共謀罪 衆院法務委で可決 与党側が採決強行 - 毎日新聞(2017年5月19日)

https://mainichi.jp/articles/20170519/k00/00e/010/298000c
http://archive.is/2017.05.19-050121/https://mainichi.jp/articles/20170519/k00/00e/010/298000c

組織犯罪を計画段階で処罰可能とする「共謀罪」の成立要件を改めたテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案は19日午後、衆院法務委員会で自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決された。与党側が審議時間の目安とする計30時間(参考人質疑を除く)に達したとして、質疑終局の動議を提出し、採決に踏み切った。民進党共産党などは「質疑が不十分だ」などと猛反発し、怒号が飛び交う中での採決となった。
政府・与党側は23日以降に衆院を通過させ、6月18日までの今国会中の成立を目指している。
この日の審議では、自民党土屋正忠氏が「東京五輪を狙ったテロの動きなどを当然予想しなければならない」などと必要性を強調。民進党逢坂誠二氏は「論点は山積している。生煮えの状態で採決するのは断じて認められない」と採決に反対し、「一般人も捜査対象になるのではないか」と懸念を示した。
委員会開催に当たっては、民進党共産党が18日の法務委の理事懇談会で、19日に採決しないことを確約するよう求めたのに対し、与党は「確約はできない」と応じなかった。そのため、鈴木淳司委員長(自民党)が職権で委員会の開催を決定した。
与党側は当初、17日の法務委で採決する構えを見せたが、民進、共産、自由、社民の野党4党が金田勝年法相の不信任決議案を衆院に提出。同日の法務委は開かれなかった。不信任決議案は18日の衆院本会議で自民、公明、日本維新の会の反対多数で否決された。
改正案の審議は法案提出前の今年1月から衆参予算委員会などで重ねられ、衆院法務委では先月19日に実質審議入り。捜査機関の乱用を懸念する声などに配慮し、自民、公明両党と日本維新の会は取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けの検討などを付則に盛り込んだ修正を加えた。
テロ等準備罪は、適用対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定。集団の活動として、2人以上で犯罪を計画し、うち1人以上が計画に基づく「実行準備行為」を行った場合に、計画した全員を処罰可能としている。対象犯罪は当初の676から277に削減された。【鈴木一生、平塚雄太】

共謀罪 「ふざけている」ヤジと怒号 採決強行・衆院委 - 毎日新聞(2017年5月19日)

https://mainichi.jp/articles/20170519/k00/00e/040/300000c
http://archive.is/2017.05.19-045552/https://mainichi.jp/articles/20170519/k00/00e/040/300000c

共謀罪」の成立要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案は19日午後、衆院法務委員会で採決された。金田勝年法相の不信任案の提出と否決を挟んで再開された同日午前の審議は、採決を前提とした質問を繰り出す与党議員に対し、民進党など法案に反対する野党側はヤジも含めて激しく反発。ピリピリとした雰囲気に包まれた場内と国会前では「採決強行」に憤る声が上がった。【遠藤拓、島田信幸】
衆院分館2階の第14委員室前。金田法相は午前9時の開会の約2分前、ゆったりとした足取りで姿を見せた。前日に民進、共産、自由、社民の野党4党が提出した不信任案が退けられたせいか、余裕の表情もうかがえる。
一方、民進逢坂誠二氏(野党筆頭理事)は険しい顔つきで報道陣の前に現れた。開会に先立つ理事会で与党側から質疑後の採決を提案されたと明かした上で、「ふざけているとしか思えない。党内で協議もできない」と怒りをぶちまけた。
鈴木淳司委員長(自民)の職権で決まった19日の審議は4時間の質疑が設定された。参考人質疑を除く審議時間が計30時間に達し、採決の環境が整うとの与党側の計算によるものだ。これに対し、野党側は一貫して「審議は不十分」と訴えてきた。
混み合う場内。冒頭で、自民の土屋正忠氏が「大臣一人に質問を集中させている」「珍問、奇問が出されている」と野党側を皮肉った。さらに「締めくくりが近いから基本的なことを尋ねたい」と述べると、与党議員とみられる「そうだ」の声。逆に「何を言っているんだ」との怒号も上がった。
「4時間」が着々と進む中、飛び交うヤジや怒号は収まらず、鈴木委員長は「静粛に願います」と声を張り上げる。傍聴人たちは固唾(かたず)をのんで見守った。

「共謀罪」通れば堂々監視 岐阜県警個人情報収集問題から考える - 毎日新聞(2017年5月17日)

https://mainichi.jp/articles/20170517/dde/012/010/012000c?inb=ys
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捜査機関が常時、国民の動静を監視する「監視社会」になることはない−−。安倍晋三首相は「共謀罪」法案についてこう説明し、国民の不安を払拭(ふっしょく)しようとしている。だが、「ない」と言い切れるのか。約3年前に発覚した岐阜県警大垣署による個人情報収集問題を例に考えた。【庄司哲也】

