新宿区のデモ 一律規制は許されない - 朝日新聞(2018年6月30日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13563399.html
http://archive.today/2018.06.29-232212/https://www.asahi.com/articles/DA3S13563399.html

短絡的で乱暴な措置に驚き、あきれる。憲法が定める「集会の自由」や「表現の自由」を侵害するおそれが大きい。
東京都新宿区が、街頭デモの出発地として使用を認める区立公園を、これまでの4カ所から1カ所に限ることを決めた。区役所内部だけの検討で「学校や商店街に近接していない」という条件を追加することにして、区議会に事後報告した。
同区内で行われたデモは昨年度77件あった。うち60件は、今後は使えなくなる三つの公園から出発している。デモがしにくくなるのは明らかだ。
吉住健一区長は当初、朝日新聞の取材に、ヘイトスピーチ対策に重点を置いた説明をしていた。だが担当部長による議会への報告では、住民の生活環境を守ることが理由とされ、デモ全般の制限を意図したものであることが明確になった。
77件のうち区がヘイト行為を確認したのは13件で、それ以外は労働、平和、反核などテーマはさまざまだ。これらにも広く網がかかることになる。
シュプレヒコールの音や交通規制などにより、デモが近隣住民の日常生活に一定の迷惑をかけるのは否定できない。
だが、デモや集会を通じて、意見を形づくり、それを他人に伝え、異なる考えにも耳を傾けて考えを深めることは、民主主義社会にとって極めて大切だ。誰もが利用できる公園は、それを実現する場所として大きな役割を果たしてきた。
ヘイト対策を検討する場合も、丁寧な議論を経て、しかるべき手続きを踏むのが筋だ。
たとえば川崎市は、公園などの利用を事前に規制できる仕組みを設けているが、要件を厳しく定め、有識者でつくる第三者機関にも意見を聴くことにしている。集会や表現の自由との調整に悩みながら、一件ごと慎重に判断する。そうしたとり組みを避けて一律規制に走るのは、安易な発想というほかなく、到底受け入れられない。
この問題をめぐっては、司法の場で蓄積された議論がある。公の施設の利用を自治体が拒否することの是非が争われた裁判で、最高裁は、拒めるのは人の生命・身体に明らかで差し迫った危険が予想できる場合に限るなどとして、集会の自由を重くみる見解を示している。
住民の生活環境を整えるのは自治体の大切な役割の一つだ。しかし、議会とも話し合わず、積み重ねられた司法判断も無視して突き進むのは危うい。
いったん立ち止まって考え直すよう、新宿区に求める。

働き方法成立 懸念と課題が山積みだ - 朝日新聞(2018年6月30日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13563398.html
http://archive.today/2018.06.29-222000/https://www.asahi.com/articles/DA3S13563398.html

