憲法審、職権で開催 「おきて破り」野党6党派欠席 - 東京新聞(2018年11月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018113002000140.html
https://megalodon.jp/2018-1130-0939-35/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018113002000140.html

衆院憲法審査会が二十九日、今国会で初めて開かれ、幹事の選任を行った。立憲民主などの野党は、森英介会長(自民)が職権で開催を決めたことに反発し、欠席した。憲法審は与野党合意による運営を慣例としており、野党が欠席して開催されるのは異例。
憲法審は自民、公明両党の与党と日本維新の会希望の党、会派「未来日本」が出席。立民、国民民主、会派「無所属の会」、共産、社民、自由の六党派は欠席した。自民党新藤義孝氏ら六人を新たな幹事に選んだ。新藤氏は与党筆頭幹事に就く。
野党六党派は、自民党森山裕国対委員長に抗議。立民の辻元清美国対委員長は「絶対やってはならないおきて破りをやった。憲法論議は百年遅れる」と非難した。森山氏は、自民党がまとめた四項目の改憲条文案を提示する今国会の目標について記者団に「トラブルが起きるようなやり方はいけない。慎重な対応も必要」と語った。
十二月十日の会期末までに、残る衆院憲法審の定例日は同月六日だけ。自民党は、国民投票法改正案や、国民投票を巡るCM規制について審議したい考え。同党内には、なお四項目提示を探る動きもある。 (清水俊介)

(筆洗)米国を目指し、メキシコに集まる数千人の移民集団 - 東京新聞(2018年11月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018113002000143.html
https://megalodon.jp/2018-1130-0940-50/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018113002000143.html

向かい合った二人の横顔なのか、一個のつぼなのか。簡単な図形が、異なる二つのものに見える。あの有名な図形は、心理学者の名から「ルビンのつぼ」などと呼ばれるそうだ。見るたびに、人の知覚の不思議を感じさせる図形だろう。
図形だけでなく、人は同じ現実を見ても、異なるものをイメージすることがあるらしい。中米ホンジュラスなどから米国を目指し、メキシコに集まる数千人の移民集団である。国境の向こう側で、トランプ米大統領は「多くは冷酷な犯罪者」と、集団を見る。「侵略者」とも言った。中間選挙には好都合だったのだろう。
催涙ガスを使った対処はきっとその見方の延長線上にある。壁のこちら側。メキシコ発の報道を見ると別の絵がある。犯罪への恐怖と貧困でやむなく母国を離れ、数千キロを歩いて米国に向かう人々だ。
あまりの低賃金に、母国での生活をあきらめ、二人の子と何日も歩く女性。稼ぎ頭だったであろう父が亡くなり、旅立った十五歳の少年。母は「気を付けて」と送り出したそうだ。
ギャング集団の脅しに国を出た若者もいる。長距離を歩くため、重い荷は持てない。だから、普段着にリュック姿が多い。
貧困も犯罪も米国の問題ではない。国境を閉ざしたい心理も分かる。ではあるが、相手を見誤れば悲劇が起きよう。つぼを壊したつもりが…。怖いイメージが、浮かんでくる。

防衛大綱改定 「空母」導入には反対だ - 朝日新聞(2018年11月30日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13791107.html
http://archive.today/2018.11.30-004133/https://www.asahi.com/articles/DA3S13791107.html

