言わねばならないこと(92)憲法そのまま未来に手渡す エッセイスト・水野スウさん - 東京新聞(2017年5月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2017051902000200.html
http://megalodon.jp/2017-0519-0942-08/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2017051902000200.html

誰でも参加できるサロン「紅茶の時間」を毎週水曜日、金沢市近郊の自宅で開いている。三日の憲法記念日は水曜日で、参加者から安倍晋三首相が九条改憲を二〇二〇年に施行したいと発言したことを聞いた。反対しづらい東京五輪に合わせ、みんなが一色に染められていく恐怖を感じた。
「紅茶の時間」は三十四年前に子育て仲間がほしいと始め、今では憲法も中心的な話題。一五年に安全保障関連法が成立したころから、各地に招かれ、出前で憲法を語る「憲法カフェ」の機会も増えた。安保法で骨抜きにされたとしても、九条は存在していることに意味がある。
憲法で九条とセットになっているのは、個人の尊重が書かれた一三条。個人を大切にすれば、国への犠牲を強いる戦争はできない。自民党改憲草案では、個人の自由はすごく小さくなる。国に文句を言わせないために、「共謀罪」を作ろうとしているのではないかと勘繰りたくなる。
私たちの自由と権利は、いろんな国の無数の人たちが戦って築いた。それで憲法基本的人権が盛り込まれ、九七条に「永久の権利」と明記された。私は憲法と同い年。何の努力もせずに、気付いたら、素晴らしい贈り物「憲法」を手にしていた。それを未来にそのまま手渡したい。
だからこそ、自由と権利を国民の「不断の努力」で保持しなければならないという一二条が大切。そういう努力をすることを「一二条する」と言っている。私にとっては「紅茶の時間」や「憲法カフェ」がそう。努力を重ね「小さな平和のひとかけら」になりたい。
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日本を「戦える国」に変質させる安保法が成立して十九日で一年八カ月。各地で平和憲法を守る活動が続いています。
<みずの・すう> 1947年、東京生まれ。九条の会・石川ネット呼び掛け人。著書に「ほめ言葉のシャワー」「わたしとあなたのけんぽうBOOK」など。