五輪会場見直し 「もったいない」を貫け - 東京新聞(2016年11月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016113002000149.html
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二〇二〇年東京五輪パラリンピックの開催経費を巡る四者のトップ級会合を、成功に向けて一致団結する契機としなくてはならない。「もったいない」の精神を貫き、大会準備を加速させたい。
膨張気味の経費をどう抑制するか。競技会場の見直しを含め、国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会、国、東京都の四者のトップらがきのう協議した。小池百合子知事が主導して公開の場となったことは評価したい。
もっと早くから会合を重ね、結束して方向性を決めていれば、都民、国民の不信と不安は増大しなかっただろう。今後も大会までの準備過程をガラス張りにして、理解と協力を幅広く得る努力を続けてほしい。
水泳のオリンピックアクアティクスセンター(江東区)は規模を縮める。ボートとカヌー・スプリント会場となる海の森水上競技場(臨海部)は経費を抑えて造る。
その代替案とされていた長沼ボート場(宮城県登米市)は事前合宿地として生かすという。被災地の復興のありようを内外に示す余地が残されたのは望ましい。
バレーボール会場は、経費を減らして新設する有明アリーナ(江東区)と既存の横浜アリーナ横浜市)の両にらみのまま結論を先送りした。森喜朗組織委会長と小池氏の意見がかみ合わないようだが、政治銘柄にしてはならない。
大きな成果といえるのは、開催経費の上限を二兆円とし、さらに削減する方向で合意した点だ。少子高齢化を背景とした競技人口の動向を見極め、仮設会場は質素な造りにし、恒久会場は負の遺産にはしない。その決意が重要だ。
諸外国では、財政難から五輪招致を諦める都市が相次ぐ。五輪の持続可能性を東京で証明できなくては、IOCは立場を失う。四者は危機意識を共有してほしい。
振り返れば、開催経費の削減交渉は、積算根拠の検証と情報公開を公約に掲げた小池氏が、知事に就任したことが発端となった。
放置すれば、三兆円を超すおそれが強いことを明らかにし、日本の「もったいない」の精神に立ち返り、問題点をあぶり出した意義は大きい。誰のための、何のための大会かという原点に再び心を向ける機運も高まった。
もっとも、それぞれの利害や思惑から組織委、国、都は足並みをそろえられず、IOCが調停役として乗り出す事態を招いたのは恥ずかしい。同一歩調で取り組める体制を早急に整えるべきだ。