先生の働き方 子供のためにも改革を - 朝日新聞(2018年11月30日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13791108.html
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先生の労働時間をどうやって減らすか。中央教育審議会で教員版「働き方改革」の議論が大詰めを迎えている。
日本は中学で6割、小学校で3割の教員が、過労死ラインの月80時間を超す残業をしている。先進国で際立って忙しい一方、授業にあてられる時間はよそより短い。それ以外の用事に日々追われているからだ。
子どもたちが受ける教育の質を高めるためにも、むだな仕事を削ったり、肩代わりしてもらったりして、肝心かなめの授業とその準備に集中できるようにしなければならない。
たとえば中学の先生は部活動の指導に携わる時間が長い。国が目安とする「週休2日以上」を確実に守るようにし、あわせて教員に代わる外部指導員の登用に力を注ぐ必要がある。
難しいのは、先生の心がけだけで解決できる話ではないことだ。学校には次々と新たな課題が降ってくる。小学校では、英語に続いてプログラミング教育が再来年度から必修になる。地域や保護者から要請があれば、むげな対応もできない。
仕事の範囲が野放図に広がらぬよう、歯止めとなる制度を設けなくてはいけない。先般成立した働き方改革関連法で、企業の残業時間は月45時間以内とされた。学校もこれを原則とし、その前提で仕事をどう回すかを考えるようにすべきだ。
教師にだけ適用される時間外労働に関する法律も見直す時期にきている。本来の給与月額に4%分を上乗せするかわりに、残業代は一切支給しないのが現在の決まりだ。残業が週2時間ほどだった半世紀前の規定で、実態とかけ離れている。
文部科学省の試算では、働いた時間どおりに手当を支給すると総額は年9千億円に達するという。膨大なただ働きを現に強いていることを社会全体で認識し、その解消に本気で取り組むことが求められる。
残業はこれまで「自発的なもの」とみなされてきた。だが過労で倒れた教員に対し、「個別の指示がなくても、包括的な職務命令に基づく残業といえる」として公務災害を認めた例もある。引き受けた業務に見合う報酬を支給する制度を検討してはどうか。教員の仕事量と労働時間を校長や教育委員会が適切に管理する意識をもてば、残業の抑制にもつながるだろう。
教員採用試験の受験者は近年減少ぎみだ。学校が「ブラック職場」のままでは、若者の教員離れはさらに進む。しわ寄せを受けるのは、ほかでもない、未来を担う子どもたちである。