https://mainichi.jp/articles/20171007/ddm/005/070/114000c
http://archive.is/2017.10.07-003750/https://mainichi.jp/articles/20171007/ddm/005/070/114000c
今年のノーベル平和賞が、核兵器禁止条約の制定を推進した非政府組織(NGO)連合である核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与されることになった。
「核なき世界」の理想を実現するために後押ししようというノーベル賞委員会の強いメッセージである。
草の根による国際連携の取り組みが評価されたことに注目したい。
ICANは、核兵器廃絶を目指す各国のNGOが集まって2007年に発足した。現在は約100カ国の400団体以上が参加している。
日本からは「ピースボート」共同代表の川崎哲氏が国際運営委員の一人として加わっている。広島や長崎の被爆者で作る日本原水爆被害者団体協議会とも連携してきた。
受賞の知らせにICANは「広島と長崎のヒバクシャ」への授賞でもあるとコメントした。被爆の悲惨な実態を世界に訴え続けてきた活動への評価でもある。
同時に北朝鮮の核開発で緊迫する世界の現状への警告という意味を持つ。ノーベル賞委員会は授賞理由の中で北朝鮮の名を挙げ、核拡散が深刻な脅威になっていると指摘した。
ICANのフィン事務局長は「核による脅しも核開発も違法であり、中止すべきだ」と、対立を激化させている北朝鮮の金正恩政権とトランプ米大統領にメッセージを送った。
ICANの活動は、オーストリアなど多くの非核保有国を動かし、今年7月に122カ国の賛成で採択された核兵器禁止条約に結実した。今回の決定はこうした国際世論の広がりを反映したと考えられる。
また、核削減が進まない現状への警告と受け止めたい。米国やロシア、中国などの核保有国は署名を拒否している。ノーベル賞委員会は、核保有国をいかに巻き込むかが今後の課題であるとして、国際社会の取り組みを促した。
日本政府は、韓国や豪州、欧州諸国とともに核兵器禁止条約の交渉に参加しなかった。米国の同盟国であり、自国の安全保障を米国の「核の傘」に依存している現実と矛盾するという理由からだ。
世界で唯一の被爆国として、今回の決定を歓迎したい。であるからこそ、日本の核兵器禁止条約への不参加が残念でならない。