安倍政権が今国会の最重要テーマに位置づけた働き方改革関連法が、多くの懸念と課題を残したまま成立した。
制度の乱用を防ぐための監督指導の徹底など47項目もの参院での付帯決議が、何よりこの法律の不備を物語る。本来なら、議論を尽くして必要な修正を加えるべきだった。
国会審議で浮き彫りになったのは、不誠実としか言いようのない政府の姿勢だ。比較できないデータをもとに、首相が「裁量労働制で働く方の労働時間は一般労働者よりも短い」と誤った説明をし、撤回に追い込まれた。その後も、法案作りの参考にした労働実態調査のデータに誤りが次々と見つかった。
一定年収以上の人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度高プロ)の必要性も説得力に欠ける。政府は当初、「働く人にもニーズがある」と説明した。しかし具体的な根拠を問われて示したのは、わずか12人からの聞き取り結果というお粗末さ。審議終盤、首相は「適用を望む労働者が多いから導入するのではない」と説明するほかなかった。
一方、これから答えを出さねばならない課題は山積みだ。
「この制度は本人の同意が必要で、望まない人には適用されない」と、首相は繰り返す。それをどのように担保するのか。
高プロと同じように、本人同意が条件になっている企画業務型の裁量労働制の違法適用が、野村不動産で昨年末に発覚したばかりだ。しかも、社員が過労死で亡くなるまで見抜けなかった。実効性のある歯止めをつくらねばならない。
省令など今後の制度設計に委ねられる部分は、ほかにも多い。政府は、高プロを「自由で柔軟な働き方」とするが、使用者が働く時間や場所を指示してはならないという規定は法律にない。適用対象業務を含め、労働政策審議会での徹底した議論が必要だ。
今回の法改正で、これまで労使が協定を結べば事実上無制限だった残業時間に、罰則付きの上限を設けることになったのは、働き過ぎ是正に向けた第一歩だろう。だが、この上限も繁忙月では100時間未満と、労災認定の目安ぎりぎりだ。さらなる時短の取り組みが欠かせない。
今回の改革の原点は、働く人たちの健康や暮らしを守ることである。その改革の実をどのようにあげるか。それぞれの職場の状況に応じた、労使の話し合いが重要となることは言うまでもない。

残業代ゼロ「過労死増える恐れ」 「働き方」法成立 - 東京新聞(2018年6月30日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018063002000158.html
https://megalodon.jp/2018-0630-0902-20/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018063002000158.html


政府が今国会の最重要法案と位置付ける「働き方」関連法案が二十九日の参院本会議で採決され、与党の自民、公明両党と、野党から日本維新の会希望の党参院会派の無所属クラブが賛成して可決、成立した。高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度高プロ、残業代ゼロ制度)」の創設が盛り込まれるなど、働く人たちを守る労働法制が大きく変わることになる。 (木谷孝洋)
野党の国民民主、立憲民主、共産、社民、自由の各党と、参院会派の沖縄の風は反対。参院会派・国民の声は藤末健三氏が賛成、平山佐知子氏が反対した。
成立を受け、安倍晋三首相は官邸で記者団に「七十年ぶりの大改革だ。これからも働く人の目線に立って改革を進めたい」と語った。立憲民主党枝野幸男代表は記者会見で「高プロが運用されれば過労死が増えかねない」と訴えた。
高プロは、労働基準法で「一日の労働時間は八時間」と定める規制を撤廃し、働いた時間と賃金の関係を一切なくす制度。適用されれば、残業代や深夜・休日の割増賃金は支払われなくなる。労働組合や過労死遺族らは「過労死の増加につながる」と反対。野党は法案から撤回を求めたが、政府、与党は応じなかった。
政府は「柔軟で多様な働き方につながる」と強調。対象に年収千七十五万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなどの専門職を想定する。ただ具体的な年収要件や業種は今後の労働政策審議会厚生労働相の諮問機関)に委ねる。適用には本人の同意が必要。
関連法はこれまで労使で合意すれば上限がなかった時間外労働に初めて罰則付きの上限規制を導入。非正規社員の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」など、労働者保護につながる内容も盛り込まれた。

「長時間労働、指導できない」 元監督官 違法適用の摘発も「困難」 - 東京新聞(2018年6月30日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018063002000148.html
https://megalodon.jp/2018-0630-0905-08/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018063002000148.html