運動歴から行動臆測/正当化の法的根拠に
共謀罪が導入されるとどうなるか。それを先取りしているのがこの問題です」。大垣署の「監視」対象だった当事者の一人、近藤ゆり子さんはそう話す。一体どのような問題なのか。経緯を振り返ろう。
中部電力の子会社シーテック名古屋市)が岐阜県大垣市などに計画する風力発電施設建設計画をめぐり、住民の動向などの個人情報を大垣署が収集し、同社に漏らしていたことが2014年7月、新聞報道で明るみに出た。同社は同署との「意見交換」の内容を議事録にまとめていたため、住民らは名古屋地裁に証拠保全を申し立て、議事録を入手。そこには、目を疑うようなやりとりが記載されていた。

大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する『近藤ゆり子氏』という人物がいるが、ご存じか。本人は、60歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、しゃべりも上手であるから、このような人物とつながると、やっかいになると思われる>
議事録によると、意見交換は同署が持ちかけて行われていた。近藤さんはダム建設の反対運動や反原発運動に関わったことはあるが、意見交換が行われた時点では風力発電施設の建設計画について全く知らなかったという。
同署による情報提供には、住民の勉強会に関するこんな記述もあった。

<勉強会の主催者である松島氏が風力発電にかかわらず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることをご存じか>
ここで名指しされた「松島氏」とは、同市上鍛治屋地区の傳香寺住職、松島勢至(せいし)さんだ。「勉強会」は松島さんと地元の自治会長が、低周波音による健康被害や環境への影響の有無などを不安視して開催した。「かつてゴルフ場造成の反対運動を行ったことが問題視されたようだ。といってもそれは30年も前のこと。この間、ずっと警察から目をつけられていたのだろうか」。松島さんはあきれ顔で話す。
同社は風力発電施設の建設にこぎつけるための戦略として、<周囲を固めることにより、上鍛治屋地区を孤立化させる>と議事録に記載。これに対する同署の反応は<了解した>。近藤さんは「地域コミュニティーの核になる寺の住職と自治会長を敵視して、警察が地域の『孤立化』に手を貸そうとした。さらには、警察が収集した情報を一方の当事者である私企業に住民運動つぶしのために提供している」と批判する。
入手した議事録は13年8月から14年6月までの計4回分だ。「病歴」「学歴」などの個人情報も含まれており、近藤さんや松島さんら住民4人は容疑者を特定しないまま地方公務員法守秘義務)違反容疑で岐阜地検に告発したが不起訴になった。
住民4人は昨年12月、プライバシーが侵害されたなどとして、県に計440万円の支払いを求める訴訟を岐阜地裁に起こした。訴えられた岐阜県側は今年3月の第1回口頭弁論で「意見交換」した事実を認める一方、情報収集活動の具体的な内容については認否を明らかにしなかった。その理由は答弁書にこう書かれている。「(警察が)公共の安全と秩序の維持、犯罪の予防鎮圧を目的として情報収集活動を行うこともその責務である」「どのような情報を、いつ、どのように収集し、保管しているか、といったことが明らかになれば、今後の情報収集活動自体の遂行が困難になる」
つまり、特定の人が犯罪を行うであろうと勝手に推測し、事前に監視することを正当化しているようにみえる。共謀罪の適用対象を巡り、金田勝年法相は衆院本会議で「自然環境や景観の保護などを主張する団体は正当な目的にあると考えられ、組織的犯罪集団にあたることはなく、座り込みを計画したとしても処罰の対象となることはない」と答弁しているが、なるほど、「処罰」まではしないが、「情報収集」はするということか。
一方、北海道警の裏金問題を告発した元道警釧路方面本部長(警視長)の原田宏二さんは「大垣の場合のように従来行われていた情報収集活動にお墨付きを与えるのが共謀罪といっていい。一般市民が対象となることは当然過ぎるほどです」と一笑に付す。特にテロ・警備などを担当する公安警察の場合、情報収集が重要であり、その手段として共謀罪を使うと考えられるからだ。
「14年10月に警視庁公安部は過激派組織『イスラム国』(IS)に参加しようとした北海道大の学生の関係先として、私戦予備および陰謀の疑いでジャーナリストの自宅を家宅捜索し、パソコンなどの機材を押収した。だが、その後、立件や送検したという発表は目にしていない。捜査対象が組織的犯罪集団なのかどうかはメンバーを調べてから判明するのであり、最初から分かるとは限らない。当然、一般市民も監視対象となり得る」と原田さん。
住民4人が起こした訴訟の弁護士、岡本浩明さんは「大垣市で起きた問題は、警察が市民を監視対象とし、その個人情報や活動に関する情報を収集、管理して第三者に提供したというものです。そのような活動を正当化する法令は『ない』と訴状に盛り込みましたが、共謀罪が成立すれば、このような市民監視に法的根拠を与えてしまうのです」と危険性を強調する。
そして近藤さんは、こんな懸念を示した。「『審議を30時間したからそれで終わり』で果たしてよいのか。むしろ、数の力で押し切る強権的な政治こそ、民主主義が機能しなくなり、テロのポテンシャル(潜在的な能力)を高めることにつながりはしないか」と。
ベトナム戦争など米国の「過ち」を告発し続けるオリバー・ストーン監督。米政府が秘密裏に構築した監視プログラムの存在を暴露し、世界に衝撃を与えた米国家安全保障局(NSA)の元職員エドワード・スノーデン氏の実像に迫った映画「スノーデン」では、監視対象者の友人らのメーリングリストソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)をのぞき見る様子が描かれる。メールなどのつながりをたどれば、ネットの空間上では膨大な数になり、「最初の標的から3人目になると(監視した相手は)250万人にもなる」とスノーデン氏を演じる主人公が告白する。そして、このセリフが特に印象に残った。「テロは口実で(監視は)政府の覇権のためだった」
まるで、今の日本に向けられているようではないか。

