高浜原発1・2号機 最長20年の運転延長を認可 - NHKニュース(2016年6月20日)

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運転開始から40年が経過した、福井県にある高浜原子力発電所1号機と2号機について、原子力規制委員会は、最長20年の運転の延長を全会一致で認めました。原発事故後に導入された運転期間を原則40年に制限する制度の下で延長が認められるのは初めてです。
高浜原発1号機と2号機について、原子力規制委員会はことし4月、古い原発特有の課題になっている電気ケーブルの防火対策など、見直された安全対策が新しい規制基準に適合していると認め、今月には設備の耐震性などを記した「工事計画」を認可しました。
20日の会合では、許認可で残されていた施設の劣化状況を評価する「運転期間延長認可」について議論が行われ、一部の配管が劣化して薄くなると耐震基準を下回るため、補強工事を行うことなどが報告されました。こうした対応を含め、委員から異論は出ず、最長20年の延長を全会一致で認めました。
これで高浜原発1号機と2号機は、期限とされている来月7日の前に必要な許認可がすべて得られ、最長の運転期間は、1号機が2034年11月まで、2号機が2035年11月までとなります。
福島第一原発の事故のあと導入された運転期間を原則40年に制限する制度の下で延長が認められるのは初めてです。ただ、実際の再稼働には安全対策の追加工事などを終える必要があり、関西電力は3年以上かかるとしています。

原子力規制委員会の田中俊一委員長は、会見で、今回の延長認可について「あくまでも科学的に安全上問題がないか判断した。それがわれわれに与えられた使命だ」と述べました。
記者からの「ハードルを楽々と越えたのか、何とか越えたのか、どちらだと思うか」という質問に対しては、「結論から言うと後者だと思う。事業者からしたら、予想以上の投資をしないと越えられなかった障害だと思う。今後も途中でチェックしないといけないこともあり、求めた安全対策ができているかどうか、検査の中で確認していく必要がある」と述べました。
規制委「あくまで例外」 専門家「安全性だけ見て審査を」
原発の運転期間を原則40年とする制度は、福島第一原発の事故後、安全を重視する世論の高まりを受けて導入されました。原子力規制委員会の審査を受け、必要な認可を得られれば、最長20年の延長が1回に限って認められます。
規制委員会は「運転期間の延長はあくまで例外だ。厳しい審査が必要で、延長できる原発は限られてくる」という見方を示し、これまでに運転開始から40年前後が経過した6基の原発廃炉が決まっています。
こうしたなかで、初めて申請が行われた高浜原発の2基について延長が認められたことで、今後、電力各社は今回の審査を踏まえて、ほかの原発の延長を模索するとみられます。
その一方で「延長は本当に例外的な扱いと言えるのか」と疑問視する声も上がっています。経済産業省が去年示した2030年時点の電源構成の見通しでは、原発の比率を20%から22%としていますが、これを達成するには、15基前後が40年を超えて運転を延長することが前提となります。
これについて、原子力規制委員会の審議会の委員を務める明治大学の勝田忠広准教授は「規制委員会は国のエネルギー政策とは全く関係なく、国民のために、安全性だけを見て審査を進めていくべきだ。福島第一原発の事故の経験を忘れず、常にそこに立ち返って審査を続けてほしい」と話しています。
関西電力「きめ細かな点検を継続」
関西電力には、原子力規制庁から、高浜原発1号機と2号機の運転延長の認可に関する文書が交付されました。
関西電力原子力事業本部の森中郁雄本部長代理は「これまでどおり、きめ細かな点検を継続していくことが最も大事だ。国内では40年を超えて運転する原発はなく、現場でどのような維持や管理をしているのか、広く示していく必要があると考えている」と話していました。
また、再稼働の時期について「工事が終了する予定の平成31年を1つの目標にしているか」と報道陣から問われたのに対し、森中本部長代理は「もちろんそこはターゲットだ」と答えていました。
地元 高浜町
福井県高浜町の野瀬豊町長は、「規制委員会が高浜原発1号機と2号機を安全と認めたことを歓迎したい。ただし、3号機、4号機と違って古い原発で、町民からは本当に大丈夫かという心配の声があることも承知しているので、今後はそうした声と規制委員会の判断との隔たりを埋めなくてはならない」と話していました。

