(余録)難関で知られた昔の中国の官吏登用試験… - 毎日新聞(2018年2月7日)

https://mainichi.jp/articles/20180207/ddm/001/070/181000c
http://archive.today/2018.02.07-001515/https://mainichi.jp/articles/20180207/ddm/001/070/181000c

難関で知られた昔の中国の官吏登用試験、科挙(かきょ)にも出題をめぐるトラブルはあった。宋代の成都の地方試験でのことだ。ある受験生が問題がおかしいと指摘し、答案に用いるべき文字について問い合わせた。
たまたま出題者が昼寝中で、応対した試験官がいいかげんに答える。翌日、騒ぎになって出題者に問いただすと話が違い、激怒した受験生で試験場は大混乱に。「私の3年をむだにした」と叫ぶ受験生らに試験官が殴打されたという。
村上哲見(むらかみ・てつみ)さんの「科挙の話」によれば、騒動の首謀者は捕らえられたが、試験官らの慰労宴では騒ぎを風刺した寸劇が上演された。受験生もすぐに釈放される。科挙は3年に1度だったが、たとえ1年でもむだにされてはたまらない。
阪大、京大と続いた昨年の入試の出題ミスで、今まさに入試のまっただ中という受験生も心穏やかならぬものがあろう。今度は8年前の京大の入試問題の不備も指摘されたが、すでに解答用紙も処分されていて、すべては後の祭りだ。
たとえ大学でも人のやることに誤りはあろう。だが情けないのはその是正に8年は論外として、先の2件で1年近い時を要したことだ。真理の前で謙虚でなければならない大学は「1年をむだにした」の声を深く胸に刻むべきだろう。
どれも予備校講師の指摘で明るみに出た出題ミスだが、大学が早くからモデル解答例を示していればミスへの対応も素早くできたろう。真理に対して開かれた場である大学の姿を受験生に示すべき入試である。