「こころの中に踏み込む共謀罪反対」 都内で日弁連主催の集会 - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051902000129.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0933-20/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051902000129.html

「盗聴と密告の監視社会になる」。有識者らの訴えに切迫感がにじんだ。犯罪の計画を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案について、与党は十九日にも衆院法務委員会で採決する構えだ。十八日夕、国会に近い東京都千代田区内幸町では日弁連主催の反対集会が開かれた。
会場は約六百人で超満員。映画監督の周防(すお)正行さん(60)は「僕は『組織的映像制作集団』の一員。警察、検察、裁判所批判の映画も撮っている」と、法案の組織的犯罪集団にされかねない危険性を強調。他の登壇者も「廃案に向けて闘い抜く」と訴えた。 (皆川剛、増井のぞみ、土門哲雄)

憲法学者首都大学東京教授 木村草太さん
声楽サークルが楽譜をコピーするため店に商品を探しに行ったら、著作権侵害の準備行為とされかねない。憲法19条の思想良心の自由に踏み込み、31条の罪刑法定主義に反して対象範囲が広すぎる。テロ行為を準備段階で処罰する法律は既にあり、不要だ。

◆元仙台地裁所長・弁護士 泉山禎治さん
裁判所が(捜査が適正かを)チェックするから大丈夫だと言えるのか。資料の大半は警察の言い分で容疑者の弁解はないから、逮捕状請求を却下しづらい。逮捕後の勾留請求の却下も、全国の地裁で6%と少ない。共謀罪が施行されれば、逮捕も勾留も多くなる。

◆映画監督 周防正行さん
共謀罪に賛成する政治家もやめれば一市民で、ご自分の権利に大きく影響する。有罪と決定する証拠は、当事者や関係者の自白、密告になる。供述しかない場合、冤罪(えんざい)が増える。共謀罪がある社会は危険。テロ対策にならない共謀罪には断固反対する。

◆映画監督 山田火砂子さん 
私は85歳。戦前、作家の小林多喜二は(反戦の)本を書き、治安維持法違反で殺された。私は彼の母を映画化したが、母は子どもが生きて帰って来るのが一番。共謀罪には、子どもを亡くしたら一番悲しい思いをする母が反対して。政府のウソを見破って。

◆「共謀罪」きょう採決方針 衆院委で与党
共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案を巡り、野党四党が提出した金田勝年法相の不信任決議案は十八日の本会議で、自民、公明両党と日本維新の会などの反対多数で否決した。民進、共産、自由、社民各党などは賛成した。与党は十九日の衆院法務委員会で「共謀罪」法案を採決する方針で、二十三日の衆院通過を目指している。
本会議後の法務委理事懇談会で、与党は十九日の「共謀罪」法案審議を提案。民進、共産両党は同日に採決しないよう主張し折り合わず、鈴木淳司委員長(自民)が職権で委員会開催を決めた。

金田法相の答弁、際立つ迷走ぶり 「私の頭脳では対応できない」 - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051902000125.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0934-12/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051902000125.html

共謀罪」法案の審議を巡る金田勝年法相の不信任決議案は、十八日の衆院本会議で否決された。それでも、答弁の迷走ぶりや官僚任せが目立ち、提案責任者らしからぬ行動が目立つ。野党は「資質の欠如ぶりは、憲政史上例を見ない」と痛烈に批判している。 (山田祐一郎)
「私の頭脳ではちょっと対応できない」
二月八日の衆院予算委員会で、金田氏は野党の質問にこう答えた。金田氏はこの二日前、「共謀罪」を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、報道各社に「法案提出後、所管の法務委員会で議論を重ねるべき」との文書を配布。野党から「立法府に対する言論弾圧だ」と反発されると、文書を撤回し謝罪したが、さらに野党に追及され、苦しい答弁を続けた。
衆参両院では、法案提出前から審議が行われたが、金田氏は「詳細については成案を得てから答弁する」と繰り返し、すでに野党から批判を浴びていた。
法務省の担当者が、金田氏の背後から答弁内容をささやく姿が目立つとして、民進党逢坂誠二氏は四月六日の衆院本会議で「私の支持者が、金田大臣の姿を見て、『あれはまるで二人羽織』と称した」と批判したこともあった。
四月中旬に始まった衆院法務委員会での審議では、政府参考人として金田氏の答弁を補佐する法務省の林真琴刑事局長の出席を巡って与野党が対立。鈴木淳司委員長(自民)が職権で採決することを決め、賛成多数で出席を認める異例の展開となった。以降、林氏は委員会に常時出席し、政府側答弁の中心となった。
委員会では、金田氏が一般人が共謀罪の捜査対象になるかとの懸念について、「捜査の対象にはならない」と断言したのに対し、盛山正仁法務副大臣が「対象にならないことはない」と述べ、答弁のずれも。林氏や盛山氏の答弁後に、金田氏が全く同内容の答弁を繰り返すこともあった。
準備行為の下見と花見の違いを問われた際は「例えば花見であればビールや弁当を持っているのに対して、下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などを持っている」と述べ、失笑を買った。
金田氏は十七日に不信任決議案が提出された際、「説明を精いっぱい果たしていると思っている」と述べた。

