護憲の旗の下で総がかり 5・3 今年は有明で大集会 - 東京新聞(2016年4月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016042702000121.html
http://megalodon.jp/2016-0427-0925-36/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016042702000121.html

日本国憲法は今年、公布七十年を迎える。五月三日には、安全保障関連法の廃止を目指す市民団体などが憲法の平和主義や立憲主義を守ろうと、東京都内で集会を開く。主催者は「改憲に突き進む政府を阻止するために重要な参院選への決起の場にもしたい」と参加を呼び掛けている。
「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」などでつくる実行委が二十五日、都内で記者会見した。会場は江東区東京臨海広域防災公園有明防災公園)で、ジャーナリストのむのたけじさん、高校生平和大使の生徒らがスピーチする。
他にも安保法に反対する若者グループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」の奥田愛基(あき)さん、沖縄・辺野古の新基地建設や福島の原発事故被害、子どもの貧困などに取り組む人たちも思いを語る。
集会では、安保法廃止を求めるため二千万人を目指して集めてきた署名の集約状況も発表する。集会後には会場周辺を歩き、憲法擁護などをアピールする。
各地で開かれていた憲法集会は昨年、初めて統一開催され、三万七千人が集まった。今年は参院選野党共闘を後押しする「市民連合」も加わり、野党各党も参加する。六月五日にも国会周辺で大規模な集会を予定している。 (小林由比)

安保法 初の集団提訴 東京と福島「違憲」と賠償請求 - 東京新聞(2016年4月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016042702000135.html
http://megalodon.jp/2016-0427-1004-25/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016042702000135.html

安全保障関連法は憲法違反だとして、空襲・原爆の被害者や米軍基地周辺住民など全国の五百人余りが二十六日、安保法制に基づく自衛隊出動の差し止めや、憲法が保障する「平和的生存権」侵害への慰謝料として、国に一人当たり十万円の損害賠償を求める二つの訴訟を東京地裁に起こした。安保法制の違憲性を問う集団訴訟は初めて。
弁護士らでつくる「安保法制違憲訴訟の会」が呼び掛けた集団訴訟の第一弾で、同日は福島地裁いわき支部でも約二百人が国家賠償を求めて提訴した。会によると、他に約千五百人から訴訟原告になりたいと要望があり、夏ごろまでに名古屋、大阪、広島、長崎など全国の十以上の地裁で同様の提訴を予定している。
これまでも個人の原告が安保法廃止や違憲確認を求めて訴訟を起こしているが、いずれも具体的な審理に入らず却下されている。
訴状では、集団的自衛権の行使としての防衛出動や後方支援などは自衛隊による武力行使で、戦争放棄を定めた憲法九条違反とし、自衛隊の出動差し止めを請求。安保法制定で、日本が反撃を受けたりテロの対象となる事態を覚悟しなければならず、平和的に生活する権利が既に侵害されたとも主張している。
内閣官房国家安全保障局は「安保法制は憲法に合致しており、必要不可欠と考える」とコメントした。

オバマ氏の挑戦的外交 アメリカは変わるか - 東京新聞(2016年4月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016042702000141.html
http://megalodon.jp/2016-0427-1006-06/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016042702000141.html

外交は政治の一部であり、結果は歴史が判定する。弱腰外交と呼ばれたアメリカのオバマ外交は果たしてどうか。武断を超えた深謀にも見えるのだが。
四月下旬、オバマ大統領は、サウジアラビアの宮殿で深々としたいすに座ってサルマン国王と向き合っていた。二人はかつての両国にない不仲といわれ、国王は空港に大統領を出迎えもしなかった。
大統領の後ろ、控えのいすにはかつてベトナム反戦運動でならしたケリー国務長官、そして外交官というより学者肌ともいわれ、目を射る緋色(ひいろ)のスーツを着込んだライス大統領補佐官。二期目のオバマ外交は大統領とこの二人で組み立てられ、進められている。世界の嫌われ者かもしれない。

◆過去と異なった様相
過去のアメリカ外交と明らかに様相は異なった。
シリアで政府軍の毒ガス使用が疑われた時、もし一線を越えれば武力攻撃を行うと半ば公言していたようでもあったのに、結局は武力に踏み切らない。弱腰論はひときわ大きくなった。しかし政治の世界では空爆支持が多かったとはいえ、民衆の間では武力不介入の声が大きかった。
オバマ外交は、アメリカはもはや世界の警察官ではない、とも言った。国際政治家や学者の中には、そうは言っても世界に突出した米軍事力なくしては世界の安定は保てないという現実認識は今に至ってもある。
確かにロシアや中国の力の行使に対しては、頼りになるのはアメリカの軍事力によるにらみである。ウクライナにせよ、南シナ海にせよ、力の緊張はアメリカの見えざる力によってかろうじて均衡を保っている。アメリカの力はまだまだ世界には必要なのである。

