一票の不平等 政治の怠慢には厳しく - 東京新聞(2019年10月23日)

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今夏の参院選は「違憲状態」-高松高裁がこう断じたのは、国会が抜本改革の約束を果たさなかったからだ。一票に三倍もの格差がある状態を放置してはいけない。政治の怠慢には厳しくありたい。
三倍の格差とは、ある人が一票なら、ある人は〇・三三票しか持っていないのと同然だ。著しい不平等だといえる。高松高裁は判決で「三倍の投票価値の格差は常識的に考えても許容しがたい」と述べた。今回の参院選は定数六増(埼玉選挙区二、比例四)の改正をしたものの、「弥縫(びほう)策にすぎない」とも。厳しい指摘だ。
もともと最大格差が三・〇八倍だった二〇一六年の前回参院選最高裁は「合憲」と判断していた。「徳島・高知」「鳥取・島根」という初の合区導入と「十増十減」により、五倍前後で推移していた格差が縮小したからだ。そのうえ、国会が一九年参院選に向け「制度の抜本的な見直しについて必ず結論を得る」と約束し、改正法の付則に明記した。これを最高裁が「立法府の総意」と高く評価した経緯がある。
判決後に参院与野党選挙制度改革の議論はした。自民は「憲法改正による合区解消」を主張し、公明や野党は「全国をブロックに分けた大選挙区制、比例代表制」などをそれぞれ主張した。結局は双方、譲らず場当たり的な対応に終わってしまった。
比例代表を四増したところで、不平等解消には何の意味もなさない。むしろ比例で優先的に当選できる「特定枠」を設けたのは、合区対策の抜け道であろう。
根本的な解決策になっていなかったのだから、今回「違憲状態」としたのも当然である。しかも一四年の最高裁判決では「参院選の投票価値が衆院選より後退してよい理由はない」とも述べていた。一七年の衆院選は格差が二倍以内に収まっているのだから、参院選の三倍を許容できるはずもない。
「合区拡大は弊害がある」との意見もあるが、合区にこだわる必要もない。都道府県単位を離れた新たな選挙制度を検討することでもよいのだ。
むしろ、ブロック制など大胆な改革を断行しないと、半数改選という制約のある参院選では、効果的な結果が期待できないのではなかろうか。
この訴訟は全国十四の高裁・高裁支部に一斉提訴され、順次判決が続く。広い裁量権を国会に認めた過去の最高裁判決が、国会の免罪符になっては困る。