加計問題で会期小幅延長か 「国会、ろくなことがない」 - 朝日新聞(2017年5月18日)

http://www.asahi.com/articles/ASK5L4JSKK5LUTFK00J.html
https://megalodon.jp/2017-0519-0048-24/www.asahi.com/articles/ASK5L4JSKK5LUTFK00J.html

金田勝年法相の不信任決議案が18日の衆院本会議で否決され、「共謀罪」法案は23日に衆院通過する公算が大きくなった。政府・与党は6月18日までの会期内に法案を成立させる構えを崩していないが、参院での審議入りが遅れた場合に備え、小幅の会期延長の検討を始めた。
安倍政権は「加計学園」と「森友学園」の二つの学園問題の追及をかわす狙いから、会期延長を避けたいのが本音だ。首相周辺は「国会を開いているとろくなことはない」と語り、政権が分岐点と見るのが、衆院通過後の24日に参院で審議入りできるかどうかだ。

18日の衆院本会議後、自民党二階俊博幹事長は大島理森衆院議長と国会内で会談し、「共謀罪」法案の23日の衆院通過方針を伝えた。翌24日に参院審議入りできれば「ぎりぎり会期内に成立できる」(自民国会対策委員会幹部)とみる。
ただ、衆院通過時には採決強行に伴う混乱が予想され、野党側がその翌日の審議入りに応じるかは不透明だ。自民参院幹部は「努力するが難しいかもしれない」と漏らす。
24日を逃すと、安倍晋三首相がイタリアでの主要国首脳会議に向かうため、参院審議入りが29日以降にずれ込み、会期延長が不可避になる。その場合、6月23日の東京都議選告示日前後までの小幅延長パターンが与党内で検討されている。
自公両党は「共謀罪」法案に加えて、性犯罪を厳罰化する刑法改正案を成立させることでも合意しており、衆院幹部は「刑法を成立させるため数日の延長はありうる」と言う。
ただ、通常国会は国会法で1回しか延長できない。「共謀罪」法案の参院審議が紛糾すれば、都議選への影響が避けられない。そこで浮上するのが、7月末まで大幅延長し、法案成立を都議選後に持ち越すパターンだ。公明党内には「延長するなら小幅では意味がない」(幹部)として大幅延長を支持する声もある。(田嶋慶彦、寺本大蔵)

加計学園新学部文書「書かれた内容 ほぼ事実」 実名記載の北村元自民議員が証言 - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051902000119.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0943-30/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017051902000119.html

安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が、系列大学の獣医学部を国家戦略特区に新設する計画を巡る記録文書が存在した問題で、文書の一部に実名で登場する北村直人・元自民党衆院議員が十八日、本紙の取材に応じ、「文書の自分に関する部分はほぼ事実。昨年十月に文部科学省に伝えた内容だ」と証言した。 (小林由比)
文書は、文科省が特区を担当する内閣府から「総理の意向だ」などと伝えられたことを示し、安倍首相の意向が同省の政策判断に影響を与えた可能性が出ている。民進党が入手し、菅義偉(すがよしひで)官房長官文科省は文書を認めていないが、北村氏の証言により信ぴょう性が高まった。
文書はA4判で八枚あり、北村氏は十月十九日付の一枚に登場。日本獣医師会顧問でもある北村氏が、学部新設を巡って三人の政治家の意見を聞き、文科省に伝えた内容をまとめた体裁をとっている。
中身は(1)石破茂・元地方創生担当相から「党のプロセスを省くのはおかしい」と言われた(2)国家戦略特区を所管する山本幸三・地方創生担当相から「(新設のための)お金を心配している」と言われた(3)麻生太郎財務相から秘書を通じ「(やらない方向で)決着したと思っていた」と言われた−とされている。