高度プロフェッショナル制度」に対し、違法な働かせ方を取り締まる労働基準監督官の経験者からは「過労死につながる長時間労働は増えるが、指導はできない」との懸念が上がる。
高プロ長時間労働の指導そのものを除外する制度。長時間労働があったとしても、会社側を指導したら、高プロはそういう制度なんだと言われるだけ」
東京などで十九年間、労働基準監督官を経験した社会保険労務士の原論(さとし)さん(49)は、高プロの監督指導の難しさを指摘。「監督官が実質的に確認するのは、休日取得などの過重労働対策の項目を実施しているかどうか、形式的な部分だけに絞られてしまう」とみる。
二十八年監督官を務めた社労士の八木直樹さん(57)も「高プロは割増賃金がいらず、いくら働かせてもコストが発生しない。会社側が設定する業務量の規制もなく、ずるずると長時間労働になる」と危惧する。
さらに、高プロ対象外の社員への違法適用を摘発する難しさも。高プロの対象とされるコンサルタントや研究開発業務に該当するかどうかについて「会社によって職務は千差万別。監督官が見極めるには個別に調べる必要があり、時間がかかる」。会社側の説明任せになる恐れがあるという。
野村不動産が営業活動の社員らに裁量労働制を違法に適用した問題で、特別指導のきっかけは五十代男性社員の過労自殺だった。
「監督官にも年間のノルマがあり、数をこなさないといけない。過労死などの労災申請や本人の申告がなければ、(定期監督で)違法適用を見抜くのは現実的には不可能」と八木さん。厚生労働省によると、監督の対象となる事業所は全国に約四百万あるが、労働基準監督官は約三千人。現場からは高プロについて「監督官泣かせ」との声が聞こえる。 (石川修巳)

罰則付き残業規制 実現したが… 「過労死ライン」容認 - 東京新聞(2018年6月30日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018063002000144.html
https://megalodon.jp/2018-0630-0906-41/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018063002000144.html


「働き方」関連法では、労働界の悲願だった罰則付きの残業時間規制が導入される。経済界の反対でこれまで実現できなかった。政府は「労働基準法の制定以来、七十年ぶりの大改革」と胸を張るが、「過労死ライン」の残業を容認する点には批判が強い。
関連法は、残業時間の上限を原則として月四十五時間、年三百六十時間と規定する。これまでは労働者と使用者が協定を結べば残業時間は上限なしだった。
一方で、繁忙期は単月で百時間未満、年七百二十時間まで残業を認めた。上限を超えた場合、企業に懲役や罰金を科す。月百時間の残業は、過労死を認定する際の一つの基準となっている。過労死遺族からは「これでは過労死はなくならない」との批判が上がる。
損害保険大手の三井住友海上火災保険は四月、残業時間の上限を年三百五十時間から年五百四十時間に引き上げた。関連法が成立したことで、逆に「月百時間未満までなら残業させてもいい」という解釈が企業の間に広がり、残業時間の上限を引き上げる動きが起きることが懸念される。
関連法の残業規制は、建設、運輸、医師については五年間、適用を猶予。運輸は猶予期間後も年九百六十時間という緩い規制になる。これらの業種は過重労働が問題となっているだけに「働き方改革から置き去りにされる」との不安が出ている。 (木谷孝洋)

<北欧に見る「働く」とは>(5) 「貧困のわな」から救う - 東京新聞(2018年6月30日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018063002000160.html
https://megalodon.jp/2018-0630-0907-37/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018063002000160.html

ベーシックインカム(BI、基礎的な収入)は働いていても、そうでなくても月五百六十ユーロ(約七万三千円)を受け取れる。
失業給付に代わり導入できないか、フィンランド政府が社会実験を続ける目的は「貧困のわな」の解消だ。
失業給付は働き始めると減らされたりカットされる。働いた収入が少なくて、それだけで生活できない人は就労をあきらめたりやめてしまう。結局、貧困から抜け出せない。
「こうなる恐怖が一番大きい」 BIを担う社会保険庁のオッリ・カンガス平等社会計画担当部長は話す。わなに陥らぬ制度としてBIの可能性を探っている。
背景には近年の経済格差の拡大や、人工知能(AI)やITの進展による働き方の多様化がある。
経済成長率は五年前からやっと上向きに転じたが、失業率はここ数年、8%を超えたままだ。3%前後の日本よりかなり高い。少子高齢化も進む。
AIの活用が進めばなくなる職種がでてくる。就業できても短時間労働になり十分な収入が得られない仕事が増えるといわれる。
若者が減り高齢化が進む中で就業率を高く保つために長く働けるような社会にせねばならない。
ピルッコ・マッティラ社会保険担当相はBIに期待を寄せる。
「BIの実験対象者は経済的に厳しい人たちだが、BIが働く意欲を後押しし前向きに人生を考える機会を提案していると思う」
実験は終わり次第、検証作業に入る。
他方で実は、働いていることや求職活動をしていることを条件に現金を支給する別の給付制度も始めた。
また四十種類もの給付制度が林立、複雑化して国民に分かりにくくなってしまった今の制度全体を思い切って簡素化し、必要な給付が分かりやすく国民に届くようにする案も検討されている。
どんな支援なら働く人が安心し増えるのか。いうなれば、走りながら考えている。 (鈴木 穣)