歴代内閣が否定してきた空母の保有に向け、安倍政権が一線を越えようとしている。専守防衛からの逸脱は明らかで、認めるわけにはいかない。
政府は、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を改修し、垂直着艦ができる米国製の戦闘機F35Bの運用を検討してきた。年末に改定する防衛計画の大綱に、それを可能とする表現を盛り込む方針だ。
2015年に就役した「いずも」は艦首から艦尾まで通じる飛行甲板を持つ。護衛艦と称しているが事実上のヘリ空母だ。設計段階から、戦闘機を載せる改修が想定されていた。
憲法9条の下、歴代内閣は、自衛のための必要最小限度の範囲を超える攻撃型空母は保有できないという見解を踏襲してきた。ところが政府や自民党は、表向きは空母でないと言いながら、既成事実を積み重ねる手法をとっている。
自民党が政府への提言で、災害派遣などにも対応する「多用途運用母艦」という名称を使っているのが典型的だ。岩屋毅防衛相は27日の会見で「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていけることが望ましい」と語った。
事実上、空母であることは明白なのに、言葉を言い換えることで本質から目をそらそうとする。安倍政権下で何度も繰り返されてきたことである。
そもそも空母の導入が日本の防衛にどれほど役立つのか、巨額な費用に見合う効果があるのかについては、自衛隊や専門家の間にも疑問の声がある。
政府や自民党は離島防衛や太平洋の防空への活用を強調しているが、「いずも」が現在担っている対潜水艦の警戒能力が低下すれば本末転倒ではないか。太平洋の防空を言うなら、自衛隊のレーダーや哨戒機の運用を見直すのが筋だろう。
有事を想定した場合、敵のミサイルや潜水艦からどうやって空母を守るのか。空母を運用するには任務用、整備用、訓練用の3隻が必要とされるが、資金的にも人員的にも、今の自衛隊にそんな余裕はあるまい。
強引な海洋進出を進める中国への対処は必要だとしても、空母には空母で対抗するような発想は危うい。空母の保有は、実態以上に日本の軍事重視のメッセージを送る恐れがある。
米国製兵器の大量購入が地域の安定に直結するわけでもない。日米同盟を基軸としつつ、大国化した中国にどう対応するかは難問だ。不毛な軍拡競争を招かぬよう、注意深い手立てを考えねばならない。

先生の働き方 子供のためにも改革を - 朝日新聞(2018年11月30日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13791108.html
http://archive.today/2018.11.30-004258/https://www.asahi.com/articles/DA3S13791108.html

先生の労働時間をどうやって減らすか。中央教育審議会で教員版「働き方改革」の議論が大詰めを迎えている。
日本は中学で6割、小学校で3割の教員が、過労死ラインの月80時間を超す残業をしている。先進国で際立って忙しい一方、授業にあてられる時間はよそより短い。それ以外の用事に日々追われているからだ。
子どもたちが受ける教育の質を高めるためにも、むだな仕事を削ったり、肩代わりしてもらったりして、肝心かなめの授業とその準備に集中できるようにしなければならない。
たとえば中学の先生は部活動の指導に携わる時間が長い。国が目安とする「週休2日以上」を確実に守るようにし、あわせて教員に代わる外部指導員の登用に力を注ぐ必要がある。
難しいのは、先生の心がけだけで解決できる話ではないことだ。学校には次々と新たな課題が降ってくる。小学校では、英語に続いてプログラミング教育が再来年度から必修になる。地域や保護者から要請があれば、むげな対応もできない。
仕事の範囲が野放図に広がらぬよう、歯止めとなる制度を設けなくてはいけない。先般成立した働き方改革関連法で、企業の残業時間は月45時間以内とされた。学校もこれを原則とし、その前提で仕事をどう回すかを考えるようにすべきだ。
教師にだけ適用される時間外労働に関する法律も見直す時期にきている。本来の給与月額に4%分を上乗せするかわりに、残業代は一切支給しないのが現在の決まりだ。残業が週2時間ほどだった半世紀前の規定で、実態とかけ離れている。
文部科学省の試算では、働いた時間どおりに手当を支給すると総額は年9千億円に達するという。膨大なただ働きを現に強いていることを社会全体で認識し、その解消に本気で取り組むことが求められる。
残業はこれまで「自発的なもの」とみなされてきた。だが過労で倒れた教員に対し、「個別の指示がなくても、包括的な職務命令に基づく残業といえる」として公務災害を認めた例もある。引き受けた業務に見合う報酬を支給する制度を検討してはどうか。教員の仕事量と労働時間を校長や教育委員会が適切に管理する意識をもてば、残業の抑制にもつながるだろう。
教員採用試験の受験者は近年減少ぎみだ。学校が「ブラック職場」のままでは、若者の教員離れはさらに進む。しわ寄せを受けるのは、ほかでもない、未来を担う子どもたちである。