北村氏は取材に「私の知る限りの情報を文科省に提供したものに、ほぼ間違いない。それを文科省がメモ書きしたものだろう」と話した。

文科省 昨秋に一転容認 「総理意向」文書時期と一致か
加計学園が系列大学の獣医学部を新設する計画の国家戦略特区の導入に消極的だった文部科学省が昨年秋を境に、一転して容認していたことが分かった。「総理のご意向」などとして、文科省が作成したとみられる複数文書は、その内容から、秋ごろに作成したとみられる。 (中沢誠)
加計学園の系列大学の誘致を目指す愛媛県今治市は、二〇一四年まで十五回にわたり、獣医学部の新設を構造改革特区で申請した。しかし、文科省は「特区になじまない」などとして否定的な態度を崩さず、実現しなかった。
今治市が一五年六月に国家戦略特区への申請に切り替えてからも文科省は反対し、内閣府ヒアリングで反論を繰り返した。昨年九月十六日のヒアリングでも、「『既存の大学では対応が困難』という特区の条件を満たしていない」と主張し、新設に慎重姿勢を示した。
獣医学部新設を巡り文科省が作成したとみられる複数の文書は、一部に十月の日付の記載があるほか、昨年十月二十三日投開票の衆院福岡6区補選に触れていることなどから、昨秋ごろの記録とみられる。一部には、内閣府からの伝達事項として「官邸の最高レベルが言っている。文科省メインで動かないといけないシチュエーションにすでになっている」などと記載され、獣医学部新設を巡り、内閣府文科省に早期対応を迫っていたことがうかがえる。
加計学園は一八年度開設を目標にしており、昨秋までに制度改正しないと間に合わない可能性が高かった。内閣府は昨年十月下旬に制度改正の原案を作成し、同月二十八日に内閣府から文科省に文案を示した。国会答弁によると、獣医学部の新設に反対していた文科省は十一月二日、制度改正に了承する旨を内閣府に回答。その一週間後、獣医学部新設を認める制度改正が決定した。

「森友」交渉記録の消去許さない 電子データ保全を NPOが申し立てへ - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051902000128.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0941-34/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051902000128.html


大阪市の学校法人「森友学園」に国有地が格安で払い下げられた問題で、財務、国土交通両省と学園との交渉内容などを記した電子データが消去されないよう、NPO法人「情報公開ク
リアリングハウス」が、両省を相手に、証拠保全東京地裁に申し立てることが十八日、分かった。財務省は六月に省内のシステムを入れ替える予定で、記録の復元が不可能になるのを防ぐのが狙い。政府の電子データを対象とした証拠保全の申し立ては異例。 (金杉貴雄)
申し立ては十九日。証拠保全の対象は、財務省から学園への国有地売却に関する交渉、政府内協議などに関する財務省や近畿財務局、国交省大阪航空局の記録。これらを不開示とした政府の決定を取り消す訴訟と同時に申し立てる。
クリアリングハウスは今年二月から三月まで、財務省国交省に対し、情報公開法に基づき記録の公開を請求。両省は四月五日までに、いずれも「文書が確認できなかった」「文書が存在しない」との理由で不開示を決定し通知した。
財務省などは国会答弁などで記録について「保存期間は一年未満」とし、「学園への売却契約を締結した昨年六月で事案が終了し、速やかに廃棄した」と説明。電子データも「同様に削除した」と主張する。
これに対し、クリアリングハウスは申し立てで、学園は国有地を取得した代金支払いを十年分割で払うため、「終了」との判断は誤りである上、「八億円もの値引きに関わる証拠書類は保存期間五年に該当する」と指摘し、速やかな開示を請求。廃棄したとしても「デジタルデータを復元することは十分に可能だ」と指摘する。
しかし、財務省が六月にシステムを入れ替えれば復元が不可能になるとして、恣意(しい)的解釈で記録が廃棄されたまま、違法な公文書管理の是正機会を失ってしまうと証拠保全を求める。
クリアリングハウスの三木由希子理事長は、本紙の取材に「森友問題では多くの特例を重ねており、財務省は後日の説明や訴訟に備え記録は残しているはず。もし、電子データの削除が事実だとしたら保全しなければ復元できなくなる」と指摘する。

<消えた有権者>(下)代筆投票 「秘密」を保障した憲法と矛盾 - 東京新聞(2017年5月19日)

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http://megalodon.jp/2017-0519-0943-01/www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201705/CK2017051902000162.html

投票所で代筆できる人を選管職員に限定したことで、認知症などで文字が書けなくなった高齢者の「一票」が届きにくくなっている。同じことは、障害がある人たちにも起きている。憲法が国民に保障している「投票の秘密」。この権利は、現在の代筆投票の制度で守られているだろうか。 (三浦耕喜)
「国家に『あなたは主権者ではない』と認定されたのかと、大変苦痛に感じました」。もつれてはいるが、はっきりした声が今月十二日、大阪地裁の法廷に響いた。投票所で代筆できる人を選管職員に限った公職選挙法の規定は憲法に違反するとして、希望する補助者の協力で投票する権利の確認などを国に求めた訴訟の初弁論だ。
陳述したのは、原告の大阪府豊中市に住む中田泰博さん(44)。先天性の脳性まひがある。文字は書けるが、所定の記載欄に収まるようには書けない。無効票にされかねないと、家族やヘルパーに代筆してもらっていた。
ところが二〇一三年の公選法改正で、それが不可能になった。見ず知らずの選管職員に投票先を伝えて書いてもらう制度になったためだ。
「投票内容は高度なプライバシーのはず。だからこそ憲法で明文化されている」と中田さんは言う。昨年七月の参院選では地元選管に何度も談判したが、改正法を盾に認められず、投票を断念した。
憲法は一五条四項に「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」と定める。中田さんには「すべて」に、自分が入っていないように感じられる。だれに、どの党に、投票するのか。その秘密が守られることは民主政治の根幹だ。投票先が分かれば、不当な圧力を受けかねない。自由に投票先を選べる根拠でもある。
もちろん障害の制約はある。だから、せめて「この人なら教えてもいい」という人を選ばせてほしい。これが中田さんの願いだ。
一三年の法改正時の議事録を読むと、憲法が保障する「投票の秘密」を掘り下げた形跡はない。憲法与野党ともこだわる政治の大事のはず。なのに、だれも憲法との矛盾に気付かなかったのだろうか。「当事者の声を聞かないから」。中田さんは、こうつぶやいた。