「働き方改革」法が成立 健康と生活を守るために - 毎日新聞(2018年6月30日)

https://mainichi.jp/articles/20180630/ddm/005/070/152000c
http://archive.today/2018.06.30-000841/https://mainichi.jp/articles/20180630/ddm/005/070/152000c

安倍政権が今国会の目玉としていた働き方改革関連法が成立した。
過労死の根絶を求める声が高まるなど、雇用の状況や人々の価値観が大きく変わる中での制度改革だ。時代に合わせて、多様な働き方を実現していかねばならない。
関連法は三つの柱から成り立っている。残業時間規制、同一労働同一賃金の実現、高度プロフェッショナル制度高プロ)の導入である。
残業時間については労働基準法が制定されて初めて上限規制が罰則付きで定められた。「原則月45時間かつ年360時間」「繁忙期などは月100時間未満」という内容だ。
過労死ラインは月80時間とされており、規制の甘さも指摘されるが、現行法では労使協定を結べば青天井で残業が認められている。長時間労働が疑われる会社に関する厚生労働省の調査では、月80時間を超える残業が確認された会社は2割に上り、200時間を超える会社もある。
甘いとはいえ残業時間の上限を法律で明記した意義は大きい。

労基署は監督の強化
日本の非正規社員の賃金は正社員の6割程度にとどめられており、欧州各国の8割程度に比べて著しく低い。このため「同一労働同一賃金」を導入し、非正規社員の賃上げなど処遇改善を図ることになった。
具体的な内容は厚労省が作成する指針に基づいて労使交渉で決められる。若年層の低賃金は結婚や出産を控える原因にもなっている。少子化対策の面からも非正規社員の賃上げには期待が大きい。抜け道を許さないための厳しい指針が必要だ。
これらの改革を着実に実行するには、公的機関による監視や指導が不可欠だ。2015年に東京と大阪の労働局に「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」が新設された。検察庁へ送検する権限を持つ特別司法警察職員だが、現在は計15人しかいない。これでは全国の会社に目を光らせることなどできないだろう。
労働基準監督署による指導だけでなく、労働組合のチェック機能の向上、会社の取り組みに関する情報公開の徹底などが求められる。
最も賛否が分かれたのは高プロの導入だ。年収1075万円以上の専門職を残業規制から外し、成果に応じた賃金とする制度である。本人が希望すれば対象から外れることになったが、上司との力関係で、高プロ適用を拒否できる人がどれほどいるのか疑問が残る。
残業代を払わずに長時間労働をさせられる社員を増やしたい経営者側の意向を受けて、安倍政権が関連法に盛り込んだものだ。対象の職種や年収の基準を法律で規定することも一時は検討されたが、省令で決められることになった。
これでは、なし崩し的に対象が広げられる恐れがある。長時間の残業を強いられると過労死した人の遺族が懸念するのはよく分かる。経営側の利益のために制度が乱用されないよう、監視を強めるべきだ。

