九条俳句、さいたま市が一転掲載へ「司法の判断従った」 - 朝日新聞(2018年12月25日)

https://www.asahi.com/articles/ASLDT5FQ4LDTUTNB00S.html
http://archive.today/2018.12.26-001129/https://www.asahi.com/articles/ASLDT5FQ4LDTUTNB00S.html

「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ俳句が公民館だよりに掲載されなかったことを巡り、作者の女性(78)がさいたま市と争い、不掲載を違法とした判断が最高裁で確定したことを受け、掲載を拒んできた市は25日、句を掲載することにしたと発表した。対応が不十分だったと認めて女性に謝罪するという。
女性が2014年に集団的自衛権の行使容認に反対するデモを詠んだ句は、地元の句会で秀句とされたが、従来秀句を掲載してきた公民館だよりに掲載されず、女性が市を提訴。裁判で市は、句が「世論を二分するテーマで政治的中立に触れる」と主張してきた。
20日付の最高裁決定では、集団的自衛権の行使について世論が分かれていても、不掲載の正当な理由とはならないとして女性の人格的利益の侵害を認め、市に5千円の賠償を命じる一方、市に掲載義務はないとした東京高裁判決が確定した。25日に会見した細田真由美教育長は、掲載に転じた理由を「掲載義務はないとの主張は認められたが、女性の心情に配慮した」「掲載が公民館の中立性を害するとは言えないとの司法の判断に従った」などと述べた。(森治文)

さいたま市、九条俳句掲載へ 教育長が直接謝罪へ 市長との面談には応じず:埼玉 - 東京新聞(2018年12月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122602000149.html
https://megalodon.jp/2018-1226-0911-51/www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122602000149.html

最高裁決定を受け、憲法九条について詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載を一転して決断し、発表したさいたま市。二十五日に会見した細田真由美教育長は作者の女性(78)に直接謝罪する意向を示す一方、訴訟を支援してきた「『九条俳句』市民応援団」などが求めてきた清水勇人市長との面談には今後も応じない意向を示した。(藤原哲也、井上峻輔)
細田教育長は会見冒頭、上告棄却を「残念に思う」とし、市の主張が一部認められたことは意味があったとした一方、女性への謝罪と俳句の掲載方針を説明。謝罪方法については「作者の考えも伺いながら、どのように行うのか検討して決めたい」と慎重に述べた。
その上で、この訴訟を契機に市民のための生涯学習振興や公民館活動を充実させる考えもあり、掲載を決めたと説明。今後は多様な市民の意見を取り入れるため、公民館だよりの編集に市民が参加する仕組みを設ける意向も示した。
清水市長と作者の女性の面談については、公民館業務は市教育委員会の所管で、自身が清水市長から教育行政の全権を委任されていると強調した。
女性は弁護士を通じ「最高裁の決定を受けてすぐにこのような発表があったのは、市も決定を真摯(しんし)に受け止めたと考えている。長い人生の終盤で解決までに時間もかかり大変だったが、今後の社会に少しでも役立てれば幸いです」とのコメントを出した。
神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「最終的に掲載を決めたことは評価したいが、最高裁まで行かないと動かなかったのは残念だ」と話す。行政が市民活動に介入する事例が各地で相次ぐ中で「九条俳句訴訟は大きな問題提起になった」と指摘。「市の違法性を認めた今回の判決から、行政が政治的な忖度(そんたく)をすることが問題だという考えが広まってほしい」と述べた。

さいたま市、9条俳句掲載へ 作者「諦めず闘って良かった」 - 東京新聞(2018年12月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122690070044.html
https://megalodon.jp/2018-1226-0909-49/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122690070044.html

憲法九条を詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載を巡り、作者の女性(78)がさいたま市に句の掲載と損害賠償を求めた訴訟で、市の賠償を命じた判決が確定したことを受け、同市は二十五日、一転して俳句を掲載する意向を示した。判決では掲載義務はないとしたが、記者会見した細田真由美教育長は「司法判断を踏まえ、作者の気持ちに配慮した」と説明した。 (藤原哲也)
女性は「一審判決が出た直後に決断してくれればなお良かったが、小さなことでも訴えて諦めずに闘うことで結果が出たことは非常に良かった」とのコメントを出した。
細田教育長は会見で、作者の人格的利益を侵害したとする判決確定部分について「真摯(しんし)に受け止め、謝罪する」と語った。九条俳句の掲載時期は「できるだけ早く」としている。
判決によると、女性はさいたま市大宮区の公民館で活動する句会のメンバー。公民館だよりは月報で、会が優秀と認めた俳句一句を掲載していたが、二〇一四年六月に女性が詠んで選出された句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の内容を公民館側が「世論を二分する内容で、掲載は公民館の公平性、中立性を害する」として拒否した。
女性は一五年六月にさいたま地裁に提訴。今年五月の二審東京高裁判決は「思想、信条を理由に不公正な取り扱いをし、女性の利益を侵害した」として市に慰謝料五千円の賠償を命じた。最高裁は今月、女性と市双方の上告を退けた。
一連の問題は、本紙の読者投稿「平和の俳句」(二〇一五〜一七年)が始まるきっかけになった。

