216-00000129-mai-pol
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参院選挙区の「合区解消」のために自民党憲法改正推進本部が16日にまとめた改憲条文案には、人口だけを基準とする衆参の選挙区の区割り方法を変更する狙いが鮮明だ。地方の民意を「1票の格差」是正より優先する姿勢で、「国民は、法の下に平等」と定める憲法14条から導かれた「投票価値の平等」が揺らぎかねない。公明党でさえ冷ややかで、実現性は薄い。
推進本部の全体会合で、細田博之本部長は「合区した参院は大変な苦労があった。それを何とか変える根拠を作っていく」と条文案の趣旨を説明した。出席議員からも「現行の選挙制度では、都市部だけ定数が増えていく」などと支持する意見が相次ぎ、異論がほぼないまま会合は終わった。
自民党には2016年参院選から導入された合区への不満が強い。同党の支持基盤が強い改選数1の「1人区」の減少に直結するためだ。地元の鳥取県が合区対象となっている石破茂元幹事長も、自衛隊明記を巡る項目などと違って執行部の方針を評価する。「投票価値の平等は単に人口比だけで決まるものだろうか。人は少ないが森林や原野があり、国土保全上極めて重要だとか、平等と言うときに人口だけでは決めきれない」と記者団に語った。
だが、今回は党内の要請に応えることを急ぐあまり、多くの課題に目をつぶったとの指摘を免れない。14条に基づく「投票価値の平等」との整合性のほか、国会議員を「全国民の代表」と規定した43条と、参院議員が「都道府県代表」の色彩を帯びる条文案の整合性も問われることになる。
条文案は、衆院の区割りへの適用も意識している。衆院選挙区の区割りは、格差「2倍未満」を維持するためにたびたび変更されている。長年付き合ってきた支持者や自身の自宅が選挙区外になったりする区割り変更の頻繁さへの不満は、自民党以外の衆院議員や、変更対象選挙区の有権者にも強い。この項目によって、他党を議論に巻き込む思惑もありそうだ。
他党の賛成皆無 しかし、他党の賛成は皆無の状況だ。公明党井上義久幹事長は16日の記者会見で「1票の価値の平等が最も重要な、選挙制度の基本ではないか」と疑問を呈した。共産党笠井亮政策委員長は「民意を切り捨てる定数削減を強行する一方で、合区ができたら憲法に手を付ける。党利党略以外の何物でもない」と批判した。【小田中大、水脇友輔】