<税を追う>米兵器ローン急増 来年度予算圧迫 防衛省、支払い延期要請 - 東京新聞(2018年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112902000149.html
https://megalodon.jp/2018-1129-0910-23/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112902000149.html


防衛省が今月初め、国内の防衛関連企業六十二社に対し、二〇一九年度に納品を受ける防衛装備品代金の支払いを二〜四年延期してほしいと要請したことが関係者への取材で分かった。高額な米国製兵器の輸入拡大で「後年度負担」と呼ばれる兵器ローンの支払いが急増。編成中の一九年度予算の概算要求では、要求基準を事実上二千億円超過しており、国内企業に「返済猶予」を求めるという異例の事態となっている。 (「税を追う」取材班)
要請を受けた企業は「資金繰りに影響が出る」などと反発。企業側の同意がなければ支払いの先送りはできず、年末の一九年度予算案の作成までに、どれだけ削減できるかは不透明だ。
複数の関係者によると、防衛省は今月二日と五日の二回に分け、航空機や艦船の部品を扱う企業などを同省に呼んで説明会を開催。一九年度に納品予定の部品の契約を変更して追加の発注を行う代わりに、代金の支払いは追加分が納入される二一〜二三年度に一括して行うと提案した。今後、個別に各社と交渉したい考えを示したという。
輸送機オスプレイや早期警戒機E2Dなど、安倍政権になってから米国政府の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づく高額兵器の輸入が急増し、FMSのローン残高は本年度一兆一千三百七十七億円と五年前の約六倍に拡大している。
一九年度に支払時期を迎えるローンは、国内産兵器分と合わせて二兆六百四十七億円。同時に支払額より四千四百億円多い二兆五千百億円の新たなローンが発生する「自転車操業」の状態になっている。
防衛省は一九年度予算で、本年度当初予算の2・1%増となる過去最大の五兆二千九百八十六億円を要求しているが、ローン返済額(歳出化経費)と人件費・糧食費を合わせると要求の八割を固定経費が占める。
そのため、例年は二千億円程度を盛り込む米軍再編関連経費の額を概算要求に盛り込まなかった。防衛省の幹部はこれまでの取材に「要求額を小さくしていると批判が来ることは分かっていたが、そうせざるを得ないほど後年度負担(兵器ローン)がのしかかっている」と証言していた。
本年度二千二百億円を計上した米軍再編関連経費は、年末に作成する一九年度予算案にも計上する必要があり、その分を削減する必要に迫られている。そのため今回、装備品代金の支払い延期という異例の要請に踏み切ったとみられる。
防衛省の幹部は「歳出化経費(ローン返済額)が膨らみ、予算内に収まらなくなっている。それを削減するため、単なる支払い延長では企業側に受け入れてもらえないから、追加発注を含めて依頼している」と話している。

◆返済先送りでない
防衛省会計課の話> 契約変更の説明会で、装備品の部品不足に備えて在庫を確保するため、追加で発注する仕組みを提案した。発注規模や金額は、まだ検討段階で分からない。支払いを後ろに延ばすのは、いろいろな契約の方法の一つで、歳出化経費の先送りではない。

◆調達改革の一環
財務省主計局の話> 防衛省には歳出の抑制に取り組んでもらっている。調達改革の一環として、防衛省が部品の大量発注によるコスト抑制を図ろうとしているのは一定の評価ができる。

<税を追う>支払い延期要請 防衛業界 戸惑い、反発 - 東京新聞(2018年11月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112902000131.html
https://megalodon.jp/2018-1130-1001-41/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112902000131.html

防衛省から話を聞いて社内でも『大変だ』となった」。防衛省が国内の防衛企業六十二社に求めた装備品代金の「支払い猶予」が業界に大きな波紋を広げている。「支払いを遅らせてくれ、というのはつらい」「我々にメリットはない」。企業側は戸惑いや反発を強めており、年末の予算案作成に向け、どれくらいの企業が応じるのか、先行きは見えない。 (「税を追う」取材班)
防衛省から『今、厳しいからよろしくお願いします』という話があった。来年度に全部の後年度負担(兵器ローン)を支払えないから、少しでも額を減らしたいのだろう。防衛省は本当に切羽詰まっている」

