「一票の平等」原則と矛盾はらむ 合区解消を改憲条文化 - 東京新聞(2018年2月17日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018021702000161.html
http://archive.today/2018.02.17-002102/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018021702000161.html


自民党は十六日、党憲法改正推進本部の全体会合で、参院選「合区」解消のための改憲条文案を了承した。九条への自衛隊明記など改憲四項目のうち、具体的な条文案で意見集約に至ったのは初めて。年内の国会発議を目指し、四項目の議論を加速させたい考えだが、現段階で他党の理解は広がっていない。この日了承された条文案も、憲法一四条に基づく「一票の平等」などとの矛盾が指摘されている。(中根政人)
条文案は、「選挙に関する事項は、法律で定める」とした現行の四七条を加筆する形。国政選挙で選挙区の定数を決める際、人口以外の要素も勘案する規定や、参院選で「広域の地方公共団体」を選挙区とする場合「各選挙区において少なくとも一人を選挙」できるとの規定を追加。九二条も見直し、「広域の地方公共団体」が都道府県と読めるようにする。
これにより、都道府県ごとの選挙区で「一票の格差」が拡大しても、「違憲」や「違憲状態」と判断されにくくなることを期待している。全体会合では大きな異論はなく、条文案を了承。最終的な文言調整を含め、今後の対応を細田博之本部長に一任した。
合区解消は、改憲四項目の中でも党内で異論が少ない。まとめやすいテーマから先に進め、意見集約が順調に進んでいると印象づける狙いがあるとみられる。三月二十五日の党大会をめどに、四項目について党の改憲案を示したい考え。

◆公明は疑問視
自民党憲法改正推進本部が了承した参院選「合区」解消のための条文案は、人口に基づいて国政選挙の「一票の格差」を是正してきた従来の原則を転換する狙いがある。投票価値の平等を求める憲法一四条や、国会議員は「全国民を代表」する存在とした四三条との矛盾を指摘する声がある。
条文案では、地方の声を国政により反映させるとの理由で、参院選挙区を事実上、都道府県単位とする。格差拡大につながりかねないが、一票の平等を求める一四条は維持される。岡田直樹・同本部事務局長は「(一票の平等の)適用除外のような形」と説明する。
だが、公明党北側一雄憲法調査会長は十六日、「(国政選挙に関する事項を定めた)四七条を触るだけで『各都道府県から議員を出していい』というのはどうなのか」と疑問視。積極的に賛成する声は他党から聞こえてこない。法改正で対応可能との意見も強い。
参院議員を各都道府県から一人以上選べば「地域代表」の性格を帯びる。だが四三条は見直さない。ここは参院の権限縮小ともかかわるデリケートな論点で、議論を避けたといえる。岡田氏は「全国民の代表であることは紛れもない事実」とするが、生煮えのままで条文化した感は否めない。
自民党が強い地方の参院選挙区で、定数を増やすための「党利党略」との批判もある。 (生島章弘)

憲法14条> すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(2項、3項略)

憲法43条> 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。(2項略)