(大弦小弦)検索でたどりつかない、本とアイデアを… - 沖縄タイムズ(2018年6月29日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/274815
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検索でたどりつかない、本とアイデアを−。入り口にたたずむ立て看板。店の存在価値を端的に表していた

▼名物書店として知られ、25日に惜しまれつつ38年の歴史に幕を下ろした青山ブックセンター六本木店。営業最終日に訪ねた。地下鉄の出口を出てすぐ、超高層の六本木ヒルズのふもと。店の前でテレビ局のリポーターが利用客の取材をしているのが見える

▼店内に足を踏み入れて驚く。入り口に近く、最も目立つ売り場にベストセラーの書籍は見当たらない。建築の専門書や海外の分厚い写真集などがずらり。他店にはない品ぞろえを売りにしてきたという評判も納得だ

眠らない街・六本木を象徴するように、東日本大震災前までは午前5時まで営業していた。深夜にふらりと著名な作家や雑誌編集者が姿を見せる。そんな個性派書店も時代の波に勝てなかった

▼書店調査会社アルメディアによると、全国の書店数は2000年に約2万1千店だったが、今年5月には約1万2千店。隆盛の電子書籍インターネット書店に押され、街の本屋は青息吐息だ

▼ネットは確かに重宝する。時間を選ばず、検索も瞬時。でも、見つける本は自分の興味ある範囲に限られる。書店という知的空間で、本を通して思いがけない世界に触れる。人生は、予期せぬ出会いがあるからこそ面白い。(西江昭吾)