◆作者の意に市が配慮

<武蔵野美術大の志田陽子教授(憲法)の話> 公民館に求められる政治的中立性とは、市民がさまざまな問題意識を持ち寄れる純粋な受け皿であることだ。裁判所が人格的利益の侵害を認めた一方、掲載請求権には踏み込まなかったことは煮え切らない判断だった。さいたま市が「違法性を認められた以上、作者の意に沿うべきだ」としたことは意義深く、評価したい。

木村草太の憲法の新手(94)辺野古での土砂投入 国の違法行為、全国に危機 - 沖縄タイムス(2018年12月23日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/362924
https://megalodon.jp/2018-1223-0954-05/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/362924

12月14日、防衛省沖縄防衛局は、辺野古での土砂投入に着手した。土砂投入に批判の声は強く、法的にも重大な問題がある。
今年9月31日、県は辺野古埋め立てのための公有水面埋立承認処分を正式に撤回した。7月に撤回を表明した記者会見で、翁長雄志前知事が示した撤回理由は、次のようなものだ。
まず、公有水面埋立法4条1項2号は、埋立承認条件として、「環境保全及災害防止ニ付十分配慮」されたものであることを求める。これを受け、埋め立て承認には、事前に実施設計・環境保全対策の協議を行うとの留意事項が付されていた。
しかし、「沖縄防衛局は、全体の実施設計や環境保全対策を示すこともなく公有水面埋め立て工事に着工し、また、サンゴ類を事前に移植することなく工事に着工するなど、承認を得ないで環境保全図書の記載等と異なる方法で工事を実施しており、留意事項で定められた事業者の義務に違反」した。
また、C護岸(水の浸食を防ぐ工作物)の設置箇所に軟弱地盤があり倒壊の恐れがある。さらに、17年6月6日、稲田朋美防衛大臣(当時)は、国会答弁で、仮に埋め立てが完成しても、滑走路の長さの関係で、もろもろの調整が整わない限り普天間飛行場が返還されない可能性があることを認めた。
これに対し、防衛省は、行政不服審査の手続きに則り、国土交通省に撤回の効力停止を求めた。今年10月30日、石井啓一国土交通相は、普天間返還が遅れるなどの理由で、効力停止を決定した。
しかし、そもそも普天間が返還されない可能性が指摘されているのだから、撤回無効の理由は説得的でない。さらに、行政不服審査は、「国民が簡易迅速かつ公正な」不服申し立てをするための制度(行政不服審査法1条)であり、「国の機関」が「その固有の資格」において受ける処分には適用されない(同法7条2項)。この点は、著名な行政法学者たちが、「公有水面埋立法における国に対する公有水面の埋立承認制度は」「国の法令順守を信頼あるいは期待して、国に特別な法的地位を認めるもの」として、「一般私人と同様の立場で審査請求や執行停止申し立てを行うことは許されない」と強く非難する声明を出している。
このように現時点での土砂投入は違法行為だ。玉城デニー知事が、「工事の権限のない者によって違法に投入された土砂は、当然に原状回復されなければなりません」と言うのも当然だろう。
全国世論調査では、辺野古基地建設について賛否拮抗(きっこう)の状況が続いてきたが、今回の土砂投入には反対の声が強い。共同通信の15、16日の調査では、土砂投入について、支持が35・5%に対し、不支持は56・5%に上った。これまで漠然と政府方針に賛成していた人の中で、土砂投入の現場写真などを見て、何が行われようとしているのかをリアルに考える人が出てきたということだろう。
大浦湾の良好な環境や生態系の維持は、沖縄のみならず、日本全体にとっての公共的な価値がある。また、地方の意思を無視して基地建設が強行された前例を作ることは、全国の自治体にとって脅威である。
今回の土砂投入は、沖縄だけではなく、全国民にとっての危機だ。(首都大学東京教授、憲法学者

