【政界地獄耳】脱税明白も正義は貫けずか 国民に残る徒労感 - 日刊スポーツ(2024年1月15日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202401160000073.html

★週末に広がった安倍派幹部立件見送り報道は与野党に失望感と共に、複雑な感情を呼び起こしたといっていい。なにしろ昨年11月から、安倍派5人衆ら幹部の名前が軒並み出て大きな金額も躍った。政治とカネという大きなテーマから派閥の資金パーティーキックバックだ、裏金だということに捜査の関心があることが連日報道され、捜査方針は全国民の知るところになった。つまり東京地検特捜部は相当の証拠固めを終えて、政治家の名前を出し始めたのだろうと誰もが思った。

★まして国会は開会中。結果、官房長官、経産、総務、農水の各大臣。自民党政調会長国対委員長参院幹事長が辞任した。明らかに国のシステムを停滞させ人事を混乱させたといえる。それが正しいとはいわないが、修正すればいい形式犯でうやむやにできたことを大事件に誘導していった検察に、安倍派から責任の追及を受けてもやむを得まい。安倍派から検察による国家転覆のクーデターだったといわれて追い込まれた場合、検察は今後、政治疑獄に着手できなくなる。

★それだけではない。自民党政治刷新本部はどうなる。政治とカネにメスを入れるどころか、派閥解消を訴えた前首相・菅義偉や元環境相小泉進次郎の発言は無駄だったのか。立件されなければ、このキックバックや裏金は今後も様子を見ながら繰り返されるだろうし、いささかなりとも改革に期待を持った国民は徒労感だけが残る。なんなら刷新本部不要論まで出始めるだろう。特捜の立件断念は、疑惑だったものにシロのお墨付きを与え、安倍派5人衆はこれまで以上に権勢を誇ることになれば、極端に言えば政治は検察のせいで今より悪くなるということになる。そのリスクを承知で着手したのではないのか。この事件は少なくとも脱税は明白。正義すらこの国は失ったか。(K)※敬称略