新大綱と中期防 専守防衛を逸脱するな - 東京新聞(2018年11月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018112902000165.html
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国際情勢の変化に応じて防衛力を見直すことは必要だ。しかし、他国に脅威を与える装備を買いそろえたり、防衛費を際限なく増やすことで、憲法の趣旨である「専守防衛」を逸脱してはならない。
安全保障や防衛力整備の基本方針を示す「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」の改定作業が大詰めを迎えている。安倍内閣は来月中旬の閣議決定を目指す、という。
二〇一四年度から十年間程度を念頭に置いた現行の大綱を前倒しで見直す背景には、中国、北朝鮮など日本周辺の情勢が急速に変化しているとの認識があるのだろう。変化に即して防衛力を適切に見直す必要性は理解するが、それは憲法の趣旨である「専守防衛」の枠内であることが前提だ。
政府は新大綱に、海上自衛隊護衛艦「いずも」を、米国製ステルス戦闘機F35Bが離着陸できるよう「空母化」する方針を盛り込む方向で調整に入った、という。
政府見解は大陸間弾道ミサイルICBM)や長距離戦略爆撃機などと同様「攻撃型空母」の保有は許されないとしてきた。「いずも」を空母化しても防衛目的に限れば、憲法が禁じる戦力には当たらない、という理屈なのだろう。
しかし、これは詭弁(きべん)だ。米軍の例を引くまでもなく、空母は打撃力を有する攻撃的兵器である。攻撃的兵器と防御的兵器の区別が困難であることは、政府自身が認めてきた。いくら防御型と言い募っても攻撃型性能を有することは否定できず、専守防衛を逸脱する。
防衛費の膨張も危惧する。一四年度から五年間の防衛費の総額を定めた現行中期防では、年平均四兆八千億円程度、国内総生産(GDP)比で1%未満だ。
政府は、軍人恩給など防衛省以外の関連経費も含む新しいGDP比の目安を設けるという。北大西洋条約機構NATO)の算定基準を使って1・3%程度へと上積みを図り、防衛費の増額を求めるトランプ米大統領の圧力をかわす狙いもあるのだろう。
GDP比1%は法の定めではないが、専守防衛に徹する国際的メッセージになってきた。関連経費を含むとはいえ1・3%という数字は独り歩きしかねない。
防衛費は安倍晋三首相の政権復帰後、増額の一途だ。際限なく増やせば軍事大国化の意図を疑われかねない。新中期防ではむしろ防衛費の伸びを抑え、節度ある防衛力整備に努める意思を明確にすべきだ。それが憲法の趣旨である。

裁判所で「車いす差別」 警備強化で配慮欠く入庁検査 - 東京新聞(2018年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201811/CK2018112902000192.html
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全国の裁判所で入庁者への所持品検査が実施されている。基本、金属探知機付きのゲートをくぐるが、車いす利用者はゲートの幅が足りずに通り抜けられない。そのため、体に触れられたり、荷物を取り出されたりしての検査を受けている例もある。今年一月から検査を始めた大阪高裁・地裁では十五日、車いすの利用者らが、検査が障害者にとって差別的だとして、抗議と改善を書面で申し入れた。 (三浦耕喜)
「男性の警備員が、ボディーチェックで車いすに乗った女性の体をあちこち触っている」。滋賀県長浜市から電動車いすに乗って傍聴に来た頼尊恒信(よりたかつねのぶ)さん(39)は、わが目を疑った。
明らかにセクハラだと思った頼尊さんにも、警備員から身の安全を損ないかねないことを求められた。ドライバーなど電動車いすを調整・応急修理する付属工具を「武器として使うこともあり得る」として、退庁まで取り上げられた。「さまざまな路面を走る電動車いすはねじなどが緩みやすい。工具を常備し、万一に備えなければ安全にかかわる。自動車に工具が付いているのと同じなのに」
さらに屈辱的だったのは、手荷物検査だ。警備員に断りもなくかばんを開けられ、入れていた下着があらわになった。「人目の多い玄関です。人間扱いされていないと感じた」。言葉に無念さが響く。
警備員は頼尊さんの食事道具も、もむようにチェックした。自分の障害に合わせ改良を加えた食事道具を、多くの障害者は持っている。その警備員は、直前に靴を触ったばかりだった。
警備員は取り出した荷物を元の場所に戻さなかった。動きが制約される障害者は、物が決まった場所にないと、取り出す時にヘルパーらに指示できない。
警備が強化されることは聞いていた。それを見越して時間をやりくりし、いつもより一時間早く家を出た。それが、こういう対応をされることになるのかと、やりきれない思いで裁判所の建物に入った。
昨年六月に仙台地裁で判決の宣告を受けていた被告(保釈中)が刃物を振り回し、警察官二人に切り付ける事件が発生したことなどを受け、最高裁は一般来庁者を中心に所持品検査を行うよう全国の地裁と高裁に通知。仙台や東京、大阪などで導入されている。急いで導入したため検査が始まった時期や手法は裁判所によって違いがある。
しかし、障害がない人は基本、ゲートをくぐるだけなのに対し、綿密にチェックされる車いす利用者の負担は心身ともに軽くない。車いす利用者には、工具や着替えなどたくさんの携行品が入った複数のかばんを車いすに結んでいる人が多い。障害の知識がないと、何らかの道具を紛れさせているようにも見えるし、体に補助器具を取り付けていると、服の中に何かを隠し持っているようにも見える。
しかし、脳性まひで車いすを利用しており、書面を大阪地裁に手渡した大阪府豊中市の中田泰博さん(46)は言う。「手に持ってかざす使い方の金属探知機もあるのに使わない。警備が必要だというなら、拙劣なやり方はやめてほしい。裁判はすべての国民に開かれており、その国民には私たちも含まれているはず」と強調する。
これに対し、大阪地裁は「申し入れ書の内容を確認の上、適切に対応したい」としている。
障害者の人権問題に詳しい大川一夫弁護士(大阪市)は「その人の立場を考えたやり方をとるのが『合理的配慮』というもの。そうでなければ、人格権や名誉を裁判所が傷付けることになる」と話している。