「九条俳句」最高裁決定 「市は謝罪と掲載を」市民応援団が会見 - 東京新聞(2018年12月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122202000142.html
https://megalodon.jp/2018-1222-1549-58/www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201812/CK2018122202000142.html

憲法九条について詠んだ俳句を、さいたま市の公民館が月報への掲載を拒否したことを巡る訴訟で、原告の女性(78)と市の双方の上告を退けた最高裁決定。女性の支援者でつくる「『九条俳句』市民応援団」は二十一日、市役所で会見し、市に対して謝罪と俳句の掲載を改めて求める姿勢を強調した。 (藤原哲也)
「二審判決が確定したということは(地裁、高裁と合わせ)三度、違法性、不公平、職員の故意過失が確定したということ。市には早急な謝罪と原状回復(俳句の掲載)を求めたい」
応援団の武内暁代表(70)は会見の冒頭、原告女性のコメントを朗読した。
武内さんによると、女性は決定の電話報告に「(勝訴が確定して)ほっとした」と一言。「この小さな出来事が全国で大きな問題になり、弁護団や応援団に支えられて感謝している」と謝意を伝えたという。
最高裁の決定について、武内さんは「危機感を持っていたので、勝訴が確定し、ほっとしている。俳句の掲載に向け、行政は早急な手だてをしてほしい」と要望。さらに、社会の息苦しさや声を出すことの難しさなど、この問題が大きくなった背景を指摘し、しっかりした解決を求めていくとした。
会見に先立って応援団はこの日、九月から行っていた「一万人署名」が二万五十五人分に達したとして、十一月の提出以降に集まった七千六百二十四人分を市に提出。メンバーら約五十人が「さいたま市 人権都市が 泣いている」といった俳句・川柳風のプレートを持って市役所前に立ち、問題の解決をアピールした。
憲法九条について詠んだ俳句を、さいたま市の公民館が月報への掲載を拒否したことを巡る訴訟で、原告の女性(78)と市の双方の上告を退けた最高裁決定。女性の支援者でつくる「『九条俳句』市民応援団」は二十一日、市役所で会見し、市に対して謝罪と俳句の掲載を改めて求める姿勢を強調した。 (藤原哲也)
「二審判決が確定したということは(地裁、高裁と合わせ)三度、違法性、不公平、職員の故意過失が確定したということ。市には早急な謝罪と原状回復(俳句の掲載)を求めたい」
応援団の武内暁代表(70)は会見の冒頭、原告女性のコメントを朗読した。
武内さんによると、女性は決定の電話報告に「(勝訴が確定して)ほっとした」と一言。「この小さな出来事が全国で大きな問題になり、弁護団や応援団に支えられて感謝している」と謝意を伝えたという。
最高裁の決定について、武内さんは「危機感を持っていたので、勝訴が確定し、ほっとしている。俳句の掲載に向け、行政は早急な手だてをしてほしい」と要望。さらに、社会の息苦しさや声を出すことの難しさなど、この問題が大きくなった背景を指摘し、しっかりした解決を求めていくとした。
会見に先立って応援団はこの日、九月から行っていた「一万人署名」が二万五十五人分に達したとして、十一月の提出以降に集まった七千六百二十四人分を市に提出。メンバーら約五十人が「さいたま市 人権都市が 泣いている」といった俳句・川柳風のプレートを持って市役所前に立ち、問題の解決をアピールした。

ホワイトハウスへの請願署名10日間で8.4万筆 目標10万の過半数超える - 琉球新報(2018年12月18日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-850176.html
https://megalodon.jp/2018-1219-0916-36/https://ryukyushimpo.jp:443/news/entry-850176.html