高浜町の70代の女性は「運転の延長が認められてほっとしています。今後20年間にわたって原発が稼働すれば、町の活性化につながるので、よかったです」と話していました。
また、80代の男性は「地域経済のためにも原発は再稼働してほしいが、国は科学的な審査で安全性を確かめたことを住民に説明すべきだ」と話していました。
一方、40代の女性は「なぜ運転を延長しても安全性が保てるのか、地元には説明がないまま認められたことが残念です。住民の不安な気持ちにきちんと応えてほしいです」と話していました。
周辺の自治体は
滋賀県三日月大造知事は「40年を超えて長期間の運転を行うことは、老朽化による不具合など、原子力発電所の安全に対するリスクが高まることにつながり、運転期間の延長が認可されたことには大きな疑問を感じる。国と関西電力は、国民・県民の老朽化した原発に対する不安を重く受け止め、万全の安全対策と説明責任を果たしてほしい」とするコメントを出しました。

京都府山田啓二知事は「高浜原発1号機と2号機の再稼働については、原子炉容器など取り替えができない部分があるなど、住民の不安につながっていることから、国に対し、慎重な判断をするよう再三申し上げてきた。京都府としては、老朽化した原発の安全性などについて危惧しており、引き続き国や関西電力に対し説明と慎重な対応を求めていきたい」とコメントしています。

市内のほぼ全域が高浜原発から30キロ圏に入る、京都府舞鶴市の多々見良三市長は「高浜原発の1号機、2号機は構造上、40年の運転期間を想定した設計になっていると認識しているので、原子炉容器など重要な施設が最大60年の運転が可能だという根拠を、設計当時の資料で示すなどしてほしい。運転開始から40年を超えた現在も安全が確保されているのか、科学的・技術的に説明してほしい」とするコメントを出しました。

舞鶴市の79歳の女性は「原発から近い距離にあるので、万が一事故が起こると被害が心配です。延長になってまだ動くとなると、施設の老朽化など不安が大きいです」と話していました。
65歳の女性は「原発事故に対する危機感はありますが、安全性が確保されるのであれば、延長して運転することもしかたないと思います」と話していました。
また、83歳の男性は「舞鶴市内から福井県内の原発に働きに行っている人もいます。雇用の面を考えるといいことではないか」と話していました。
廃炉にすべき」規制委の前で抗議活動
高浜原発1号機と2号機の運転延長の認可に合わせて、原子力規制委員会が入る東京・港区のビルの前には、原発に反対する人たちが集まり、「高浜原発再稼働反対」などと書かれた紙を掲げながら、「40年ルールがなし崩しになっている」とか「老朽原発は今すぐ廃炉にすべきだ」などと訴えていました。
川崎市から来た69歳の女性は「運転期間を原則40年にするルールは福島第一原発の事故の教訓でできたものであり、規制委員会はこのルールを徹底すべきだ」と話していました。東京の48歳の女性は「あまり例のない40年を超えての運転は絶対に認められず、廃炉にすべきだ」と話していました。
全国の原発 審査などの状況は
福島第一原発の事故を踏まえて作られた新しい規制基準の審査には、これまでに高浜原発1号機と2号機を含む3つの原発の7基が合格し、このうち鹿児島県にある川内原発の2基が、現在、運転中です。
廃炉が決まった原発を除くと、全国には16原発42基があり、建設中の青森県大間原発を含め、これまでに26基で再稼働の前提となる審査が申請されました。

審査は「PWR」=加圧水型と呼ばれるタイプの原発が先行しています。申請のあった8原発16基のうち、20日に運転延長が認められた高浜原発1号機と2号機のほか、これまでに、同じ高浜原発の3号機と4号機、鹿児島県にある川内原発1号機と2号機、それに愛媛県にある伊方原発3号機が審査に合格しています。
このうち運転しているのは、去年再稼働した川内原発の2基です。高浜原発3号機と4号機はことし1月以降、順次再稼働しましたが、4号機は再稼働の3日後にトラブルで原子炉が自動停止し、さらに大津地方裁判所の運転停止を命じる仮処分の決定を受け、2基とも決定が覆らないかぎり運転できない状態です。伊方原発3号機はことし7月下旬に再稼働する計画です。
高浜原発1号機と2号機と同様に関西電力が運転期間の延長を目指す、福井県にある美浜原発3号機は、ことし11月末の期限までにすべての審査に合格する必要がありますが、新しい耐震評価の方法などを巡る議論が続いていて、期限までに審査が終わるか見通せない状況です。
このほかのPWRでは、北海道にある泊原発3号機、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機、それに福井県にある大飯原発3号機と4号機の審査がおおむね終盤に入っていますが、いずれの原発も合格の具体的な時期は見通せない状況です。
福井県にある敦賀原発2号機は、焦点となっている真下を走る断層の活動性から議論を始めていて、審査は序盤です。

一方、事故を起こした福島第一原発と同じ「BWR」=沸騰水型と呼ばれるタイプの原発は、これまでに新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発など8原発10基で審査が申請されていますが、耐震評価の審査などに時間がかかることから、合格の時期は早い原発でも来年以降になるとみられます。