◆軍事よりましな解決
しかし世界は徐々に変化を遂げてもいる。
戦争万能のようだった二十世紀と、戦争に嫌気がさした二十一世紀とは違うようだ。血を流す戦争はマネーを競う経済競争となりあらゆる分野ではじまったグローバル化国民国家の枠組みはゆるがせないにせよ、国民が国家の言いなりだった時代から、国家が国民のいうことをより聞かざるをえない時代に突入している。
アメリカは世界に冠たる軍産複合国家である。兵器を生産するから戦争を起こさずにはいられない、とまでいわれる。
オバマ大統領は、アイクことアイゼンハワー大統領をしばしば引き合いに出すそうだ。
アイクは連合国軍最高司令官としてノルマンディー作戦などを指揮した第二次大戦の英雄。戦後、共和党に大統領候補として引っ張り出され、就任後は朝鮮戦争を休戦させ反共強硬路線を貫いた。ところが一九六一年一月、七十歳の国民向け退任演説でこう述べた。
<第二次大戦までアメリカに軍需産業はなかった。鋤(すき)をつくっていたアメリカ人は求められれば剣もつくった。しかし今やわれわれは巨大で恒常的な軍需産業をもたざるをえなくなった。警戒せねばならない。それがアメリカの自由や民主的政治プロセスを危うくさせるようなことを許してはならない>
不景気で、格差が進んで、しかも軍事費が国の財政を苦しめているという現実に直面して、オバマ氏が半世紀前のアイクの現実的予言を思い起こしたとしても不思議はない。何より、アフガンとイラクからの撤兵を公約として選ばれた大統領である。エリートでなく民衆の選んだ大統領である。
イラン核合意は欧州と中ロを巻き込んでの、いわば世界合意である。イスラエルとサウジは頭に血が上るほど怒った。過去のアメリカとは違ったからだ。そこに新味と挑戦はある。孤立させて緊張を極限化させるよりましな解決はあるはずという態度だ。よりましな未来を期待するという意味ではこれも弱腰かもしれない。キューバ復交は、軍事でなく外交の勝利といってもいい。アメリカの自衛に大切な中南米を流血なしにロシア、中国から取り戻しつつある。

◆深謀遠慮の広島訪問
そして日本に対しては、被爆地・広島の訪問を検討している。一足先にケリー国務長官は各国外相を引き連れ原爆ドームの前に立った。ことを起こす前の深謀遠慮にも見える。
退任前の政治遺産づくり、レガシーづくりといわれる。そうではあろうが、過去の大統領たちのそれとはちがうかもしれない。イランにせよ、キューバにせよ、また広島訪問の可能性にせよ、それらはアメリカ外交の質を根底から変えるようだからである。
この外交の結果はまだ見えない。だから評価はまだ早いのだが世界史への挑戦であることは疑いないだろう。

特定秘密の検証は困難 指定61件を追加 - 東京新聞(2016年4月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016042702000133.html
http://megalodon.jp/2016-0427-1007-00/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201604/CK2016042702000133.html