多様な労働実現しよう
一方、働く側からは柔軟な働き方を求める声が高まっている。介護や育児をしながら働く人は増え、地域での活動や副業、趣味などにもっと時間をかけたい人も多いはずだ。
求められるのは、コスト削減のための制度ではなく、働く人が自分で労働時間や働き方を決められるような制度である。
時代とともに単純労働は減り、付加価値の高い仕事が増えている。もともと創造的な仕事は労働時間で賃金を決めることが難しい。特に専門性の高い仕事をしている高収入の社員は、経営者に対してもっと発言力を持てるようにすべきだ。
企業にとっては、労働時間が減り、非正規社員の賃金が上がることで生産性の向上を迫られることになる。長時間労働につながる職場の無駄を見直すことから始め、人工知能(AI)やロボット、ITによって省力化できるものは進めていかねばならない。設備投資の余力のない中小企業への支援策も必要だ。
政府は今後、自宅での勤務を認めるテレワークなどについても検討する予定だ。今回の改革は初めの一歩に過ぎない。

労使ともに意識を変える時だ。
柔軟な働き方を広げていくには、時代のニーズに合った知識やスキルを個々の労働者が身につけられるよう、大学など高等教育や公的職業訓練を充実させないといけない。中高年の労働者も含めて、社会全体でバックアップしていくべきである。

「偏見対策を」陳情採択 墨田区議会で全国初 - 東京新聞(2018年6月30日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018063002000147.html
https://megalodon.jp/2018-0630-0910-14/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201806/CK2018063002000147.html

病気やけがで外見に特徴があり、周りから好奇の目や偏見で見られてしまう「見た目問題」について区民への啓発などを求める陳情が二十九日、東京都墨田区議会で全会一致で採択された。 
同区を拠点に当事者の支援を行い、陳情を提出したNPO法人「マイフェイス・マイスタイル(MFMS)」によると、見た目の症状に関する陳情採択は全国初。外川(とがわ)浩子代表(51)は、「公的機関が社会問題として認知してくれた。他の地域でも声を上げる後押しになれば」と話している。
病気で顔にアザがあったり、髪がなかったりする当事者は、いじめのほか、就職や結婚が困難となる現状があり、MFMSは「見た目問題」と名付けて啓発活動を続けてきた。医療用ウィッグや、エピテーゼという耳など体の一部の人工物を作るのは保険適用外で、経済的な負担も大きい。
陳情では、問題の当事者は、他人から侮辱されて自己肯定感を低下させているとして、区に啓蒙(けいもう)活動や相談窓口の設置、庁内体制の整備、当事者の実態把握を要望。区議会は陳情に伴い、国に就職差別禁止やエピテーゼなどへの助成金創設の施策を求める意見書の提出を全会一致で決めた。区の人権同和・男女共同参画課の宮本佳代子課長は「採択を重く受け止め、関係各課で何ができるかの話し合いから始めたい」と述べた。 (神谷円香)

(大弦小弦)検索でたどりつかない、本とアイデアを… - 沖縄タイムズ(2018年6月29日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/274815
https://megalodon.jp/2018-0630-0911-50/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/274815

検索でたどりつかない、本とアイデアを−。入り口にたたずむ立て看板。店の存在価値を端的に表していた

▼名物書店として知られ、25日に惜しまれつつ38年の歴史に幕を下ろした青山ブックセンター六本木店。営業最終日に訪ねた。地下鉄の出口を出てすぐ、超高層の六本木ヒルズのふもと。店の前でテレビ局のリポーターが利用客の取材をしているのが見える

▼店内に足を踏み入れて驚く。入り口に近く、最も目立つ売り場にベストセラーの書籍は見当たらない。建築の専門書や海外の分厚い写真集などがずらり。他店にはない品ぞろえを売りにしてきたという評判も納得だ

眠らない街・六本木を象徴するように、東日本大震災前までは午前5時まで営業していた。深夜にふらりと著名な作家や雑誌編集者が姿を見せる。そんな個性派書店も時代の波に勝てなかった

