自ら調べて学ぶ形へ 横浜市教委、小中など全498校に学校司書:神奈川 - 東京新聞(2016年12月7日)

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横浜市教育委員会は本年度から、市立の小中学校と特別支援学校の計四百九十八校すべてに学校司書を一人ずつ配置(小中一貫校は二人)している。学校図書館の蔵書を有効活用するだけでなく、教員の負担軽減も期待する。児童生徒には、読書の習慣づけに加え、自ら積極的に学ぶ姿勢を身につけてもらうことを目指している。市教委は「教員が教え込むのではなく、学びの形を変えていく」と話している。 (志村彰太)
「調べたい事柄は、この本に載っています。百科事典で調べてもいいですよ」。十月下旬、横浜市西区の稲荷台小学校の図書室で、四年生が学校司書の二條裕子さん(40)の解説を受けていた。児童は箱根町の寄せ木細工について、伝統工芸や県内の歴史をまとめた本を見ながらノートにまとめ、調べた結果を発表し合っていた。
担任の男性教諭は「インターネットは情報量が多すぎて授業には不向き。でも教える単元に合った本を自分で探す時間は取りにくい。司書さんは使いやすい本をすぐ用意し、提案してくれる」と感謝する。二條さんは「授業支援だけでなく、どんな本を借りたらいいかと子どもから相談を受ける」と話す。実際、この日の中休みは本を借りるための行列ができていた。
学校司書は二〇一五年四月施行の改正学校図書館法で、配置が努力義務となった。公共図書館の司書と同様に蔵書管理や貸し出しを担う。横浜市立小中では一三年度から順次導入し、平日は全校で常駐するようにしている。県内の他の政令市では、川崎市が市立小中百六十五校のうち、モデル校などに三十五人いる。相模原市は十年以上前から、全国に先駆けて全百九校に配置している。両市とも週二、三日の勤務だという。
横浜市では既に効果が表れている。導入前の一二年度、一校当たりの貸出図書数は三千四百四十冊だったのが、一五年度には八千冊以上に増えた。
市教委の担当者は「読書の習慣づけだけが目的ではない」と話す。学校司書に教員と連携した授業展開を任せ、教員の一方的な解説ではなく、子どもが自ら調べて学び、発表する「アクティブラーニング」の全校への普及を狙っている。
「横浜の学びを変える」と市教委は意気込む。ただ、各校の蔵書の少なさが課題で、稲荷台小も周辺校と貸し借りして賄っている。また、全校に学校司書配置の目的を浸透させるには時間がかかり、市教委も「アクティブラーニングの周知が必要」と認める。
本年度の予算は六億二千五百万円。横浜市では「予算の制約」などを理由に中学校で給食を実施しておらず、政策の優先順位が問われる可能性もある。市教委は「学力や学ぶ意欲の向上などデータを取って、効果を検証したい」と話している。