自民「合区」解消 憲法改正とは関係ない - 琉球新報(2018年2月20日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-668454.html
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自民党憲法改正推進本部が参院選の「合区」解消に向けた改憲条文案を了承した。9条など改憲を目指す4項目のうち、条文案がまとまったのは初めてだ。
二つの県を1選挙区にする合区は2016年の参院選で導入された。それ以前は各都道府県に一つ以上の選挙区があった。参院選後、「地域住民の声が国会に適切に反映されない」などとして解消を求める方向性は定まっていた。
さらに改憲本部の合区解消案は、1票の価値の平等や衆参両院の役割分担などの重要な論点に応えていない。拙速に改憲に結び付けるのでなく、まずは国会議員の定数の見直しなど、現行憲法の下で可能な方法を探る必要がある。
改憲本部の合区解消案は改選ごとに各都道府県から最低1人を選べるようにすることが柱だ。国政選挙制度の根拠となる憲法47条を改正し、行政区域や地域的な一体性などを「総合的に勘案」して定めると明記する。
16年の参院選では鳥取・島根と徳島・高知の県境をまたいで合区となった。その結果、島根を除く3県で投票率が過去最低となった。有権者の関心の低下を招いたからだ。人口減少が進む地方で、声をどう国政に伝えていくかは重要な課題だ。
ただ、憲法論議としてはこの条文案には疑問が残る。参院に地域代表の意義付けをするならば、衆参両議院は「全国民の代表とする」という43条との整合性が問われる。「法の下の平等」を定めた14条に基づく「1票の価値の平等」はどうなるのか、という論点もある。
もし自民党参院は「地域代表」、衆院は「全国民の代表」と役割分担を図ろうというのなら、まだ分かる。そうであれば衆参両院が憲法上ほぼ対等な権限を持つ現行規定も議論されるべきである。これらの抜本的な論点を避けてまとめられた条文案では、自民党が強い地方の選挙区を守ろうとする党利党略だとの批判も出るだろう。
合区も、17年衆院選で定数を0増10減としたのも1票の格差の是正策であった。それを止めようとする今回の素案は1票の格差憲法違反に問われないようにする意図があるのではないか。
安倍晋三首相は国会答弁で、戦力不保持を定めた9条2項を残したまま自衛隊の存在を明記する「加憲」が妥当だと踏み込んだ。自民党改憲論議には真の狙いとする9条の改定の前に、国民の抵抗が少ない条項で「お試し」をしたい思惑も見える。
国の最高法規である憲法の改正には、その目的と効果、憲法全体としての整合性、国民意見など広く精緻な議論が必要だ。衆参両院は近く今国会での憲法審査会を再開する。合区解消は現憲法下でできる。そして憲法については広く国民を巻き込んだ議論を進めねばならない。