◆当事者の声をよく聞いて
サッカーJ2のFC岐阜元社長で筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘う恩田聖敬さん(39)も昨年七月の参院選で疑問を感じた一人。恩田さんは言う。
      ◇
ほぼ動けない、話せない状態になって初の選挙でした。郵便投票は煩雑そうで断念。妻とヘルパーに連れられ、投票所に向かいました。バリアフリーで中まではスムーズに入れます。
妻が事情を説明すると、選管職員が私の意思を確認して代筆するといいます。しかし、選管職員は口文字ができません。候補者名を指さし、まだ動く首で意思を確認します。仕方ないので、そうしましたが、第三者に投票先を知られるのは気持ちの良いものではありません。大きな争点がある選挙なら、自分の信条を知られぬよう、棄権を選択するかもしれません。
例えば、家族や介助者をあらかじめ登録し、その代筆なら認めてはどうでしょうか。話せない私でも、家族や介助者とはコミュニケートできます。障害があっても人を守り、支えることは普通にあります。一緒に生きられる社会をつくるため、当事者の声をよく聞いてほしいと思います。

自民、年内にも党改憲案 - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051902000126.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0937-10/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017051902000126.html

自民党二階俊博幹事長と党憲法改正推進本部の保岡興治本部長は十八日、党本部で会談し、安倍晋三首相(党総裁)が取りまとめを指示した党改憲案について、早期の取りまとめを目指すことを確認した。年内にも結論を出す方向で議論を進める。
保岡氏は会談後、記者団に「できるだけ急いで国民に具体案を示す」と説明した。
会談では、推進本部の態勢を強化する方針で一致。同本部と別に、改憲草案の起草委員会を設ける案もあったが、設置は当面見送られる見込み。
保岡氏は記者団に、党内で検討する改憲項目について、首相が挙げた自衛隊を明記する九条改憲や高等教育の無償化に加え、大災害など緊急事態での国会議員の任期延長を例示。「具体案を明確にして、国民に憲法改正の関心を持ってもらう。わが党がリードして憲法改正の新しい段階に入っていくことが必要だ」と話した。
会談には下村博文幹事長代行、推進本部の上川陽子事務局長らも同席した。

日本の平和主義 憲法主権者ここにあり - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051902000138.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0942-30/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051902000138.html

憲法を改正するに当たっては、主権者たる私たち自身が、将来に負うべき責任の重さをしっかりと自覚しておくことが、まず肝要ではなかろうか。
とりわけ九条には、この条文をよすがに戦後日本の平和主義が七十年も、脈々と守り継がれてきた重さがある。それを改めるということは、例えば九条の空文化で、まだ見ぬ将来世代の人々を、戦地へ送ることになるかもしれない。そういう先も見据えての、歴史的な選択の重さである。
これほどの重大事だからこそ、改憲の選択を国民に求める手続きも、よほど厳重でなければなるまい。そもそも改憲は、憲法の主権者の責任において国民が主体的に判断することだ。手続きの基点には何世代にもわたる議論の末に、国民の過半が改憲を望むような世論の醸成がなければならない。
この本筋に立てば、安倍晋三首相が唱えた九条改憲の道筋がいかに無理筋か、見えてくる。
二つの側面から指摘したい。
一つは、立憲主義の本旨に照らして、だ。憲法に縛られる側の権力者が、恐らく縛りを緩める方向で改憲の議論を率いる。しかも自らの政権運営に都合よく議論の期限を切るというのでは、国民主権の本筋に真っ向から逆行する。
もう一つは、国民投票への国会発議に関して、憲法上「全国民を代表する」国会議員の本分を、はき違えていることだ。
首相には、改憲派議員が発議要件の「三分の二」を超す今のうちに、発議を急がせたいとの思惑があるのだろう。だが国会は無論、一権力者の意向を代表するだけの多数決機関ではない。国民の代表者である議員は、まず改憲を望む世論の広がりを受けてこそ、その民意を代表して発議にも動く。それが本来の手順ではないか。
今ある「三分の二」超も、改憲をあえて“争点隠し”にした選挙の結果であって、改憲を望む民意の反映とは到底言い難い。その国会が発議を先行させ、短時間の議論で国民に重い選択を迫ることになれば、国民は責任ある判断を尽くせず、歴史に取り返しの付かない禍根を残す危険性も高まる。ここが問題なのである。
国会発議に向けては、首相の期限切りにも「縛られることなく」幅広い合意を目指している憲法審査会の議論を、粛々と積み上げるべきだ。開かれた議論がいつか、私たちの責任ある改憲判断の素地にもなればと期待したい。

言わねばならないこと(92)憲法そのまま未来に手渡す エッセイスト・水野スウさん - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2017051902000200.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0942-08/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2017051902000200.html

