罰則付き残業規制 実現したが… 「過労死ライン」容認 - 東京新聞(2018年6月30日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018063002000144.html
https://megalodon.jp/2018-0630-0906-41/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201806/CK2018063002000144.html


「働き方」関連法では、労働界の悲願だった罰則付きの残業時間規制が導入される。経済界の反対でこれまで実現できなかった。政府は「労働基準法の制定以来、七十年ぶりの大改革」と胸を張るが、「過労死ライン」の残業を容認する点には批判が強い。
関連法は、残業時間の上限を原則として月四十五時間、年三百六十時間と規定する。これまでは労働者と使用者が協定を結べば残業時間は上限なしだった。
一方で、繁忙期は単月で百時間未満、年七百二十時間まで残業を認めた。上限を超えた場合、企業に懲役や罰金を科す。月百時間の残業は、過労死を認定する際の一つの基準となっている。過労死遺族からは「これでは過労死はなくならない」との批判が上がる。
損害保険大手の三井住友海上火災保険は四月、残業時間の上限を年三百五十時間から年五百四十時間に引き上げた。関連法が成立したことで、逆に「月百時間未満までなら残業させてもいい」という解釈が企業の間に広がり、残業時間の上限を引き上げる動きが起きることが懸念される。
関連法の残業規制は、建設、運輸、医師については五年間、適用を猶予。運輸は猶予期間後も年九百六十時間という緩い規制になる。これらの業種は過重労働が問題となっているだけに「働き方改革から置き去りにされる」との不安が出ている。 (木谷孝洋)