【ワシントン=座波幸代本紙特派員】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設工事を止めようと、沖縄県系4世のロバート梶原さん(32)=ハワイ在=がホワイトハウスの請願サイト「We the People」で始めたインターネット署名は、8日の開始から10日間で目標の過半数を一気に超え、約8万4千筆超が集まっている。請願の趣旨に賛同し、「新基地建設強行を許さない」という人々がツイッター(短文投稿サイト)やフェイスブックなど、ソーシャルメディアで署名を呼び掛ける動きが国境を超えて急速に広がっている。
日本のアーティストやタレント、作家ら著名人もツイッターなどで署名を呼び掛け、多くの賛同を得ている。日本時間の17日午後9時半現在、8万4387筆の署名が集まっている。少なくとも県民投票がある来年2月24日まで辺野古の工事を止めてほしいとトランプ米大統領宛てに送る。署名開始から30日以内(来年1月7日まで)に10万筆が集まれば、ホワイトハウスが請願内容を検討し、60日以内に何らかの返答が届く仕組みになっている。
政府が14日に土砂の投入を始めたことに、梶原さんは「安倍晋三首相は日本の民主主義を破壊している」と糾弾する。沖縄の民意を無視して工事を強行するやり方に、「私たちは決して諦めない。安倍首相の違法行為を世界が見ていることを知らしめないといけない」と語り、目標の10万筆を超え、一人でも多くの人が署名し、トランプ氏や米議会に訴えていこうと呼び掛けた。
署名は13歳以上なら国籍を問わず、誰でも参加できる。サイト(QRコード)で氏名とEメールアドレスを入力した後に届く確認メールの指定箇所をクリックすると署名が完了する。


ホワイトハウスの請願サイトはこちらをクリック

辺野古停止署名、10万筆に ローラさんも呼び掛け 米政府、回答へ - 東京新聞(2018年12月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121902000131.html
https://megalodon.jp/2018-1219-0914-32/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121902000131.html

米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設に伴う名護市辺野古(へのこ)の新基地建設を巡り、建設の是非を問う来年二月二十四日の県民投票まで工事を止めるようトランプ米大統領に求める嘆願書への電子署名が十八日、目標の十万筆に達した。各界の著名人にも協力の輪が広がり、署名開始の十日後に達成。米政府は六十日以内に対応を検討し、公式に回答することになる。
電子署名は米ホワイトハウスの請願サイト「WE the PEOPLE」で実施。ハワイ在住で沖縄出身者の血を引く日系四世の作曲家ロブ・カジワラさん(32)が今月八日に始めた。米政府の回答を得るには、署名開始から三十日に当たる来年一月七日までに、十万筆を集める必要があった。本紙は十七日朝刊で、この署名活動を報じた。
タレントのローラさんが十八日、写真投稿アプリ「インスタグラム」で「美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの」と署名を呼び掛けた。沖縄出身のタレントりゅうちぇるさん、芥川賞作家の平野啓一郎さんらも賛同の輪に加わった。
日本時間十六日午後七時時点で六万筆超だった署名数は順調に伸び、本紙が確認したところ十八日午後三時ごろ目標に達した。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十八日午後の記者会見で、十万筆達成に関し「他国が行っている施策に関することだ」とコメントを控えた。
目標達成後も署名は可能。十三歳以上であれば、居住地や国籍に関係なく参加できる。サイトで名前とメールアドレスを入力し、確認メールが届いた後、指定されたリンクをクリックすれば完了する。
嘆願書は、九月の知事選で新基地建設反対を掲げた玉城(たまき)デニー氏が勝利したのに、日本政府と在日米軍は県民の意思を無視していると指摘。トランプ氏が工事停止を命じるよう求めている。 (島袋良太)

(新防衛大綱)専守防衛のなし崩しだ - 沖縄タイムス(2018年12月19日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/361171
https://megalodon.jp/2018-1219-0912-17/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/361171

政府は、新たな防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と、大綱に沿って具体的な装備調達を進める次期中期防衛力整備計画(中期防)を閣議決定した。
宇宙やサイバー、電磁波といった「新たな領域」への対処が「死活的に重要」だとして優先的に強化する方針。陸・海・空の従来の領域を含め一体運用する「多次元統合防衛力」の構築を打ち出した。
懸念されるのが中国の海洋進出をにらんだ護衛艦の事実上の空母化である。海自の護衛艦「いずも」を改修し、米国から新たに導入する最新鋭ステルス戦闘機F35Bを艦載機と想定する。同機は短距離離陸・垂直着艦が可能だ。
憲法9条は「戦力の不保持」をうたう。相手国に壊滅的な打撃を与えるような「攻撃的兵器」の保有は「自衛のための必要最小限度」の範囲を超えるとし、歴代内閣は認めていない。例示されているのが「攻撃型空母」だ。
空母は「動く航空基地」といわれ、日本の外洋から戦闘機を飛ばすことができる。空母から離陸して敵基地を攻撃することが可能となり、専守防衛を空洞化させるものだ。
自公はF35Bを常時搭載しないことから「攻撃型空母」に当たらないとして、呼称もいったん「多用途運用護衛艦」と決めた。しかし中期防では従来通り「多機能のヘリコプター搭載護衛艦」と表現している。他国からみれば言葉のごまかしというほかなく、事実上の空母であることに変わりない。
専守防衛の国是から逸脱するのは明らかだ。

