五輪開催都市契約を検証できず 本紙公開請求に都が非開示と回答 - 東京新聞(2017年4月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017042190071428.html
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五輪開催都市と国際オリンピック委員会(IOC)が結ぶ開催都市契約について、過去二大会の開催都市は公開しているのに東京都は非公開としている。本紙の情報公開請求に対して都が十四日、非開示と回答した。都は「契約に盛られた守秘義務に違反するため」と説明する。現在、公表に向けてIOCと協議中としているが巨額の開催費用が見込まれる五輪運営の透明化は道半ばだ。 (中沢誠)
開催都市契約は、大会開催に当たって、開催都市とIOC双方の権利や義務を定めている。東京大会は招致決定直後の二〇一三年九月、契約を締結した。都によると、守秘義務の規定はIOCから示されたが、その理由は確認していないという。少なくとも過去二大会では規定はなかった。
規定が盾となり、情報が開示されない事態も生じている。昨年十一月の都議会で、大会組織委員会が支払った「支払手数料」が一四年度の四億九千万円から一五年度に九十億円に跳ね上がった理由を議員が尋ねた。都側はIOCに支払った権利使用料(ロイヤルティー)などと説明したが具体的な内容については「守秘義務」を理由に回答を避けた。
契約内容は近年、公表の流れにある。一二年のロンドン大会では守秘義務の規定はなかったが、運用で非公開にしていた。しかし、開催四年前に市民団体から開示請求を受け、IOCの同意を得て開示した。前回のリオ大会では、ホームページで公表していた。
小池百合子知事が設置した都政改革本部は昨年十一月、都に公表を求める提言を行った。本紙は提言後の二月、契約書と関連文書の情報公開を請求した。非開示とした理由を都は「IOCが合意に至ってないため」としている。都オリンピック・パラリンピック準備局の原陽一郎計画運営課長は、「(開示すれば)IOCとの信頼関係を害する恐れがある」などと説明する。
ただ二〇年大会の開催都市契約の「原型」は、二四年大会への立候補を目指していた米国ボストン市などがIOCの了解を得て二年前からネット上に公表している。同市は立候補の準備のためIOCから入手した。
権利使用料に関しては、エンブレムやマスコットの使用料や大会入場料の収入の5〜7・5%をIOCに支払うとの記載がある。実際の契約と同一か都は明らかにしないが、都政改革本部の上山信一特別顧問は「一見してほぼ同じ内容だった」と話している。

◆透明化進まず
二〇二〇年東京大会を巡っては、新国立競技場建設や五輪エンブレムのデザインでも、不透明な決定過程が国民の不信を招いた。最大一・八兆円と試算される大会費用も昨年末にようやく公表。開催都市契約の非開示について、スポーツジャーナリストの小川勝さんは「すべて非公表というのは理解し難い。都の情報公開に後ろ向きな姿勢が表れている」と批判する。
五輪の理念などをうたう「オリンピック憲章」は、開催地の人々に祝福されて実施することが前提に作られているという。東京大会に目を転じると準備を巡って相次ぐトラブル。開催費用の高騰から都外の開催自治体の不満は高まっている。
「今、起こっていることは五輪への国民の支持を下げるようなことばかり。国民の支持や共感がなければ大会の成功はない。そのためには情報公開が原則だ」と小川さんは訴える。