政府は二十六日、特定秘密保護法について、二〇一五年中の運用状況をまとめた報告書を閣議決定し国会に提出した。同年中に指定した六十一件を含め、一五年末時点の特定秘密は計四百四十三件。初の国会報告となった一四年分と同様、それぞれの秘密の類型しか示さず、指定が適切かどうかを国会や国民が検証するのは困難なままだ。 (関口克己)
一五年中に指定された特定秘密の分野別の内訳は、防衛関連三十九件、外交関連十四件、スパイ防止とテロ防止が各四件。
政府は今回、防衛と外交、スパイ防止、テロ防止の四分野を五十五に分けた類型に、それぞれの特定秘密がどれに当たるかを初めて示した。一四年分の報告に対し、有識者らでつくる情報保全諮問会議が記述の「具体化」を求めたことへの対応。
だが、今回の報告も特定秘密の内容は、国家安全保障会議(NSC)が指定した一件を「開催した会議の議論の結論に関する情報」と記述したほか、「内閣情報調査室の人的情報収集に関する情報」(内閣官房)、「収集した電波情報等の情報」(防衛省)などと具体性を欠くものが目立つ。
秘密の記述については、衆院情報監視審査会が三月三十日に公表した報告書で「具体的にどのような内容の文書が含まれているかがある程度想起されるよう」に求めたばかり。内閣官房は同審査会の報告書は公表から間もなく、審査の対象期間も異なるため反映していないと説明。今後の改善は「検討する」としている。
国会報告によると秘密を扱うのに問題がないかを調べる適性評価を実施した人数は、一五年末時点で九万六千七百十四人。評価を拒否したのは、途中で同意を取り下げた二人を含め計三十八人。プライバシーの侵害を恐れたとみられるが、内閣官房は「理由は不明」とした。評価を受けて不適格とされたのは一人。
特定秘密が記録された行政文書は一五年末時点で二十七万二千二十点。一四年末時点より八万二千八百二十七点増えた。
秘密保護法は政府が特定秘密の指定と解除の状況を毎年一回、国会に報告するよう義務付けており、今回の報告が二回目。

社説 最高裁の謝罪 違憲判断をなぜ避けた - 毎日新聞(2016年4月27日)

http://mainichi.jp/articles/20160427/ddm/005/070/040000c
http://megalodon.jp/2016-0427-1008-04/mainichi.jp/articles/20160427/ddm/005/070/040000c

憲法の番人」が、憲法違反の裁判手続きをしていたかどうかが問題の核心だ。そこから逃げたと受け取られても仕方ない。
ハンセン病患者の刑事裁判などが長年、隔離施設に設置された「特別法廷」で開かれていた問題で、最高裁が調査報告書を公表した。
その中で、最高裁は特別法廷について「差別的な取り扱いが強く疑われ、違法だった」と総括し、「偏見、差別を助長し、患者の人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、おわび申し上げる」と謝罪した。
ただし、最高裁の検証の姿勢には疑問が残る。最高裁は昨年、検証を始める際、第三者の意見を聞くために有識者委員会を設けた。この委員会の意見が同時に公表された。
意見は、特別法廷は憲法の平等原則に違反すると明確に指摘した。裁判の公開原則についても、隔離された場所に法廷を設置しており、「違憲の疑い」を拭えないとした。
最高裁はどう答えたのだろうか。
公開原則については「正門などに開廷を知らせる告示がされていた」として、憲法違反ではないと結論づけた。特別法廷が、療養所や刑務所など社会から隔絶された場所で開かれていた実態をみれば、社会常識では通用しない論理だ。
一方、「平等原則違反」の指摘に対し、最高裁は報告書ではっきりした見解を示さなかった。
記者会見した今崎幸彦事務総長は「憲法が定める平等原則に違反していた疑いがある」と言及したが、「具体的な審査状況が分からず違憲と断定できない」と述べた。説明は不十分で、報告書との整合性もない。
報告書は、裁判の運用の誤りに問題を矮小化(わいしょうか)しようとしているように読める。激しい差別にさらされたハンセン病患者に対する謝罪の意思が、これで伝わるだろうか。
ハンセン病患者の救済は、熊本地裁が2001年、療養所の入所者らが起こした国家賠償訴訟で、1960年以降の隔離の必要性を否定し、訴えを認めたのがきっかけだ。判決は確定し、政府や国会は謝罪した。
司法だけ問題を放置していたが、救済の流れの中で、無実を訴えたまま死刑が執行されたハンセン病患者の男性の再審を求める関係者が検証を求め、最高裁が重い腰を上げた。
だが、元患者らは「違憲性を認めなければ謝罪にならない」と手厳しい。何のための報告書だったのか、最高裁は改めて自問すべきだろう。
有識者委員会は、さらなる検証や、人権研修の必要性を指摘した。今後、個別事件で再審請求が出される可能性もある。ハンセン病をめぐる検証が一件落着したわけではない。最高裁はそう肝に銘じるべきだ。

ヘイト法案 反差別の姿勢を明確に - 朝日新聞(2016年4月27日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12330171.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2016-0427-1009-46/www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p

