(いま読む日本国憲法)(12)第20条 信教の自由条件なし - 東京新聞(2016年5月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016052202000141.html
http://megalodon.jp/2016-0522-1026-30/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016052202000141.html


どんな宗教を信仰してもいいという信教の自由は、旧憲法も定めていました。しかし、「安寧(あんねい)秩序」を妨げず「臣民タルノ義務」に背かない、という条件つきでした。国は「神道(しんとう)は宗教ではない」として、軍国主義を支えた国家神道を国民に強要。キリスト教などを弾圧しました。
この反省に基づき、信教の自由を無条件で認めるとともに、国が宗教活動に関わらない政教分離の原則を定めたのが二〇条です。
一三条が定める個人の尊重や、一九条が保障する内心の自由を、信仰について明確にした条文とも言えます。特定の宗教を強制されない自由や、信仰を持たない自由も保障していると解釈されます。
三項で国に対し「いかなる宗教的活動」も禁じたのは、国家権力と宗教が結びつけば民主主義社会を揺るがしかねないという教訓が背景にあります。
自民党改憲草案は、こうした現行憲法の規定を弱める内容と言えます。
一つは、宗教団体は「政治上の権力を行使してはならない」という一項の記述を削除したこと。もう一つは、国などによる宗教的活動でも「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないもの」なら、禁止の例外とする規定を新設したことです。
二〇条を巡っては、首相の靖国神社参拝が違憲かどうかが長く議論されてきました。自民党の草案は「参拝は社会的儀礼の範囲内」と位置づけることで違憲論を退ける狙いがあるとみられます。

     ◇

「読むための日本国憲法 東京新聞政治部編」(文春文庫)をベースに、憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。

◆自民草案では 政教分離弱める
自民党改憲草案の関連表記(抜粋)
信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。
国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。

《用語解説》
国家神道神道が国教のように位置づけられていた戦前の形態