▼書店調査会社アルメディアによると、全国の書店数は2000年に約2万1千店だったが、今年5月には約1万2千店。隆盛の電子書籍インターネット書店に押され、街の本屋は青息吐息だ

▼ネットは確かに重宝する。時間を選ばず、検索も瞬時。でも、見つける本は自分の興味ある範囲に限られる。書店という知的空間で、本を通して思いがけない世界に触れる。人生は、予期せぬ出会いがあるからこそ面白い。(西江昭吾)

<定年退職後の手続きは?>(上)社会保険 正確な情報集め判断を - 東京新聞(2018年6月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201806/CK2018062102000185.html
http://web.archive.org/web/20180621042814/http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201806/CK2018062102000185.html


六十歳以降に長年勤めた会社を定年などで退職する人は、社会保険や税金の手続きを自分で進めねばならなくなる。会社勤めの間は、社会保険料や税金が給料から天引きされるなど、手続きのことをあまり考えずにすんでいたが、手間は一気に増えることに。そのときになってあわてずにすむよう、退職後の手続きのポイントを社会保険、税金の二回に分けて説明する。 (白井康彦)

◆健康保険 三つの選択肢を退職前から検討
「退職後すぐに手続きが必要なのは健康保険。主な選択肢が三つあって、どれを選ぶか退職前から考えねばなりません」。名古屋市社会保険労務士、高木隆司さんは注意喚起する。
健康保険の適用事業所に再就職する場合は、その事業所の健康保険に加入できるが、それ以外は対応が必要になる。健康保険未加入だと、病気になったとき医療費を全額負担せねばならないからだ。
第一の選択肢は勤めていた会社の健康保険への任意継続。二年間だけ認められている制度だ。在職時は保険料を会社が半額負担してくれていたが、それがなくなるため、保険料は原則、退職前の二倍になるが、上限もある。
第二は、国民健康保険への加入。国保の保険料は、住んでいる自治体、世帯人数、前年の所得などによってまちまち。任意継続と国保加入のどちらが保険料が安いかは、一概には言えない。任意継続したときの保険料を勤めていた会社で確認し、自治体の国保担当窓口で国保料を試算してもらって比較するといい。
第三は、健康保険に入っている家族の被扶養者になる方法。保険料の負担はなくなるが、本人の年収などの要件が厳しく、対象者はそれほど多くない。

雇用保険 仕事を探す場合、失業給付の対象
次いで重要なのは雇用保険。多くの退職者が基本手当(失業給付)を受給できるからだ。意外に感じる人も多いが、定年後などの退職後でも仕事を探していれば、失業給付の対象になる。手続きはハローワークで行う。基本手当の給付日数は雇用保険の加入期間に応じて決まり、原則として最大で百五十日。給付日額は離職前六カ月間の給与水準で設定され、上限は七千四十二円。
退職するのが六十五歳以降の場合、基本手当に代わって高年齢求職者給付金という一時金が受給できる。

◆年金 開始時期を考え受給の際に申請
公的年金の加入手続きについては、当面あまり考えなくてもいい定年退職者が多い。加入義務があるのは、二十歳以上六十歳未満の人だからだ。厚生年金の適用事業所に再就職すれば、厚生年金に再加入して、保険料は給料から天引きされる。
老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給する際は申請が必要。受給開始時期を早める繰り上げ受給、遅くする繰り下げ受給の制度を使うかどうかも自分で検討せねばならない。
定年退職するのが夫、妻が専業主婦で六十歳未満というケースは注意が必要。妻は、夫の定年退職で扶養から外れ、納めずにすんでいた国民年金保険料を納めねばならなくなる。
過去に国民年金保険料の未納期間がある人は、申し込みをすれば、国民年金に加入して保険料を納付する任意加入制度が使える。ただし、六十五歳以降は、この制度は使えない。
高木さんは、定年などによる退職後の社会保険の手続きの全般的な注意点として「知り合いなどに聞いた情報を頼りにして考える人が多いが、情報をうのみにせず、国民健康保険については市区町村、雇用保険についてはハローワーク公的年金については年金事務所にしっかり問い合わせて判断してください」とアドバイスする。