沖縄県が国地方係争処理委に審査申し出 辺野古埋め立て - 朝日新聞(2018年11月29日)

https://www.asahi.com/articles/ASLCY3V89LCYTPOB001.html
http://archive.today/2018.11.29-222439/https://www.asahi.com/articles/ASLCY3V89LCYTPOB001.html

米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、沖縄県玉城デニー知事は29日、石井啓一国土交通相が埋め立て承認撤回の効力停止を認めたのは違法だとして、総務省の第三者機関である「国地方係争処理委員会」(富越和厚委員長)に審査を申し出た。
玉城氏は県庁で記者団に理由を説明した。防衛省(沖縄防衛局長)は国の機関で、私人を救済するための行政不服審査法に基づき執行停止を申し立てることはできない▽移設計画を進める安倍内閣の一員である国交相が判断するのは地位の乱用だ――とし、効力停止は違法と主張。「対話による解決を図るため違法な決定は取り消される必要がある。中立・公正な審査をお願いしたい」と訴えた。
係争委は、国の公権力の行使に対して不服がある場合、地方自治体が審査を申し出る機関。専門家5人が委員を務め、90日以内に結論を出す。違法と認めれば国に必要な措置をとるよう勧告し、違法でないと判断すれば自治体に通知する。自治体は結論に不服があれば高裁に提訴できる。
辺野古移設をめぐり沖縄県が係争委へ審査を申し出るのは3回目。2015年に翁長雄志知事が実施した埋め立て承認取り消しに対して国交相が認めた効力停止と、取り消し撤回を求めた国交相による是正指示に対してだった。係争委は効力停止をめぐっては「審査対象にならない」と却下し、是正指示をめぐっては適正か否かを判断せず、政府と県が協議するよう求めた。(伊藤和行

(係争委に審査申し出)「自治」問う実質審理を - 沖縄タイムス(2018年11月30日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/352368
https://megalodon.jp/2018-1130-0943-17/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/352368

辺野古新基地建設を巡り、県の埋め立て承認の撤回を国土交通相が執行停止したのは違法だとして、県は総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」に審査を申し出る書類を送付した。
係争委は国と地方の争いを調停する機関で、有識者の委員5人で構成。90日以内に調停案を勧告するか、審査結果を通知する。
工事主体の防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法(行審法)を使って執行停止を申し立て、国交相が認める決定をした。このため新基地建設関連工事は再開している。
記者会見した玉城デニー知事は、審査申し出の理由を大きく二つ挙げた。
行政不服審査制度は行政の違法・不当な処分から一般国民(私人)の権利救済をすることが目的である。国の機関である防衛局にはそもそも申し立てる資格がなく違法であること。
公有水面埋立法では民間事業者は県から埋め立ての「免許」、国の機関の場合は「承認」を受けなければならないと明確に区別されている。民間と国とでは取り扱いが違い、防衛局が県から受けたのは「承認」である。
にもかかわらず、「私人」と言い張る防衛局は、なりすましたというほかないのである。
考えてみてほしい。
「私人」が軍事基地を建設するために公有水面を埋め立て、米軍に提供することがあり得るだろうか。防衛局はそう主張しているのである。
あきれるしかない。

    ■    ■

玉城知事が挙げたもう一つの理由は、国交相は内閣の一員として辺野古新基地を推進する立場にあり、今回の執行停止決定は、審査庁としての地位を著しく濫用(らんよう)し違法であること。
同じ国の機関である防衛局の申し立てを同じ国の国交相が審査することは身内による判断ということだ。新基地建設推進の安倍内閣の中で異なる判断が出るはずがないではないか。結果は最初から自明であり、著しく不公正な決定である。国による制度の濫用というほかなく「法治国家」にもとるものだ。
この手法が許されるなら国の機関が地方自治体の処分を覆すことはなんでもできることになるであろう。新基地問題で安倍政権は対等であるべき国と地方の関係をゆがめてきた。国交相の決定も、地方自治を破壊する暴挙であると断じざるを得ない。