    ■    ■

南西諸島防衛の強化も鮮明だ。島嶼(しょ)への侵攻に対処するための陸上自衛隊の「島嶼防衛用高速滑空弾部隊」を2026年度にも新設する。
長い射程を高速で滑空し、目標に命中させるもので、占領された島を奪還するため別の島から攻撃を加える部隊だ。先島など沖縄を含む島嶼地域での配備が念頭にある。
陸自はすでに宮古島石垣島で地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊、警備部隊などの配備に向けて計画を進めている。
離島奪還作戦を担う水陸機動団の2個連隊は相浦駐屯地長崎県)を拠点にしており、3個目が20年代前半に米軍キャンプ・ハンセンを共同使用しての配備が取りざたされる。
米軍と自衛隊の増強が同時に進む。
仮に紛争となれば真っ先に標的になるのは先島を含む沖縄である。配備計画に欠けているのは、島で生活し逃げ場を失う住民の視点だ。

    ■    ■

第2次安倍政権発足以降、防衛費は増大し続けている。
今後5年間の中期防の予算は27兆4700億円に上り、過去最大となった。
装備品も予算も歯止めを失っている。日本への武器売却に熱心なトランプ米大統領の影も見える。
国是である専守防衛の土台が揺らいでいる。政府は閉会中でも国会を開いて国民に説明する義務がある。
日本が果たすべき役割は、中国に自制を促し、軍事力によらずに東シナ海を「平和の海」にする外交努力である。

安保法後の防衛大綱 軍事への傾斜、一線越えた - 朝日新聞(2018年12月19日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13817577.html
http://archive.today/2018.12.18-205121/https://www.asahi.com/articles/DA3S13817577.html

政府がきのう、安倍政権下で2度目となる「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。
陸海空にとどまらず、宇宙やサイバー空間などを含む「多次元統合防衛力」をめざすとともに、これまで抑制してきた自衛隊の打撃力を拡大する。
こうした防衛政策の転換をさらに推し進めれば、不毛な軍拡競争に道を開きかねない。
年明けの通常国会で、徹底的な議論が必要だ。

■「盾」から「矛も」へ

政権発足1年後の2013年末、初めての国家安全保障戦略(NSS)とともに決めた前の大綱は、向こう10年を見通して策定したものだ。
これを5年で前倒し改定するのは、16年の安全保障関連法の施行を受け、軍事への傾斜を強める意図がうかがえる。
見過ごせないのが、自衛隊の打撃力の格段の強化だ。
憲法9条のもと、日本は専守防衛を原則としている。他国から攻撃を受けた場合、自衛隊が「盾」となって防御し、「矛」の役割を担う米軍が反撃するのが役割分担だ。
より多くを日本に求める米国の意向を受け、自衛隊の攻撃的な能力は少しずつ整備されてきたが、今回は一線を越えたと言わざるをえない。
「空母」の導入だ。
ヘリコプターを搭載する海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を改修し、短距離で離陸し、垂直着陸ができる米国製の戦闘機F35Bが使えるようにする。
政府はかねて、自衛のための必要最小限度を超える攻撃型空母は憲法保有できないとしてきた。改修後のいずもは戦闘機を常時艦載しないので、「空母」に当たらないと説明するが、詭弁(きべん)というほかない。
将来的には、南シナ海やインド洋、中東に派遣され、米軍機の給油や発着に活用される可能性も否定できない。
相手の射程の外から攻撃できる長距離巡航ミサイル保有も記された。政府与党は、自衛隊員の安全確保が狙いと説明しているが、敵基地攻撃能力の保有につながる。
専守防衛は変わらない」との意図を政府与党は強調しているが、その能力をみれば、従来の「盾」から「盾も、矛も」への転換は明らかだ。

