東海第二原発 原子力規制委が運転延長を認可 - NHK(2018年11月7日)


https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181107/k10011701181000.html

首都圏に立地する唯一の原子力発電所で、茨城県にある東海第二原発について、原子力規制委員会は7日、最長20年の運転期間の延長を認めました。原則40年に制限された原発の運転期間の延長が認められたのは全国で4基目で、東日本大震災津波で被災した原発では初めてです。
茨城県東海村にある東海第二原発は都心からおよそ110キロの距離に立地する首都圏唯一の原発で、30キロ圏内に全国最多の96万人が暮らしています。
原子力規制委員会は、これまでに再稼働の前提となる新しい規制基準に適合していると判断し、7日の会合では、残る運転期間の延長について、20年後に運転開始から60年たっても原子炉や配管などの劣化状況に問題はないと報告されました。
これについて、委員からは大きな異論は出ず、最長20年の運転期間の延長を全会一致で決めました。
これで東海第二原発の運転期間の延長に必要な許認可はすべて認められ、最長で2038年11月まで運転が可能となります。
原発事故のあとに導入された、運転期間を原則40年に制限する制度のもと延長が認められたのは、福井県にある高浜原発1、2号機と美浜原発3号機に次いで全国で4基目で、東日本大震災津波で被災した原発では初めてです。
ただ、東海第二原発の再稼働には、防潮堤など安全対策の工事に2年余りかかるほか、運営する日本原子力発電が立地する東海村を含む周辺の6つの自治体から事前の了解を得る必要があり、再稼働の時期は見通せていません。
反対派「大事故起きれば多くの人住めなくなる」
原子力規制委員会が開かれた東京 港区にあるビルの前では、東海第二原発の再稼働に反対する市民団体のメンバーらおよそ20人が集まり、「再稼働反対」などと訴えていました。
メンバーらは、「20年運転延長・再稼働を許さない」などと書かれたのぼりを持ち、「東海第二再稼働反対」、「命を守れ」などと大きな声で訴えていました。
また、メンバーらは、全国から寄せられたという再稼働に反対する署名を規制庁の担当者に手渡しました。
提出した署名はおよそ1万5000人分で、すでに提出したものと合わせて3万人近くになるということです。
市民団体の柳田真さんは「きょうは非常に残念な日です。東海第二原発は東京から近く、大きな事故が起きれば、多くの人が住むことができなくなり、ひと事ではない。再稼働は何としてもやめてほしい」と話していました。
津波で被災も事前の想定見直しで事故に至らず
東海第二原発は、福島第一原発や第二原発、それに宮城県にある女川原発と同じく、東日本大震災津波で被災した原発でした。
当時、東海第二原発は運転中で、原子炉を冷却するための海水ポンプ3台のうち、1台が水につかって使えなくなりましたが、残る2台が無事で原子炉を冷温停止できました。
2台の海水ポンプが津波の被害をまぬがれたのは、日本原電がポンプの設置場所に防護壁を設置するなどの工事を進めていたからです。
一部の工事が終わっておらず、ポンプ1台が水につかりましたが、残る2台は無事でした。
対策をとるきっかけとなったのは、震災の4年前に地元・茨城県津波の想定を見直したことでした。
日本原電は、これまでの想定を0.8メートル上回る5.7メートルの津波が押し寄せると評価を見直し、海水ポンプを囲む防護壁の建設や、原子炉建屋の扉から水が入るのを防ぐ対策などを進めたのです。
実際に押し寄せた津波は5.4メートルでした。
いま、東海第二原発には17.1メートルの津波が押し寄せると想定しています。
日本原電は高さ20メートルの新たな防潮堤の建設を計画していて、2021年3月までに工事を終える予定です。
審査では東電の支援も議論に
東海第二原発の審査では、日本原電が原発による発電を専門とする会社でありながら原発を1基も稼働できていないことから、原子力規制委員会が「安全対策工事の資金を調達できるのか」と疑問視しました。
東海第二原発では、津波による重大事故を防ぐ防潮堤などの安全対策を講じる必要があり、日本原電は費用はおよそ1740億円に上ると見積もりました。
規制委員会は、日本原電が原発による発電を専門とする会社でありながら原発を1基も稼働できていないことに触れ、「物を作って売るという行為がないのだから、資金調達についてはしっかりとした債務保証の枠組みを確認する必要がある」と指摘しました。
これを受けて、日本原電は、株主で電力の販売先となっている東京電力東北電力に支援を求めましたが、これについても議論が起こりました。
福島第一原発廃炉などに多額の費用を投じている東京電力が、他社の原発を支援することに疑問が呈されたのです。
結局、審査では、東京電力が東海第二原発から安い電力を購入できれば収益につながり、結果として福島への責任を全うできると説明して、福島第一原発廃炉の支障にはならないなどとして支援する意向を示し、日本原電の資金調達は問題ないとされました。
各地の原発の状況 期間延長は3原発4基
福島第一原発の事故のあと、原則40年に制限された制度のもと、運転期間を延長することが認められたのは、東海第二原発を含めて3原発4基です。
全国には、廃炉が決まった、または廃炉の方向で検討が進められている福島第二原発を除くと15原発34基あります。
このうち、建設中の青森県にある大間原発島根県にある島根原発3号機を含む27基で、新たな規制基準にもとづき、再稼働の前提となる審査が申請されています。
このなかで、審査に合格したことを示す審査書が取りまとめられたのは、8原発15基です。
そのうえで、福島第一原発の事故のあと、原則40年に制限された制度のもと運転期間を延長することが認められたのは、福井県にある
▽高浜原発1号機と2号機、
美浜原発3号機、
▽それに今回の東海第二原発の合わせて3原発4基です。
また、福島第一原発と同じ「沸騰水型」と呼ばれるタイプの原発で運転期間の延長が認められたのは東海第二原発が初めてです。
そして、これまでに再稼働した原発は、
▽鹿児島県にある川内原発1号機と2号機、
福井県にある
▽高浜原発3号機と4号機、
大飯原発3号機と4号機、
愛媛県にある伊方原発3号機、
▽そして佐賀県にある玄海原発3号機と4号機の、
合わせて5原発9基です。
一方、福島第一原発の事故の後、廃炉が決まったほかの原発は、福井県にある
敦賀原発1号機、
美浜原発1号機と2号機、
大飯原発1号機と2号機、
島根県にある島根原発1号機、
佐賀県にある玄海原発1号機、
愛媛県にある伊方原発1号機と2号機、
▽それに宮城県にある女川原発1号機の合わせて7原発10基です。
また、東京電力はことし6月、福島第二原発1号機から4号機について廃炉にする方向で検討を進めると発表しています。