9条問題、言葉で操る 「戦闘」は問題になるから「武力衝突」に - 東京新聞(2017年2月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020902000132.html
http://megalodon.jp/2017-0209-0929-39/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020902000132.html

稲田朋美防衛相は八日の衆院予算委員会で、南スーダンの現地勢力間の戦闘の有無に関し「法的な意味における戦闘行為ではない。国会答弁する場合、憲法九条上の問題になる言葉を使うべきではないから、一般的な意味で武力衝突という言葉を使っている」と述べた。国連平和維持活動(PKO)参加部隊が海外での武力行使を禁じた憲法九条に違反しないよう定めた参加五原則に触れるのを避けるため、「戦闘」を「武力衝突」に置き換えたと受け取られかねない発言だ。 (横山大輔)
南スーダンPKOに参加している陸上自衛隊部隊の日報に現地勢力間の「戦闘」が明記されていた問題を巡り、民進党小山展弘氏が日報にある戦闘と武力衝突の違いについて質問。稲田氏は「国際的な武力紛争の一環として、人を殺傷する行為が行われていたら、憲法九条上の問題になる。憲法九条に関わるのかという意味において、戦闘行為ではない」と主張。「日報に書かれているのは一般的な戦闘の意味だ」と強調した。
稲田氏は、反政府勢力が「国に準じる組織と評価できる支配系統、支配領域を有していなかった」としてPKO参加五原則は維持されていたとの従来の政府見解を繰り返した。
防衛省は当初廃棄したと説明していた日報の一部を七日に開示。陸自が活動する首都・ジュバ市内で昨年七月に大統領派と反政府勢力の「戦闘が生起した」と明記していた。

◆「戦闘」ならPKO部隊撤退が必要 憲法の歯止め失う恐れ
憲法九条は「国際紛争を解決する手段」としての武力行使を禁じている。政府は、武力行使の意味を「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」だと解釈している。自衛隊がこうした戦闘行為に巻き込まれる恐れがある場合は、PKOから部隊を撤退させなければならない。PKO参加五原則が「紛争当事者間の停戦合意」や「自衛隊の中立的立場の厳守」などを条件としているのも、自衛隊の活動が九条の解釈に基づく戦闘行為に該当するのを避けるためだ。
しかし、防衛省が一部黒塗りで開示した陸上自衛隊南スーダンPKOの日報は、陸自が活動する首都ジュバで「戦闘が生起した」と明記。戦車や迫撃砲を使った激しい戦闘が発生したことも報告した。
稲田朋美防衛相は、日報に書かれた「戦闘」について、現地の反政府勢力が安定した支配地域を持たないことを理由に「国際的な武力紛争の一環として行われたものではない」と説明。戦闘でなく「武力衝突」という言葉を使う理由を「憲法九条上の問題」になるのを避けるためと説明した。
こうした説明が許されれば、自衛隊が戦闘に巻き込まれるのを防ぐための九条の歯止めが、言葉の置き換えによって形骸化しかねない。
南スーダン情勢を巡っては、国連事務総長特別顧問が七日に「大虐殺が起きる恐れが常に存在する」と指摘し、国内で戦闘が継続していると批判した。政府も南スーダンの厳しい現状を直視し、自衛隊の活動継続の是非を判断すべきだ。 (新開浩)