乱暴な言葉で特定の人種や民族への差別をあおるヘイトスピーチを、どうなくしていくか。
自民、公明の両与党が国会に出した対策法案の審議が、参院法務委員会で続いている。
野党側はすでに昨年、独自案を出しており、少なくとも与野党は、法整備の必要性では一致したことになる。
運用次第では「表現の自由」を脅かしかねないとして、法学者らの間には慎重論も根強い。確かに、何を対象にどう規制するか難しい問題をはらむ。
だが近年、ヘイトスピーチは収まる気配がない。高松高裁は一昨日、朝鮮学校に寄付をした徳島県教組を攻撃した団体の活動を「人種差別的思想の現れ」と認め、賠償を命じた。
少数派を標的に「日本から出て行け」といった差別をあおる言説は各地でみられる。人権侵害をもはや放置するわけにはいかない。何らかの立法措置も必要な段階に至ったと考える。
与野党両案ともに罰則規定はなく、理念法にとどまる。社会の最低限のルールとして差別は許されないことを明記すべきだが、一方で「表現の自由」を侵さないよう最大限の配慮をする姿勢は崩してはなるまい。
国連は、人種差別撤廃条約を21年前に批准した日本で国内法が整っていないことを問題視している。人種や国籍を問わず、差別に反対する姿勢を明示するのは国際的な要請でもある。
与野党は、狭い政治的利害を超え、普遍的な人権を守る見地から透明性のある議論を重ね、合意を築いてほしい。
今後の審議は与党案が軸になるだろうが、問題点がある。
与党案は差別的言動を受けている対象者を「本邦外出身者とその子孫」としている。だが、これまでアイヌ民族なども標的となってきた。ここは「人種や民族」と対象を広げた野党案を採り入れるべきだ。
また、与党案が「適法に居住する(本邦外)出身者」と対象を限定しているのも理解に苦しむ。在留資格の有無は本来、差別と無関係であり、難民申請者らに被害がおよびかねない。
自民党ではこれまで、ヘイトスピーチを本来の趣旨とは異なる形で利用しようとする言動があった。脱原発デモや米軍基地への反対運動への法の適用を示唆するような発言があった。
懸念されるのは、まさにそうした政治や行政による乱用である。人種や民族に対する差別行為をなくす本来の目的のために、恣意(しい)的でない的確な運用をいかに担保するか。その監視のあり方も十分論議すべきだ。

NHK籾井会長、原発報道で「専門家の見解は不安をかきたてる」と指示 - 朝日新聞(2016年4月27日)

http://www.huffingtonpost.jp/2016/04/26/momii-answered-about-official-announcement_n_9782144.html
http://megalodon.jp/2016-0427-0943-57/www.huffingtonpost.jp/2016/04/26/momii-answered-about-official-announcement_n_9782144.html

原発報道に識者見解、不安与える」 NHK会長が指示
熊本地震に関連する原発報道について「公式発表をベースに」と内部の会議で指示していたNHKの籾井勝人会長が、同じ会議で「当局の発表の公式見解を伝えるべきだ。いろいろある専門家の見解を伝えても、いたずらに不安をかき立てる」などとも指示していたことが26日分かった。
会議は20日に開かれた災害対策本部会議。朝日新聞が入手した会議の記録では、専門家に言及した部分はなかった。「発言をそのまま載せると問題になると考え、抜いたのでは」と話す関係者もいる。NHK広報局は「部内の会議についてはコメントできない。原発に関する報道については、住民の不安をいたずらにあおらないよう、従来通り事実に基づき正しい情報を伝えている」としている。
NHK会長「原発はコメント加味せず報道」 再び持論
熊本地震に関連する原発報道について「公式発表をベースに」と内部の会議で指示していたNHKの籾井勝人会長が26日、衆院総務委員会で会議について説明した。「事実に基づいて、モニタリングポストの数値などを、我々がいろんなコメントを加味せずに伝えていく」など、公式発表をそのまま伝えるべきだとの考えを改めて示した。現場や専門家からは疑問の声が上がっている。
会議は20日に開かれた災害対策本部会議。関係者によると、籾井氏は「原発については、住民の不安をいたずらにかき立てないよう、公式発表をベースに伝えることを続けてほしい」などと指示したという。
26日の衆院総務委員会で民進党奥野総一郎氏から公式発表が何を指すかについて質問されると、籾井氏は、気象庁原子力規制委員会九州電力が出しているものをあげた。指示については「原子力規制委員会が安全である、あるいは続けていいということであれば、それをそのまま伝えていくということ。決して、大本営発表みたいなことではない」と説明した。「実際の報道においては、原発の運転に反対している団体の動きなども伝えている」とも述べた。