こども宅食、全国展開へ まず佐賀から 困窮の子育て世帯に食品を - 東京新聞(2018年11月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018112902000137.html
https://megalodon.jp/2018-1130-1008-56/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018112902000137.html

経済的に困窮している子育て世帯に食品を届ける「こども宅食」について、一般社団法人「こども宅食応援団」(佐賀市)は二十八日、東京都文京区の取り組みを全国展開すると発表した=写真。まず佐賀県で実施し、その後各地に広げたい考えだ。
こども宅食は、子育て支援に取り組む認定NPO法人フローレンス(東京)や東京都文京区などが連携し、昨年十月に同区で開始。企業からコメや缶詰といった食料の寄付を受け、児童扶養手当の受給世帯など同区の五百五十世帯に配っている。
届けた世帯から歓迎の声が多く、全国展開を検討。市民活動の支援に積極的な佐賀県に「こども宅食応援団」を設立し、フローレンスの駒崎弘樹代表理事が応援団の代表理事を兼ねることになった。
まず佐賀県で展開するため、同県へのふるさと納税で三千万円を目標に寄付を募る。県内でこども宅食を実施する団体を公募。応援団は、来年四月から事業立ち上げのノウハウを提供し、運営を支援する。

(筆洗)前田さん編曲の「A列車で行こう」は「原信夫とシャープス&フラッツ」の十八番だった。 - 東京新聞(2018年11月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018112902000145.html
http://web.archive.org/web/20181129012930/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018112902000145.html

「センイチ」と聞いて、思い出すのは昔の野球選手の名前ぐらいだが、戦後、米軍キャンプを回るジャズ楽団員には欠かせぬものだったそうだ。当時の隠語でジャズの有名曲を集めた楽譜集のことをいう。
センイチとは千一で、たくさんの曲が載っているという意味だろう。実は海賊版であまりおおっぴらにできるものではなかったらしい。
貧しき時代。米兵相手のジャズメンは景気が良かったと聞くが、「センイチ」は大切なメシの種だった。そのピアニストもやはり「センイチ」のお世話になったか。戦後ジャズ史の大半に身を置いた前田憲男さんが亡くなった。八十三歳。
年齢から、戦後七十三年を引き算すれば十歳前後。その年から進駐軍放送と教則本でピアノを学び、高校卒業後、進駐軍キャンプで演奏を始める。独学で切り開いた道は伝説の「モダンジャズ三人の会」やビッグバンドから歌謡曲の編曲まで幅広い音の世界につながっていた。
前田さんに「センイチ」は不要だったかもしれぬこんな逸話がある。珍しい輸入レコードを業者から試聴したいと借りる。次の日に「いらない」と返すが、その間に聞き取りで全曲採譜。そして、その晩に演奏する。
前田さん編曲の「A列車で行こう」は「原信夫とシャープス&フラッツ」の十八番だった。A列車で旅立たれたか。列車内から軽快なピアノの音が聞こえてくる。

(大弦小弦)「給付型奨学金のおかげで進学でき、夢に向かって勉強できている… - 沖縄タイムス(2018年11月29日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/351798
https://megalodon.jp/2018-1130-1012-25/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/351798

「給付型奨学金のおかげで進学でき、夢に向かって勉強できている」。先週あった沖縄子どもの未来県民会議の事業報告会で、児童養護施設出身の女性が感謝の言葉を語った。登壇には勇気が必要だったと思う

▼小4の時、父の家庭内暴力が原因で両親が離婚、翌年児童養護施設に入所した。高校時代のアルバイトで170万円をためたが、専門学校に進む費用には足りず、高3最初の進路希望用紙には「就職」と書いた。「みんなこうやって諦めるんだなあ、って思ったら涙が出た」

▼だがその夏、県民会議が児童養護施設や里親家庭の出身者対象の給付型奨学金を創設し、進学の道が開けた。創設が翌年ならば現在の彼女はなかったかもしれない。未来に向かう姿にエールを送りたい

▼一方で彼女の仲良しの同級生は、経済的事情で希望だった進学を断念した。母子家庭できょうだいが多かった。施設入所者か否かが進路の分かれ目となった

▼県民会議の奨学金の来春からの給付内定者は13人。当事者にとっての意義は計り知れないが、1万5千人近い県内高校3年生の0・1%にも満たない。さらなる拡充が求められる

▼そもそも高等教育の学費の高さ、私費負担の重さについても議論が必要だ。支援の増額には限界がある。社会の仕組みを問わなければ子どもの貧困はなくせない。(田嶋正雄)