<定年退職後の手続きは?>(下)税金 「面倒だから…」敬遠は損 - 東京新聞(2018年6月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201806/CK2018062802000214.html
http://web.archive.org/web/20180628024715/http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201806/CK2018062802000214.html


会社勤めの間は会社が所得税や住民税の天引きをしてくれるが、六十歳以降に定年などで退職すると納税について自分で手続きをしなければならなくなる。現役時代に所得税の確定申告を経験していない人は特に戸惑いが大きい。退職後の所得税や住民税の納税のポイントについて考えてみた。(白井康彦)

所得税過払いで還付の可能性大
<確定申告>
所得税は、収入から経費や各種の所得控除の金額を差し引き、残りの金額に税率を掛けるといった手順で税額を計算する=図。会社勤めの間は、会社がこうした計算をして年末調整で所得税を精算してくれる。このため、確定申告をする会社員の多くは、医療費や寄付金の控除で還付を受けるケースだが、「手続きが面倒」という理由で申告しない人は少なくない。
名古屋市の税理士、永井里樹さんはかつて大手企業の人事部に所属。退職する社員に税や社会保険の手続きについて説明する業務にも関わっていた。その経験から「退職後、自分で所得税の申告をする人は少ない」と指摘。一方、「申告すれば還付されることがあるので、退職後は申告方法などを勉強するのが賢明です」と話す。
還付を受けられる可能性が高いのは、退職した年の所得税だ。退職した月までは一年間在籍するとの前提で所得税が天引きされており、退職後に同程度の収入を得ない限り、所得税の払いすぎになるためだ。現役時代は会社が年末調整で過不足を精算していたが、退職後は自ら確定申告で手続きをしないと還付を受けられない。

◆公的老齢年金の受給者が対象に
<申告不要制度>
公的な老齢年金の受給者を対象にした確定申告不要制度がある。対象になるための条件は、年金額が年間四百万円以下で、年金以外の所得金額の合計額が年二十万円以下。この制度は「申告する必要がない」という趣旨で、申告が禁止されているわけではない。生命保険料控除や医療費控除の適用で還付が受けられる場合は申告すれば得になる。

◆書類出さないと年金額に影響も
<扶養控除>
六十五歳以上で百五十八万円以上の老齢年金があるなど、年金収入が一定額以上ある人は、所得税や住民税が年金から天引きされる。ただ、扶養控除などを受けるには、扶養親族等申告書を日本年金機構に提出する必要がある。
会社勤めのときは、扶養控除申告書を出さない社員がいると、会社は早く出すよう催促するが、日本年金機構はそのようなことはしないため、提出を忘れる年金受給者は多いという。
書類は毎年八〜十月に送られてくるが、厚生労働省などによると、日本年金機構が昨年夏に受給者に発送した扶養親族等申告書について、様式変更などが原因で未提出の人が激増。今年二月支給の年金では、所得控除を受けられずに天引き後の年金額が本来の金額より少なかった人が約百三十万人に上った。
送られた書類は必ずチェックし、様式や記入法などが分からない場合は近くの年金事務所に問い合わせ、必要事項を記入して返送するべきだ。

◆前年所得で算出 退職翌年は高額
<住民税>
多くの場合、定年退職した後は収入が激減する。その結果、退職した翌年の六月を迎えたときに、自治体から送られてきた住民税の納税通知書を見て「住民税額がこんなに高いなんて」と驚くことになる。住民税は前年の所得をもとに計算するためだ。税理士の永井さんは「退職した翌年に納める住民税が高いことは覚悟しておくべきでしょう」とアドバイスしている。