■宇宙・サイバーまで

大綱の主眼は、北朝鮮ではない。軍拡を進める中国の脅威への対処にある。
北朝鮮のミサイル危機のさなかに決めた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を追認したのは、中国のミサイルに対抗する狙いがあるためだ。
だが、巨額の投資に見合う効果があるのかは疑わしい。政府は導入を再考すべきだ。
たしかに、ミサイル対処をはじめ、軍事技術の急速な進展への対応は必要だろう。
宇宙やサイバー、電磁波といった分野は、現代の安全保障にとって、死活的といえるほど重要性を増している。その現実は受け止めねばならない。
大綱には宇宙領域専門部隊の創設や宇宙状況監視(SSA)システムの整備、サイバー防衛隊の拡充が盛り込まれた。
ただ、日本の防衛政策の原則を踏まえ、自衛隊がどこまで対応すべきか。法的にも能力的にも難しい問題をはらむ。
宇宙空間での監視能力の強化は、目標を特定し攻撃する能力に重なる。サイバー空間での攻撃と防御の関係をどう考えるのかについても、慎重な検討が必要だろう。

■政治的な対話こそ

中期防が示した5年間の防衛費は過去最大の27兆4700億円。政府はコスト削減などで25兆5千億円に抑える方針だが、ほんとうに実現できるのか。
急速な人口減少と少子高齢化、厳しい財政事情という日本の現実から目を背けてはならない。性急な防衛費の拡大は、国民の理解を得られまい。
もとより、自衛隊ができることには限界がある。身の丈に合った安全保障を構想しなければならない。
それなのに、トランプ米大統領の求めに応じた米国製兵器の大量購入が防衛費を圧迫している。米国製のステルス戦闘機F35は、いずもで運用できるB型を含め、計105機を追加購入する。その総額は1兆2千億円に上る見通しだ。
最新鋭の兵器を買いそろえることが、日本の安全保障にとって真に有効な処方箋(しょほうせん)なのか。政府はもう一度、考えるべきだ。
国連のグテーレス事務総長は5月に発表した「軍縮アジェンダ」で、こう指摘している。
「高まった緊張や危険は、真剣な政治的対話や交渉によってのみ解決できる。兵器の増強では決して解決できない」
軍事に過度に頼ることなく、外交努力を通じて緊張を緩和し、地域の安定を保つ――。いま必要なのは、総合的な安全保障戦略にほかならない。

F35、105機追加取得 閣議了解 B型42機いずも搭載 - 東京新聞(2018年12月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121902000130.html
https://megalodon.jp/2018-1219-0910-35/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121902000130.html

政府は十八日、最新鋭ステルス戦闘機F35について、AB両型を合わせて新たに百五機取得することを閣議了解した。うち短距離離陸・垂直着陸が可能なF35Bは四十二機。F35Aは六十三機。順次取得を進めていく方針で、既に一部は中期防に盛り込まれている。F35Bは、事実上の空母化となる護衛艦いずも改修後の搭載が想定されている。
新たに取得するF35百五機は、F15のうち改修困難な九十九機分の代替機と位置付ける。
既にF4の後継として四十二機のF35Aの配備が進んでおり、F35は将来的に計百四十七機の体制となる。
閣議了解では、二〇一九年度以降のF35取得は、最終段階の組み立てを国内で行う現在の方式を改め、完成機を輸入するとした。調達価格の引き下げを見据えた措置とみられる。

空母化「米機発着も」 防衛相、米軍支援を明言 米追従加速の防衛大綱 - 東京新聞(2018年12月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121902000132.html
https://megalodon.jp/2018-1219-0908-30/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121902000132.html

政府は十八日の閣議で、今後十年程度の防衛力整備の指針となる新たな「防衛計画の大綱」と、今後五年間の装備品の見積もりを定めた「中期防衛力整備計画(中期防)」を決定した。海上自衛隊護衛艦「いずも」型二隻を改修し、短距離離陸・垂直着陸が可能な「STOVL機」を搭載する事実上の空母として運用する方針を明記した。自衛隊だけでなく、米軍の戦闘機の搭載も想定する。米国から地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」などを購入することも盛り込んだ。米軍支援と米国からの兵器購入が明確に打ち出され、安倍政権の対米追従がより鮮明になった。 (上野実輝彦)
いずもでは、自衛隊が米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bの運用を予定している。岩屋毅防衛相は同日の記者会見で「米軍の航空機がいずもから離着陸することはあり得る」と明言した。具体例として、米軍機が事故を起こした場合や日米の共同訓練を挙げた。
イージス・アショアの配備は、日本を狙った弾道ミサイルを迎撃するのが目的だが、政府は北朝鮮が米領グアムやハワイを狙って弾道ミサイルを発射した場合、安全保障関連法で認められた集団的自衛権を行使して、迎撃することも可能としている。
中期防には米国から大量の兵器を購入する方針が盛り込まれた。F35を四十五機購入し、そのうち十八機はB型にする。長距離巡航ミサイル「JASSM」「LRASM」のほか、無人偵察機グローバルホークや早期警戒機E2Dも購入する。
兵器購入を明記したのは、トランプ米大統領が日本に貿易赤字の削減を迫っているからだ。来年から始まる日米の二国間の貿易交渉を前に、トランプ氏に日本政府の姿勢を示す狙いがある。十一月の日米首脳会談で、トランプ氏は貿易赤字に強い不満を漏らす一方で、日本が多数のF35を購入することについて安倍晋三首相に「感謝」を伝えた。
五年間の中期防の予算総額は前回を約二兆八千億円上回り、過去最多の二十七兆四千七百億円に膨らんだ。

