<コラム 筆洗>アル・パチーノ演ずるマイケル・コルレオーネがファミリーを守… - 東京新聞(2024年10月1日)

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アル・パチーノ演ずるマイケル・コルレオーネがファミリーを守るためと、敵対するすべての勢力のドンや裏切り者を次から次へと抹殺していく。米映画「ゴッドファーザー」(1972年)の壮絶なラスト。ドンとなったマイケルが非情な人物に変わっていく。

ここ数日のイスラエルの動きを見れば、映画の冷酷な大詰めと重なってしまう。しかも、これは危険な現実である。イスラエル軍レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの拠点を攻撃し、指導者のナスララ師を殺害した。

イスラエルレバノン攻撃に続いてイエメン西部ホデイダの発電所や港を空爆。こちらの狙いは親イラン武装組織フーシ派である。

ヒズボラ、フーシ派のいずれもパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスを支援し、イスラエルを攻撃しているというのがネタニヤフ首相の言い分だが、その影響を思えば、やりすぎどころではなかろう。レバノンでの空爆では大勢の民間人が犠牲になっている。

国際社会はイスラエルに強く自制を求めてきたが、これを振り切ってしまった。敵対勢力の弱体化のみに執着するイスラエルには中東全体を混乱させる危険がまるで目に入っていないのか。

イスラエルと敵対するイランの最高指導者ハメネイ師がナスララ師殺害を受けイスラエルに打撃を加えると宣言した。揺れる中東。次の展開を予想するのさえ恐ろしい。