(いま読む日本国憲法)(10)第18条不当な拘束を禁止 - 東京新聞(2016年5月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016051602000121.html
http://megalodon.jp/2016-0516-0959-19/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016051602000121.html


先の大戦前や戦争中、政府による不法な逮捕・監禁や拷問、恣意(しい)的な警察権行使が繰り返されました。この反省から、国家権力などによって個人が不当に拘束されたり、労働を強制されたりしないよう「人身の自由」を定めたのが一八条です。
この条文に基づき、労働基準法が強制労働を禁止し、人身保護法は違法に身体を拘束されている人の救済手続きを定めています。
自民党改憲草案は、条文のうち「いかなる奴隷的拘束も受けない」を、「その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない」という表現に改めました。
草案Q&Aは奴隷的拘束という言葉について、奴隷制を採っていた国に由来する表現と考えられるため、日本の憲法になじむよう「分かりやすい表現で言い換えた」と説明。社会的関係とは「カルト宗教団体のようなもの」、経済的関係は「身売りのようなこと」を想定しており、意味は変わらないと強調しています。
それでも草案は拘束されない場合を限定的にしたという印象がぬぐえません。例えば政治的・軍事的な理由で拘束される可能性はないのか、懸念があります。
一方、一八条は徴兵制を巡ってよく引き合いに出されます。
徴兵制について、歴代内閣は一八条が禁じる「意に反する苦役」に当たるとし、安倍政権もこの立場をとっています。しかし、安倍政権が二〇一四年七月、歴代内閣の憲法解釈を変えて他国を武力で守る集団的自衛権行使を容認した際、「同じように、将来の首相が『徴兵制は憲法に合致している』と解釈変更することにならないか」などと懸念の声が上がりました。


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自民党改憲草案の関連表記(抜粋)
何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。