(余録)「 古典学部が焼け落ちたらどうなるでしょうか?」… - 毎日新聞(2019年11月8日)

https://mainichi.jp/articles/20191108/ddm/001/070/113000c
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「古典学部が焼け落ちたらどうなるでしょうか?」。これは英ケンブリッジ大学古典学部の入試問題という。J・ファーンドン著「世界一『考えさせられる』入試問題」(河出文庫)が掲げる難問奇問の一つだ。
「自分を利口だと思いますか」「自分の腎臓を売ってもいいでしょうか」「あなたならばリンゴをどう説明しますか」「なぜ世界政府はないのでしょう」「世界に砂粒はいくつありますか」「国内と海外の貧困、注目すべきはどちら?」
同著が集めた英名門大の面接試験の質問だが、受験生なら思わず試験官の顔を見返すに違いない。もしもそこに座っているのが同世代の学生アルバイトだったら……。自分の知力を絞った解答をちゃんと採点できると思えるだろうか。
大げさにいえば、そういうことだろう。民間英語試験が延期された来年度からの大学入学共通テストで、今一つ受験生を不安にさせている国語と数学の記述式試験である。採点はアルバイトも使うという民間業者が受注しているのだ。
すでに試行調査で採点者により評価のぶれが出るのも分かっている。そもそも50万人が受験する全国一律テストで公平な採点はどだい無理で、論述や表現力の試験は国立大の2次試験のように必要に応じ大学ごとに行うべきでないか。
だが文部科学相は「品質の良い採点」の体制を整え予定通り導入するという。では“試験官”への逆質問である。「一律のマニュアルで機械的に採点するのなら、論述式試験をする意味があるでしょうか?」