在特会の県教組抗議は「人種差別の現れ」 高松高裁判決 - 朝日新聞(2016年4月26日)

http://www.asahi.com/articles/ASJ4P6QCWJ4PPLXB00V.html
http://megalodon.jp/2016-0425-1525-31/www.asahi.com/articles/ASJ4P6QCWJ4PPLXB00V.html

在日特権を許さない市民の会」(在特会)の会員らが6年前、徳島県職員組合で罵声を浴びせた行動をめぐり、県教組と当時の女性書記長(64)が在特会側に慰謝料など約2千万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、高松高裁であった。生島弘康裁判長は、「人種差別的思想の現れ」で在日朝鮮人への支援の萎縮を狙ったと判断。女性の精神的苦痛を一審より重くとらえ、倍近い436万円の賠償を命じた。
判決によると、在特会の会員ら十数人は2010年4月、日教組が集めた募金の一部を徳島県教組が四国朝鮮初中級学校(松山市)に寄付したことを攻撃するため徳島市の県教組事務所に乱入。女性書記長の名前を連呼しながら拡声機で「朝鮮の犬」「非国民」などと怒鳴り、その動画をインターネットで公開した。
判決は、在特会の行動を「人種差別的」と訴える原告側が、その悪質さを踏まえて賠償の増額を求めた主張を検討。在特会側が朝鮮学校を「北朝鮮のスパイ養成機関」と呼び、これまでも同様の言動を繰り返してきた経緯から、「在日朝鮮人に対する差別意識を有していた」と指摘した。
さらに、一連の行動は「いわれのないレッテル貼り」「リンチ行為としか言いようがない」とし、在日の人たちへの支援活動を萎縮させる目的があり、日本も加入する人種差別撤廃条約上の「人種差別」にあたるとして強く非難。昨年3月の一審・徳島地裁判決が、攻撃の対象は県教組と書記長であることを理由に「差別を扇動・助長する内容まで伴うとは言い難い」とした判断を改めた。
そのうえで、監禁状態の中で大音量の罵声を浴び、性的暴力まで示唆された女性の苦痛や県教組が受けた妨害の大きさも考慮し、一審の賠償額(230万円)を増額。賠償命令の範囲も一審より2人増やし、在特会と会員ら10人とした。
在特会をめぐっては、09〜10年の京都朝鮮第一初級学校(現・京都朝鮮初級学校)周辺での抗議行動を京都地裁が「人種差別にあたる」と認定。1200万円余の賠償を命じる判断を支持した大阪高裁判決が14年に最高裁で確定している。

■一歩進んだ判決
表現の自由に詳しい曽我部真裕(まさひろ)・京都大教授(憲法)の話》 判決は、人種差別的行為は直接の対象が在日の人たちでなくても、支援活動を萎縮させる効果をもたらすとし、非難に値すると指摘した。支援者が対象でも人種差別にあたるとした点は新しく、京都でのヘイトスピーチをめぐる大阪高裁判決を一歩進めた感じがする。また、在特会の言動は「レッテル貼り」「リンチ行為」などと評し、表現活動と呼べるものではないと判断した。「表現の自由」を念頭に、慎重に検討したことの表れと評価できる。

■拡声機・動画…激しい中傷
「人種差別行為を許さない判断が司法の場で定着したと高く評価したい」
判決後、原告弁護団事務局長の篠原健(たけし)弁護士=徳島弁護士会=は会見でそう語った。控訴審では、京都での在特会の行動を「人種差別的」と認定した判決を勝ち取った弁護士らも加わり、総勢46人で闘った。京都事件を手がけた冨増四季(しき)弁護士は「続く司法判断の意義は大きい」と話した。
裁判では、徳島県教組と当時の女性書記長への激しい攻撃が明らかになった。
十数人の在特会会員らが事務所に突然なだれ込む。「募金詐欺じゃ」「反日教育の変態集団」。拡声機を手に罵声を浴びせ続けた。徳島県庁前では、女性書記長への性的暴行を示唆するような発言もあった。一連の行動はネットに動画配信され、視聴者からおびただしい数の中傷コメントが書き込まれた。県教組には嫌がらせの電話も相次いだ。
女性書記長は当時の話をするたびに体調が悪くなり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。会見では声を震わせ、裁判を振り返った。
「言いたい放題、したい放題の社会を認めるのか。民族差別を認めるのか。そのことが何より許せないという気持ちで闘ってきました。駆けつけてくれた一人ひとりの思いが、この判決を導いたと思います」(田中志乃)