誰でも参加できるサロン「紅茶の時間」を毎週水曜日、金沢市近郊の自宅で開いている。三日の憲法記念日は水曜日で、参加者から安倍晋三首相が九条改憲を二〇二〇年に施行したいと発言したことを聞いた。反対しづらい東京五輪に合わせ、みんなが一色に染められていく恐怖を感じた。
「紅茶の時間」は三十四年前に子育て仲間がほしいと始め、今では憲法も中心的な話題。一五年に安全保障関連法が成立したころから、各地に招かれ、出前で憲法を語る「憲法カフェ」の機会も増えた。安保法で骨抜きにされたとしても、九条は存在していることに意味がある。
憲法で九条とセットになっているのは、個人の尊重が書かれた一三条。個人を大切にすれば、国への犠牲を強いる戦争はできない。自民党改憲草案では、個人の自由はすごく小さくなる。国に文句を言わせないために、「共謀罪」を作ろうとしているのではないかと勘繰りたくなる。
私たちの自由と権利は、いろんな国の無数の人たちが戦って築いた。それで憲法基本的人権が盛り込まれ、九七条に「永久の権利」と明記された。私は憲法と同い年。何の努力もせずに、気付いたら、素晴らしい贈り物「憲法」を手にしていた。それを未来にそのまま手渡したい。
だからこそ、自由と権利を国民の「不断の努力」で保持しなければならないという一二条が大切。そういう努力をすることを「一二条する」と言っている。私にとっては「紅茶の時間」や「憲法カフェ」がそう。努力を重ね「小さな平和のひとかけら」になりたい。
      ◇
日本を「戦える国」に変質させる安保法が成立して十九日で一年八カ月。各地で平和憲法を守る活動が続いています。
<みずの・すう> 1947年、東京生まれ。九条の会・石川ネット呼び掛け人。著書に「ほめ言葉のシャワー」「わたしとあなたのけんぽうBOOK」など。

憲法改正で「困難な課題」克服?首相メッセージ読み解く - 朝日新聞(2017年5月19日)

http://digital.asahi.com/articles/ASK5L4Q9QK5LUTFK00K.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0939-59/digital.asahi.com/articles/ASK5L4Q9QK5LUTFK00K.html

憲法9条自衛隊の存在を明記し、五輪が開催される2020年に改正憲法の施行をめざす――。憲法施行70年の節目にメッセージを打ち出し、憲法改正に向けアクセルを踏み込んだ安倍晋三首相。だが、メッセージを子細に読むと、疑問点や矛盾点が浮かぶ。憲法は理想を書き込むものなのか。憲法を変えれば、日本が抱える「困難な課題」は解消するのだろうか。

改憲目的、「未来」全面
改憲の自己目的化だ」「高等教育の無償化は、憲法問題ではなく、政策判断」。18日の衆院憲法審査会。野党の批判は、安倍晋三首相の憲法改正への姿勢そのものに向けられた。「口を開けば言う(改憲)条項が違う。レガシー(遺産)のために改憲したいのではないか」(蓮舫民進党代表)という疑念が広がる。
首相は、少子高齢化、経済再生、安全保障環境の悪化など「我が国が直面する困難な課題」に立ち向かい、未来への責任を果たすために憲法改正が必要だと主張する。だが、憲法自衛隊を明記したり、教育無償化を規定したりすることがなぜ「困難な課題」の克服につながるのか、具体的には語られない。
メッセージには「未来」が10回出てくる。コラムニスト小田嶋隆氏は、「未来=新憲法」を全面に打ち出し、東京五輪と合わせて「日本が新しく生まれ変わる」という空気感を演出しているとみる。「せっかく引っ越したんだから新しい冷蔵庫を買いましょうよ。まったく論理的ではないが、気分的にはわかる。雰囲気で改憲まで持って行こうという狙いでは」
国民の共感は広まるのか。朝日新聞が今月13、14日に行った世論調査で「首相に一番力を入れてほしい政策」を聞いたところ、「社会保障」が29%、「景気・雇用」が22%。「憲法改正」は5%にとどまった。

■五輪の政治利用たびたび
首相は、東京五輪パラリンピックが開催される2020年を「新しい憲法が施行される年にしたい」とも宣言した。五輪に関連づける安倍首相の言動は、これまでもたびたび注目を浴びてきた。
五輪招致を決めた13年の国際オリンピック委員会総会では、東京電力福島第一原発の汚染水問題を「状況はコントロールされている」と世界にアピール。昨年8月、リオ五輪の閉会式ではマリオに扮して登場するという異例の演出をした。
今年1月の国会では「共謀罪」の趣旨を含む法案をめぐり、「国内法を整備し、条約を締結できなければ東京五輪を開けないと言っても過言ではない」と答弁した。五輪招致で「治安の良さ」をPRしたにもかかわらずだ。
五輪には政治的な思惑に翻弄(ほんろう)されてきた歴史がある。1936年のベルリン五輪ナチス・ドイツ国威発揚に利用したのがその極みだ。「(国際オリンピック委員会は)スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する」。オリンピック憲章はそう定める。
スポーツ評論家の玉木正之氏は「日本人が大好きな五輪を政権がうまく利用している。メディアの批判も弱い」と指摘。「五輪の政治利用が何をもたらすのか。スポーツ自体が時の政権の顔色をうかがいだせば、社会を豊かにするスポーツ文化の可能性を狭めてしまう」と危惧する。
64年の東京五輪の位置づけも誇張気味だ。高度経済成長の始まりは50年代。64年は東海道新幹線の開業などもあり、五輪が経済発展の象徴であった一方、65年には戦後初の赤字国債が発行。いまも未解決の水俣病など、公害問題といった経済発展のひずみが表面化していく時期とも重なる。沖縄は依然、米軍統治下でもあった。

