https://mainichi.jp/articles/20180808/ddm/005/070/090000c
http://archive.today/2018.08.08-001007/https://mainichi.jp/articles/20180808/ddm/005/070/090000c
入試の名のもとに、これほど大規模な不正がまかり通ってきたことにあきれる。
東京医科大の不正入試問題で、同大から調査を委託されていた弁護士が報告書を公表した。
報告では、問題発覚の発端となった文部科学省の前局長の息子が不正に合格したことに加え、女子や3浪以上の多浪の男子受験生が不利になる得点操作も確認された。
操作対象は女子と多浪生、同大の卒業生の子供ら「関係者」だ。2次試験の小論文で女子と4浪の男子は機械的に加点せず、現役生や1〜3浪の男子に10〜20点加点していた。
関係者枠の受験生には1次試験で加点し、今春の入試では6人の受験生に最大49点が加算されていた。
女子は医師になっても出産や育児などで辞める。多浪生は学業が伸び悩む。そんな不合理な理由で「排除」されていた。卒業生の子供らは、受け入れることで寄付金を多く集めたかったというのが理由だ。
操作は、前理事長と前学長の判断で行われていた。2人は不正合格した受験生の親から謝礼を受け取ることもあったという。大学にとって最も重要な入試で、このようなよこしまなことが通ることに病理がある。
調査では、得点操作が少なくとも2006年以降行われ、推薦入試でもあったことが判明している。
こうした不正がなぜ許されてきたのか。ガバナンスが働かなかったことが理由だろう。
本来、理事長は経営の責任者であり、入試を含めた教学部門は学長に責任と権限がある。両者のバランスが適正な大学運営の要だ。前理事長は学長経験者で、実質的に教学と経営の両方の権限を持っていた。
さらに、理事長らの暴走を許してきた理事会も問題だ。理事16人のうち13人が同大出身者か関係者で、物言えぬ体質があったという。
こうした大学内の機能不全が不正入試を続けてきた原因だろう。身勝手な大学運営と言わざるを得ない。
弁護士の調査はこれで終了するというが全容は解明されていない。
不正な入試で、同大を不合格になった受験生は、すでに別の道を歩んでいるはずだ。同大は、追加合格を検討するというが、それで責任を果たすことにはならない。