(係争委に審査申し出)「自治」問う実質審理を - 沖縄タイムス(2018年11月30日)

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辺野古新基地建設を巡り、県の埋め立て承認の撤回を国土交通相が執行停止したのは違法だとして、県は総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」に審査を申し出る書類を送付した。
係争委は国と地方の争いを調停する機関で、有識者の委員5人で構成。90日以内に調停案を勧告するか、審査結果を通知する。
工事主体の防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法(行審法)を使って執行停止を申し立て、国交相が認める決定をした。このため新基地建設関連工事は再開している。
記者会見した玉城デニー知事は、審査申し出の理由を大きく二つ挙げた。
行政不服審査制度は行政の違法・不当な処分から一般国民(私人)の権利救済をすることが目的である。国の機関である防衛局にはそもそも申し立てる資格がなく違法であること。
公有水面埋立法では民間事業者は県から埋め立ての「免許」、国の機関の場合は「承認」を受けなければならないと明確に区別されている。民間と国とでは取り扱いが違い、防衛局が県から受けたのは「承認」である。
にもかかわらず、「私人」と言い張る防衛局は、なりすましたというほかないのである。
考えてみてほしい。
「私人」が軍事基地を建設するために公有水面を埋め立て、米軍に提供することがあり得るだろうか。防衛局はそう主張しているのである。
あきれるしかない。

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玉城知事が挙げたもう一つの理由は、国交相は内閣の一員として辺野古新基地を推進する立場にあり、今回の執行停止決定は、審査庁としての地位を著しく濫用(らんよう)し違法であること。
同じ国の機関である防衛局の申し立てを同じ国の国交相が審査することは身内による判断ということだ。新基地建設推進の安倍内閣の中で異なる判断が出るはずがないではないか。結果は最初から自明であり、著しく不公正な決定である。国による制度の濫用というほかなく「法治国家」にもとるものだ。
この手法が許されるなら国の機関が地方自治体の処分を覆すことはなんでもできることになるであろう。新基地問題で安倍政権は対等であるべき国と地方の関係をゆがめてきた。国交相の決定も、地方自治を破壊する暴挙であると断じざるを得ない。

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権力を抑制的に行使するために三権分立の仕組みがある。安倍政権では行政権力が肥大化し、解釈を一方的に変更するなどチェック・アンド・バランスが効いていない。
県は軟弱地盤の存在などで工事費用が当初の10倍の2兆5500億円に膨らみ、工期も運用開始まで13年も要すると指摘。新基地建設の目的だった米軍普天間飛行場の危険性除去の破綻は明らかだ。
係争委は2015年に同じ構図で県の申し出を却下している。ただ国交相の判断を「疑問も生じるところ」と言及している。形式にとどまらず、沖縄の歴史も踏まえ、実質的な審理を尽くしてほしい。