市民が犠牲になる戦争 ドイツ チェコ 虐殺や空襲体験を復刻:東京 - 東京新聞(2018年12月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201812/CK2018121902000113.html
http://archive.today/2018.12.19-000445/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121802000251.html

東京大空襲・戦災資料センター(江東区)館長で作家の早乙女勝元さん(86)=足立区=が今月、「ナチス占領下の悲劇 プラハの子ども像」を刊行した。第2次世界大戦の歴史的な現場を取材したリポートで、関係者の証言から市民が犠牲となる戦争の真実に迫っている。 (大沢令)
かつて自身で著した「プラハは忘れない」(一九九六年)と、「エルベの誓い」(二〇〇一年)の二つのリポートで構成。版元の破産で現在は入手が難しいため、復刻版として合本し、一部自費で出版した。
プラハは忘れない」はナチス占領下のプラハ(現在のチェコの首都)郊外リディツェ村で起きた悲劇を追ったリポート。一九四二年六月、ナチス占領軍司令官が暗殺された報復として、村にいた男性はすべて銃殺され、女性たちは強制収容所に送られるなど村ごと破壊された。
虐殺の悲劇を未来の教訓として伝えるため、村の子どもの群像をモニュメントに残そうと半生を制作に費やした彫刻家の思いに寄り添い、生き残った二人の女性の証言から惨劇を浮かび上がらせている。
「エルベの誓い」では、四五年二月に米英軍がドイツの古都ドレスデンを破壊した無差別爆撃を取材。戦争を体験した女性二人の手記から、市民が受けた深刻な被害を浮き彫りにする。約二カ月後に米軍とソビエト軍の兵士がドレスデン近郊のエルベ河岸で交わした平和の誓いの舞台裏にもスポットを当てる。
早乙女さんは「海外の歴史的な現場に立ち体験者に話を聞くことで、歴史や戦争の教訓がいくつも得られた。いずれ体験者がいなくなった時の追体験の資料として今出しておかなければと思った」と話している。新日本出版社、千八百円(税別)。

平和ないと生きられない 9条なりきりソング作曲・タマ伸也さん - 東京新聞(2018年12月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121802000251.html
http://archive.today/2018.12.19-000445/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121802000251.html

憲法9条に口があれば、こう問いかけるはずだ。「私はあなたの平和がなければ とても一人では生きていけません」−。3人組のコミックバンド「ポカスカジャン」のボーカル兼ギターで、ソロのフォークシンガーとしても活躍するタマ伸也さん(50)が、メッセージソング「私の名前は憲法9条」をつくった。改憲に前のめりな安倍政権への批判とも受け取れる内容だけに「大丈夫?」と心配するファンもいるが、タマさんは「フォークってそういう在野なものでしょ」とひょうひょうと語る。 (山本哲正)
ズンチャッ、ズンチャッと軽快なイントロに続いて「わ・た・し・の」と歌いだす。ジャズの源流とされる「ラグタイム」調のメロディーが心地よい。東京・渋谷の稽古場で練習中のタマさんは「九条は平和なキャラクターだから曲調も平和にと心掛けた」と笑う。
歌詞は「戦争はしません 戦力も持ちません」と平和主義を繰り返し説き、「私を変えようと する人がいます」と改憲派をけん制する。戦地での死にも触れる。「ライブでは、九条の条文そのまんまを最後にリフレイン。お客さんと大合唱です」とタマさん。
改憲を巡る議論に、「平和主義がどこか置き去りになっているようだ」とモヤモヤした気持ちが膨らんで企画した。護憲・反戦を終生訴えたタレントの故永六輔さんの顔も浮かんだ。生前よくしてもらった永さんにも聴いてほしかった。
タマさんは大久保ノブオさん、省吾さんと一緒に、「ポカスカジャン」を一九九六年結成。アイスキャンディーのコマーシャルソング「ガリガリ君のうた」などを手掛けた。
二〇一三年からはソロ活動をスタート。昨年からは、いろいろな人やモノになりきる「入ります」シリーズを始めた。これまでジョン・レノンや風に「入った」。その人やモノが伝えたいだろうことを自分なりに理解できた瞬間、「曲作りが広がる扉のドアノブが見つかったようだ」と感じる。反戦歌を歌ってきた経験から九条のドアノブは、最初からありかが分かっていた。
タマさんは「ぼくらは戦争を体験したことがなく、どうしても学ぶしかない。あとは想像力。平和主義の話をしたい。一緒に歌って」と呼びかける。
「私の名前は憲法9条」は、11月発売の最新ソロアルバム「入りますCD2」(全8曲税別1000円)に収録。憲法のほか、故忌野清志郎さん、吉幾三さんなどに「入った」。現在全国ツアー中。問い合わせはワハハ本舗=電03(3486)2666=へ。

