【政界地獄耳】派閥の維持はパーティー収入のごまかし…限界を迎えた派閥の錬金術 - 日刊スポーツ(2023年12月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202312260000069.html

★22日に朝日新聞が書いた「自民党二階派に所属する自見英子地方創生相が22日、派閥を退会する考えを表明した」という記事。見出しの「『大臣になりたい時はワンワンと…』二階氏激怒、自見氏の退会拒否」を今の政治家はどう見たか。中選挙区制度時代からの政治家や政治記者は、この見出しがすとんとくるだろう。派閥とはその領袖(りょうしゅう)、議員たちから言わせれば「オヤジ」とか「親分」を自民党総裁にする仲間、同志という意識だろう。だが田中派に属し田中角栄一強時代に政治の薫陶を受けた元幹事長・二階俊博には自見の行動は理解しがたいものだったろう。

★その田中派が栄華を誇っていた時代の福田派(安倍派)は、ありとあらゆる手を使い田中派への対抗策を講じていたし、それが政党の活力や緊張感を生み出していた。ただそれを懐かしむ政治家は昭和の政治家、30年以上前の政治家だ。本来はリクルート事件、佐川急便事件でその政治風土は政治資金規正法選挙制度の変更で形骸化し、この30年で企業からの贈収賄などの事件はほぼなくなったといえる。無論、その間に法律を研究し、抜け穴を探し出し、別の錬金術を身に付けることも自民党は怠らなかった。

★2世、3世と世襲議員が増え、新しい法律はできたが、政治風土や派閥の形は当初より小選挙区で政治家が小粒になりながら小さく維持されてきた。しかし第2次安倍政権が長期政権になり、首相・安倍晋三(当時)は小刻みに総選挙を繰り返し、若い安倍チルドレンといわれる議員たちの当選回数と経験を積ませた。昭和の派閥の領袖は親分が派閥の議員を食べさせる、つまり面倒を見ることで忠誠心を養ったが、既に安倍派の派閥の維持はパーティー収入のごまかしというものだった。今後はこの抜け穴もふさがれる。昭和も令和も派閥の錬金術は既に限界を迎えた。(K)※敬称略