五輪ボランティア 無理強いは許されない - 琉球新報(2018年9月14日)


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2020年東京五輪パラリンピックのボランティアの募集が26日から始まる。五輪史上最大規模の11万人が必要だという。
大会組織委員会はボランティアの主力を学生とみて、各大学で説明会を開いている。文部科学省は大学側へ授業や試験期間を弾力的に変更するなどの対応を求めた。しかし開催期間中は試験や就職活動の最盛期と重なるだけに大学側の抵抗も強い。
56年ぶりの国内開催となる五輪に関わる体験は貴重だろう。だが、大学や企業側にボランティアを半ば無理強いするようなことがあってはならない。あくまで自発的に参加できるよう環境を整えなければならない。
東京大会の募集人員は、競技会場や選手村で活動する「大会ボランティア」が8万人、同時に東京都が募集して空港や主要駅などで外国から来た人の案内などを担当する「都市ボランティア」が3万人となる。そのほかにも千葉や茨城など競技会場を持つ近県もボランティアを募集している。ボランティアの争奪戦が起こりかねない。
ボランティアは、その活躍が目立ったロンドン大会(12年)でも約7万8千人、リオデジャネイロ大会(16年)は約5万人だった。東京大会がいかにボランティア頼みなのかが分かる。
しかしボランティアは自宅から会場のある都市までの交通費は自己負担で、宿泊も「自己手配、自己負担」。働くのは原則1日8時間の10日以上となっており、社会人にとって参加条件はかなり厳しい。
そこで組織委は学生に期待するのだが、学生側にとっては2年後の予定は見通しにくい。
鈴木俊一五輪相は経団連などにボランティアへの参加促進を要請した。政府はボランティア休暇制度の整備を想定しているようだ。休暇制度の名の下に、企業が個人の自主性を無視する形で労働力を提供する仕組みがつくられるのなら、ボランティア本来の趣旨から大きく外れる。
そもそも東京五輪に向けては、場当たり的な対応が目立つ。サマータイム導入の議論は最たるものだ。組織委の森喜朗会長から暑さ対策の切り札として導入の要望を受け、安倍晋三首相が自民党に検討を指示した。競技の開始時刻を早めれば済む話を国民生活全体に影響を及ぼす策に持っていこうとする愚には首をかしげる
五輪招致時は、選手村から半径8キロ以内に会場の85%を配置する「コンパクト五輪」だったが、結果的には近県に競技会場を広げざるを得なかった。態勢についても、組織委で間に合わない分を安易にボランティアで補おうとしているように映る。
組織委は一部交通費の支給や宿泊情報の提供も検討しているが、それでもボランティアの側に負担が大きいのは変わらず改善が必要だ。