ICAN平和賞 核保有国は耳を傾けよ - 東京新聞(2017年10月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017100802000129.html
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ノーベル平和賞を受ける国際非政府組織(NGO)の活動を支えたのは、核の悲惨さを訴える被爆者たちの証言だった。核保有国は核廃絶に向け、耳を傾けてほしい。
ノーベル平和賞が贈られることが決まった、核兵器廃絶国際キャンペーンICAN(アイキャン)は、二〇〇七年にオーストラリアで設立され、約百カ国、四百七十団体が参加している。日本からも七団体が参加している。
今年七月、国連で百二十二の国・地域が核兵器禁止条約を採択した。大量破壊兵器である核兵器を永久に非合法化する内容だった。
ICANのメンバーは、この条約採択に向け、被爆者の証言を聞く会合を開き、各国政府に直接働きかけるなど実現に貢献した。
ICANは平和団体だけではなく、環境、人権、開発問題などさまざまな分野の団体による地球規模の集まりだ。四十、五十歳代が中核となっている。スタートは「被爆者の話を聞くこと」(フィン事務局長)だったという。
軍縮の動きがなかなか進まないのに、逆に北朝鮮の核開発が急ピッチで進み、再び核の惨禍が起きるのではないかという危機感が高まっていることも、ICANの活動の背景にある。
保有国と、その核の傘に依存している国々は、核兵器によって国家の安全が図られ、平和が維持されると主張している。いわゆる「核抑止力による平和」だ。
しかし核兵器が使われた場合、いかに非人道的で、悲惨な結果をもたらすかという広島、長崎の被爆者たちの具体的な証言が、ICANの活動を通して、「核安保論」を乗り越えて世界を動かし、歴史的な核兵器禁止条約につながったといえるだろう。
ただこの条約には、核保有国や、日本をはじめとする米国の核の傘の下にいる国々は参加しておらず、賛成国の多くも、まだ署名していない。
ノーベル賞委員会は授賞理由として、北朝鮮の国名を挙げながら、「より多くの国が核兵器を手に入れようとしている」と指摘し、「核兵器は人類と地球上の全ての生物にとって持続的な脅威」と訴えた。そして、核保有国に対して「核兵器削減への真剣な交渉開始」を求めている。条約発効を後押ししたい、という切実な願いがこもっている。
これこそ、世界が求めていることだ。核兵器保有国は、率直に耳を傾け、動きだす時が来ている。