     ◇

私の名前は 憲法9条

私には手も足も ありません

私には言葉しか ありません

私の名前は 憲法9条

戦争はしません 戦力も持ちません

戦争するのも 認めません

これが私の 全てなんです

私の名前は 憲法9条

(中略)

私を変えようと する人がいます

私を守る 人もいます

人は私を 夢想家と呼ぶのです

あなたにとっての 平和とは何ですか?

あなたにとっての 主義って何ですか?

私はあなたの

平和がなければ

とても一人では

生きていけません

(以下略)

「安倍首相は判断力が悪い」 小泉元首相、20年改憲姿勢を批判 - 朝日新聞(2018年12月13日)

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13809260.html
http://archive.today/2018.12.13-002005/https://www.asahi.com/articles/DA3S13809260.html

小泉純一郎元首相は12日、朝日新聞のインタビューに応じ、安倍晋三首相が掲げる2020年の新憲法施行について、「野党は賛成しない。やれることをやらないで、やれないことをやろうとしている」と指摘。「(安倍首相は)判断力が悪い」と批判した。
10日に閉会した臨時国会では、安倍首相が意欲を示した改憲論議は進まなかった。小泉氏は「憲法改正なんて自民党だけでできるわけないよ。野党第1党の協力が必要だ」と指摘。来夏の参院選を念頭に、「(憲法は)選挙の争点にすべきじゃない」とも語った。
一方、福島第一原発事故を機に唱えている「原発ゼロ」について、「(安倍首相は)できることをなぜやらないのか」と強調。「野党が『原発ゼロ』で(選挙の)候補者を一本化したら、自民党もおちおちしていられない。野党がバラバラのおかげで助かっている」と述べた。 (石井潤一郎)

改憲の20年施行目指す 首相、入管法を年内に総合対策 - 東京新聞(2018年12月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121102000131.html
https://megalodon.jp/2018-1211-0938-22/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121102000131.html

安倍晋三首相は十日夜、臨時国会閉会を受け官邸で記者会見し、二〇二〇年の新憲法施行を目指す考えを改めて表明した。臨時国会では自民党改憲条文案の提示は見送られたが、二〇年施行は「今も、その気持ちには変わりはない」と明言した。外国人労働者の受け入れ拡大を目指す改正入管難民法の成立を踏まえ、受け入れの環境整備のための総合的対応策などを年内に策定する方針も強調した。
首相は改憲に関し、来年の通常国会以降、各党が憲法に関する考え方を国会に示して議論を深めるよう求めた。その上で「与党、野党といった政治的な立場を超えて、できるだけ幅広い合意が得られることを期待する」と訴えた。「その後のスケジュールは国会次第だ。予断を持つことはできない」とも指摘した。
外国人労働者受け入れ拡大については「介護や農業、建設業など、特に人手不足が深刻な分野に限って即戦力の外国人材を受け入れる」と意義を強調。来年四月に改正入管難民法などが施行されるのを前に、年内に、新たな制度の具体化に向けた基本方針や、受け入れ見込み人数を決めるための分野別運用方針も示すと説明した。
既存の技能実習制度で来日した外国人が劣悪な労働環境に置かれているとの指摘を念頭に「日本人と同等の職場環境、賃金面の待遇は確保したい」と強調。「受け入れる人数には明確に上限を設ける。(受け入れの)期間も限定する。いわゆる移民政策ではない」とも語った。 (中根政人)