少年法対象年齢引き下げの是非 法相が検討を諮問 - NHKニュース(2017年2月9日)

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金田法務大臣は法制審議会に対し、現在は20歳未満となっている少年法の保護の対象年齢を、18歳未満に引き下げるべきか、是非を検討するよう諮問しました。
この中で、金田法務大臣は法制審議会に対し、現在は20歳未満となっている少年法の保護の対象年齢を、18歳未満に引き下げることの是非や、若年層を含む犯罪者の処遇の見直しについて、議論を始めるよう諮問しました。
少年法の保護の対象年齢の引き下げをめぐっては、法務省が、これまでに省内の勉強会などで行った議論で、「選挙権を得られる年齢が18歳に引き下げられたのと整合性をとるべきだ」という賛成意見と、「保護の対象年齢を引き下げれば18歳と19歳の人の立ち直りに向けたきめ細かな処遇が行われなくなる」という反対意見の両論が出ています。
法制審議会は、こうした状況を踏まえ、少年法の保護の対象年齢の引き下げなどについては、刑事法制の幅広い分野にわたる議論が必要だとしていて、答申までは1年以上かかる見通しです。
少年法 その目的は? 手続きは?
少年法は、精神的に未熟な少年を成人と同じように処罰するより再び罪を犯さないよう立ち直らせることを目的にしていて、20歳未満を保護の対象にしています。
20歳未満の少年が事件を起こした場合、いったん家庭裁判所に送られ、審判を始めるかどうかや、保護観察や少年院送りなどの保護処分にするかどうかを裁判所が判断します。
手続きは、非公開で少年に反省を促したり再犯を防ぐための指導も行われます。
一方、16歳以上の少年が殺人などの重大な事件を起こした場合には、原則として検察に送り返され、起訴されますが、成人より刑を軽くする規定が設けられています。
また、20歳未満の少年の事件について、警察や検察は、少年法の規定を踏まえて匿名で発表し、報道機関も原則として匿名で報道しています。
引き下げに賛成 「犯罪の抑止につながる」
少年による殺人事件の被害者の遺族は、少年法の保護年齢の引き下げが犯罪の抑止につながると訴えています。
千葉県成田市に住む、澤田美代子さん(60)と容之さん(63)の夫妻は、9年前に銀行員だった次男の智章さん(当時24)を亡くしました。
智章さんは帰宅途中に、当時19歳の少年が運転する軽トラックに後ろからはねられ殺害されました。
少年は、動機について「相手は誰でもよかった。父親を恨んでいて、迷惑をかけたかった」と述べたうえで、20歳未満は刑が軽くなることを知っていたことも裁判で認めました。
夫妻は、無期懲役を求めましたが、成人より刑を軽くする少年法の規定によって懲役5年から10年の不定期刑となりました。
美代子さんは「『少年法の壁』を感じ、本当に無念でした。ほんの何か月かの違いだけで20歳未満となり、刑が軽くなるとわかったうえでの犯行で許せませんでした」と話しています。
美代子さんは、今も智章さんのために1日3回食事を用意して遺影に供え、日々の出来事などを語りかけています。
同じような事件が二度と繰り返されないよう、少年法の対象年齢を引き下げてほしいと訴えています。
美代子さんは「車の運転免許は18歳で取得でき、教習所でも運転は人命にかかわることを教えられます。18歳以上であれば事件を起こした責任を理解しているはずです。少年法で保護されなければ名前も公表されるので犯罪の抑止につながります」と話しています。
引き下げに反対 「再犯の防止に逆効果」
少年院に入所した経験のある男性は、少年法の対象年齢の引き下げは再犯の防止に逆効果だとして反対しています。
神奈川県に住む大山一誠さん(37)は、母子家庭で育ち、母親から暴力をふるわれたことで、中学生のころから非行を繰り返すようになりました。そして18歳の時に傷害事件を起こし逮捕されました。
その後、少年法に基づいて家庭裁判所の審判を受け少年院に送られた結果、信頼できる教官に出会い、親身な指導を受けて立ち直ることができたといいます。
今は個人で水道工事業を営み、マンションの配管工事を行ったり、住宅の水漏れの相談に乗ったりするなど、仕事に打ち込んでいるということです。
大山さんは「少年院で親身に相談に乗ってもらい、反省する時間を持てたことで自分を見つめ直せました。それまでは親や世の中を恨んでいましたが、180度考え方が変わりました」と振り返っています。
こうした経験から、かつて入所していた少年院の運動会や盆踊りに参加して入所者の相談にも乗っていて、少年法のもとで立ち直りのための教育を受けられることの大切さを感じているといいます。
大山さんは「18歳や19歳では人生に対する責任や重みに気付かない部分があるので、教育でどうにか立ち直らせてほしい。少年法の対象年齢を引き下げると、教育を受けずに刑罰だけを受けて罪の重みを感じないまま社会に出てしまうことになり、再犯を防ぐうえで逆効果だ」と話しています。