集団的自衛権の行使争点
「あなたの改憲共産党を利用するのをやめてください」。5月9日の参院予算委員会で、共産の小池晃氏が安倍首相に反論した。首相が、憲法学者や政党の自衛隊違憲論を取り上げ、そういう議論が生まれる余地をなくすのが改憲の目的と説明しているためだ。
18日の衆院憲法審査会。民進辻元清美氏が、「(集団的自衛権の行使を認めた)安保法制には9割近くの憲法学者憲法違反だと言ったが、そのことは無視して強行に採決した」と指摘し、首相の論理を「ご都合主義」と批判した。
そもそも、9条1項と2項をそのまま残し、自衛隊の存在を位置づけるとはどういうことなのか。
首都大学東京の木村草太教授(憲法)は「憲法自衛隊を書き込む以上は任務を明確にしなければならない。閣議決定で行使を認めた集団的自衛権を明記する必要がある」と指摘。そうなると、憲法改正国民投票の最大の争点は、9条の下での集団的自衛権の行使を認めるのか否かとなり、首相の加憲の主張は、自衛隊現状追認にとどまらない重大な論争を引き起こす可能性がある。「首相はどこまで覚悟を持っているのだろうか」と木村氏は語る。
さらに、国会では国民投票の否決が何をもたらすかは論じられていない。自衛隊国防軍にする提案が否決されても自衛隊は現状維持されるが、自衛隊の存在を書き込む提案が否決されたら……。憲法施行から70年。思わぬ難題を抱え込むことになるかもしれない。(編集委員・豊秀一、木村司)

石川健治・東大教授(憲法)寄稿
立憲主義的な憲法の定義のなかに、理想はない。特定の理想を書き込まないのが、理想の憲法だ。
憲法は国の未来、理想の姿を語るものです」という安倍首相は、そこを履き違えている。理想はひとつではない以上、異なる理想をもつ人々が共存するためには、無色透明の国家をつくって、国民に特定の理想を押しつけないのが最上の方法である。
もちろん、理想をもたない国家では、元気が出ない。だから、ひとは憲法に理想を書き込もうとするのであり、それ自体は避けられない。多くの犠牲を払ったあげくの敗戦で、惨めに武装を解除された日本も、だからこそ平和国家という高い理想を憲法に書き込んだ。この気分に「押しつけ」はなかったはずである。
しかし、仮に憲法が理想を掲げるとしても、多極共存の枠組み(権力分立と権利保障)としての立憲主義を支え得る、普遍的に通用する理想でなくてはならない。それはグローバル化した時代の要請でもある。時代錯誤な「美しい国」の理想が憲法に書き込まれることで、それを「美しい」とは考えない日本人が、非国民として排除されるようなことになっては困る。憲法改正手続きを通じて、国民は分断され、少数派が抑圧される。それは最悪のシナリオである。(寄稿)

     ◇

■首相メッセージ〈要旨〉
今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、我が国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、憲法改正の発議案を国民に提示するための、「具体的な議論」を始めなければならない、その時期に来ていると思います。
例えば、憲法9条です。多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊違憲とする議論が、今なお存在しています。自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、「自衛隊違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます。「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは、国民的な議論に値するのだろう、と思います。高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。
新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい、と強く願っています。

がん患者は「働かなくていい」 自民議員の発言に患者の怒り「それでも人ですか?」(岩永直子さん) - BuzzFeed News(2017年5月18日)

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/yajikougi?utm_term=.rcGzeae9Bq

受動喫煙を防止するため、飲食店などの屋内を原則禁煙にする対策を盛り込み、今国会での成立を目指す厚生労働省健康増進法改正案。

自民党が15日に開いた厚生労働部会で、がん患者が職場でたばこの煙にさらされる辛さを訴えた議員に対し、別の議員から「(がん患者は)働かなくていい」とヤジが飛んだことが認定NPOフローレンス代表の駒崎弘樹さんのブログなどで指摘され、がん患者らから批判を浴びている。

「全国がん患者団体連合会(全がん連)」(天野慎介理事長)は、この発言は見過ごせないとして18日、抗議の意を表明し、改めて屋内禁煙の法制化とがん患者の就労支援を訴える見解を出した。
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全がん連理事で、がん患者の就労支援に取り組んできた桜井なおみさんはBuzzFeed Newsの取材に「がん患者の就労、両立支援が政府主導で進む中でのこのような発言は残念極まりない」と話す。

理事長の天野慎介さんも「喫煙者に対して吸うのをやめてほしいと言えない人はたくさんおり、まだ働きづらいがん患者は尚更です。もっと社会の理解が進み、適切に配慮していただけるよう、厚労省案の早期成立を願います」と語った。