    ■    ■

権力を抑制的に行使するために三権分立の仕組みがある。安倍政権では行政権力が肥大化し、解釈を一方的に変更するなどチェック・アンド・バランスが効いていない。
県は軟弱地盤の存在などで工事費用が当初の10倍の2兆5500億円に膨らみ、工期も運用開始まで13年も要すると指摘。新基地建設の目的だった米軍普天間飛行場の危険性除去の破綻は明らかだ。
係争委は2015年に同じ構図で県の申し出を却下している。ただ国交相の判断を「疑問も生じるところ」と言及している。形式にとどまらず、沖縄の歴史も踏まえ、実質的な審理を尽くしてほしい。

韓国元徴用工判決 加害の歴史に向き合って - 琉球新報(2018年11月30日)


https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-841478.html
http://archive.today/2018.11.30-004025/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-841478.html

太平洋戦争中に三菱重工業に動員された韓国人元徴用工5人の遺族と元朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊員5人が損害賠償を求めた2件の裁判で、韓国最高裁は同社の上告を棄却した。10月の新日鉄住金に続き日本企業の敗訴が確定した。
日本政府は強く反発している。河野太郎外相は韓国政府に適切な措置を求め「国際裁判や対抗措置も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然(きぜん)とした対応を講ずる考えだ」と述べた。
これに対し韓国政府も「日本政府が韓国の司法の判決に過度に反応していることは非常に遺憾で、自制を求める」と厳しくコメントした。両国関係は険悪になっている。
10月の判決の際も日本政府は駐日韓国大使を呼んで抗議した。政府として他国の裁判所の判決を批判することはあり得るだろう。しかし、三権分立を取っている国の政府に対し、司法判断を理由として抗議することには違和感を覚える。「日本だったら最高裁も思い通りになる」とでも言いたいのだろうか。
日本政府の批判は1965年の日韓請求権協定を根拠としている。確かに協定には「両締約国およびその国民(法人を含む)の請求権に関する問題が(中略)完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する」とある。
だが、韓国最高裁は、植民地支配が原因で生じた韓国人の賠償請求権は消滅しておらず、日本企業に支払い責任があると判示した。
日本でも、請求権は消滅していないと政府自身が認めた事実がある。1991年8月27日の参院予算委員会柳井俊二外務省条約局長は「日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」と答弁している。今回の判決は、個人の請求権を韓国の裁判所が国内法的に認めたことにほかならない。
元徴用工の訴訟は2000年に提訴され一、二審で敗訴。12年に最高裁が個人の請求権は請求権協定では消滅していないとして高裁に審理を差し戻した。この時点で今回の判決は予想できたはずである。和解を含めた解決が模索されるべきではなかったか。
1965年の日韓協定を結んだのは軍事独裁の朴正煕政権であり、韓国国内には協定に強い批判があった。
根本には、この間、日本が加害の歴史、責任に十分に向き合ってこなかったことがある。政府は判決を冷静に受け止め、被告企業とともに被害者が受けた痛みについて真剣に考えるべきである。
安倍晋三首相は「徴用工」を「労働者」と言い換えた。通常の雇用関係にあったように見せる印象操作にほかならず、謙虚な態度とは程遠い。政府は植民地支配の歴史に真摯(しんし)に向き合うべきである。

<金口木舌>頭越しの帰属論 - 琉球新報(2018年11月30日)


https://ryukyushimpo.jp/column/entry-841477.html
http://archive.today/2018.11.30-004639/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-841477.html

日ロ首脳会談で北方4島のうち歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島を「引き渡す」と明記した日ソ共同宣言を基礎として交渉することで合意した。故郷を思う元島民の声が報じられる一方、4島とアイヌ民族の関わりにはなかなか焦点が当たらない

