【政界地獄耳】「ぼくは君たちに憎しみを贈ることはしない」改めてかみしめるべき - 日刊スポーツ(2023年10月13日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202310130000066.html

パレスチナ暫定自治区ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスイスラエルへの攻撃は悲劇の連鎖を生もうとしている。世界は事態収拾に動くべきだが米英独仏伊の5カ国首脳は9日の電話会談で「イスラエルへの揺るぎない支持」を確認した。一方10日、ロシアのプーチン大統領はモスクワでのイラク首相との会談で「(欧米は)双方が容認する妥協案を見つけることに関心を示さず、独自の考えを推進し、双方に圧力をかけた」と欧米をけん制。8日、中国の国連大使・張軍は「真に重要なことは状況のさらなる悪化と市民のさらなる死傷者を防ぐことだ」とした。

パレスチナガザ地区に近いイスラエル側の砂漠で開かれていた音楽フェス「スーパーノヴァ」では4000人余りの若者がライブを楽しんでいた。そこに武装集団が襲い掛かりロケット弾が上空を飛びかい多くの犠牲者が出た。この悲劇で思い出すのは、15年11月13日にフランスのパリ市街と郊外(バンリュー)のサンドニ地区での、ISIL(イスラム国)の同時多発テロだ。パリ市内でライブが行われていたバタクラン劇場では観客が襲われ89人が死亡した。

★この劇場で妻を失ったジャーナリストのアントワーヌ・レリスはフェイスブックに「ぼくは君たちに憎しみを贈ることはしない。憎悪に怒りで応じることは、君たちと同じ無知に陥ることになるから。君たちの負けだ。ぼくたちは今までどおりの暮らしを続ける。僕は彼女がいつの日もぼくたちとともにいること、そして自由な魂の天国でまた会えることを知っている。そこに君たちが近づくことはできない。メルヴィルはまだやっと17カ月。いつもと同じようにおやつを食べ、いつもと同じように遊ぶ。この幼い子供が、幸福に、自由に暮らすことで君たちは恥じ入るだろう」と記した。メッセージは瞬く間に拡散され、書籍「ぼくは君たちを憎まないことにした」は世界でベストセラーとなった。映画化もされ日本では来月公開となる。世界はこのメッセージを改めてかみしめるべきだ。(K)※敬称略

 


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