「唯一の被爆国 道義的な責任」 サーローさん 日本の核政策転換を訴え - 東京新聞(2017年12月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017121002000123.html
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オスロ=沢田千秋】今年のノーベル平和賞を受賞する非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長(35)らが九日、ノルウェーの首都オスロで十日の授賞式を前に記者会見した。ICANの活動に協力し、被爆者として初めて授賞式に臨むカナダ在住のサーロー節子さん(85)も出席。「核兵器は受け入れられない」と、世界に核兵器の非人道性を直接訴える必要性を強調した。
サーローさんは「かつて、私たちは日本が神の国だと洗脳されていた。しかし、広島、長崎に原爆が落ちた後、日本は降伏した」と、広島で被爆した当時を回想。授賞式の演説で、体験の詳細を語ることを明らかにした。その上で「被爆者は焦土から立ち上がり、人生を立て直した後、受け入れがたい苦しみを経験した。同じ苦難を誰にも経験させてはならないと願い、核廃絶を決意した」と述べた。
米国の「核の傘」に頼り、核兵器禁止条約に署名しない日本政府を「トランプ米大統領と同調し、尊敬できない」と批判。「多数の日本国民は核廃絶を支持している。核兵器の本当の恐ろしさを知る唯一の被爆国として、日本には核廃絶を目指す道義的責任があり、変わってほしい」と、政策転換を求めた。

◆核五大国は欠席か
ノルウェー国営放送NRKによると、米、英、仏、ロシア、中国の核保有五大国の駐ノルウェー大使は全員、授賞式を欠席する見通し。核兵器禁止条約に対する反発が背景にあるとみられ、サーローさんは「あらゆる方法で条約を無視する核保有国の行動は残念だ」と述べた。
フィン氏も「私たちは今、明確な選択を迫られている。核兵器の終わりか、人類の終わりかのどちらかだ」と強調。世界中の市民に「核兵器禁止条約の発効を実現させてほしい」と呼び掛けた。平和賞の賞金九百万スウェーデンクローナ(約一億二千万円)は「今後千日間、世界中で条約発効に向けた活動をするために使いたい」と笑顔で語った。
授賞式にはICAN国際運営委員の川崎哲(あきら)さんや、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中熙巳(てるみ)代表委員(85)=埼玉県新座市、長崎で被爆=、藤森俊希事務局次長(73)=長野県茅野市、広島で被爆=、広島市松井一実(かずみ)市長、長崎市の田上(たうえ)富久市長も出席する。

<サーロー節子さん> 32年広島市生まれ。トロント大大学院修了。13歳のとき広島で被爆し、姉やおいを失う。55年にカナダ人と結婚し、同国に移住して核廃絶運動に尽力。これまで国連総会の委員会など世界中で開かれる国際会議で、被爆証言を重ねてきた。カナダ政府が民間人に贈る最高位勲章オーダー・オブ・カナダを受章した。(共同)