江戸幕府が影響力を強める近世以前、北方4島や千島列島にはアイヌ民族が暮らしていた。北海道と同様だ。近代以降、日ロ両国はアイヌ民族の意見を聞くことなく国境線を引いた
▼国連は2007年に先住民族権利宣言を採択し、日本も賛成した。先住民族の土地や資源の権利をうたい、立法措置を促す。日本政府はアイヌ民族先住民族と認めたが、アイヌ文化振興法は土地の権利に触れていない
▼「北方4島にアイヌ自治区を作ってほしい。そこでサケを捕って暮らしたい」と語ったのは旭川アイヌ協議会の川村シンリツ・エオリパック・アイヌ会長だ。昨年2月の集会で土地をアイヌに返すよう求めた
阿部浩明治学院大教授は本紙の取材に「日本は植民地支配の歴史的不正義を認め、是正しなければならない。ところが沖縄とアイヌについて植民地主義の実態を解明する作業がなされていない」と指摘した
▼沖縄は現在も広大な土地が米軍に占有されたままだ。先住民族の権利をないがしろにし、頭越しに交わされる帰属論の根っこに沖縄と共通する構造が横たわっている。

秋篠宮さま、大嘗祭支出に疑義「宮内庁、聞く耳持たず」 - 朝日新聞(2018年11月30日)

https://digital.asahi.com/articles/ASLCQ44BQLCQUTIL01F.html
http://archive.today/2018.11.29-221027/https://www.asahi.com/articles/ASLCQ44BQLCQUTIL01F.html

秋篠宮さまが30日の53歳の誕生日を前に紀子さまと記者会見し、天皇の代替わりに伴う皇室行事「大嘗祭(だいじょうさい)」について、「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と述べ、政府は公費を支出するべきではないとの考えを示した。この考えを宮内庁長官らに伝えたが「聞く耳を持たなかった」といい、「非常に残念なことだった」と述べた。
記者会見は誕生日当日の30日に報道されることを前提に、22日に行われた。政府が決定した方針に、皇族が公の場で疑義を呈することは異例。秋篠宮さまは来年5月の代替わり後、皇位継承順位第1位で皇太子待遇の「皇嗣(こうし)」となる。
大嘗祭は、新天皇が新穀を神々に供えて世の安寧や五穀豊穣(ごこくほうじょう)などを祈る儀式。1990(平成2)年に行われた前回の大嘗祭では、国から皇室の公的活動に支出される公費「宮廷費」約22億5千万円が使われ、「政教分離に反する」という批判は当時から根強くあった。政府は今回も、儀式に宗教的性格があると認めつつ、「極めて重要な伝統的皇位継承儀式で公的性格がある」として宮廷費を支出する方針を決めた。前回を踏襲して同規模の儀式を想定しているが、人件費や資材の高騰で費用が増す可能性もある。
これに対し、秋篠宮さまは天皇家の「私費」にあたる「内廷会計」で賄うべきだと述べた。遺産や国から支出されている内廷費などだが、使途は天皇家の裁量で、通常の宮中祭祀(さいし)にも使われている。
秋篠宮さまは「身の丈にあった儀式」にすることが本来の姿、とも述べた。前回の代替わりでも同様の意見を述べていたといい、今回も宮内庁の山本信一郎長官らに「かなり言った」というが、考えてもらえなかったという。
山本長官は直後の会見で「聞く耳を持たなかったと言われるとつらいが、そのようにお受け止めになったのであれば申し訳ない」と話した。一方、天皇陛下からは即位関係の諸儀式などは皇太子さまとよく相談して進めるよう伝えられているといい、「ご理解を頂いて進めている」としている。(多田晃子、中田絢子)

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大嘗祭〉 新たに即位した天皇が1代に1度限り行う重要な儀式。稲作農業を中心とした古代社会の収穫儀礼に根ざしたもので、7世紀の天武天皇大嘗祭が最初とされる。中核の「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」では、新天皇がその年に収穫された米などを神々に供え、自身も食し、五穀豊穣(ほうじょう)や国家安寧を祈る。今回は来年11月14〜15日に予定。このために皇居・東御苑に大嘗宮(前回は建設費約14億円)が新設され、儀式後に解体・撤去される。