<ぎろんの森>「開戦の日に考える」意義 - 東京新聞(2022年12月10日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/219096

十二月八日は八十一年前に太平洋戦争が始まった「開戦の日」でした。東京新聞は通常の社説二本分に当たる長文の社説「開戦の日に考える 戦争の足音が聞こえる」を掲載して、岸田文雄首相が進める敵基地攻撃能力の保有や防衛力強化のための防衛費増額などは、戦後日本が堅持してきた専守防衛を変質させると警鐘を鳴らしました。

読者から「太平洋戦争が始まった昭和十六年生まれで大変共感した。政府は防衛費増額のため増税を決定するようだが、国民の意思も聞かぬまま、どこまで苦しめるの?」との声が寄せられました。

別の読者からは「このままほっておいたら、もう歯止めが利かない。政府の戦争準備を阻止するためにもっと反対意見を書いて」と本紙への期待も届いています。

東京新聞ではほぼ毎年、開戦の日にちなんだ長文の社説を掲載していますが、今年もこの日、在京紙の社説で開戦の日を取り上げたのは本紙だけでした。例年八月十五日の「終戦の日」には、各紙がそろって社説で取り上げるのとは対照的です。

私たちの新聞が開戦の日にも戦争に関する社説を掲載するのは、なぜ国土が焦土と化し、国民に多大な犠牲を強いた戦争を始めたのか、その理由を考え、二度と戦争を起こさないための教訓とするためにほかなりません。

特に今年は、安全保障政策の転換が進められています。外国の領土を直接攻撃できるような装備をしたり、防衛力強化のために予算を二倍に増やしたり、財源捻出のため国民に増税を強いたり、これまでにない「軍備増強」の局面です。戦争が近づいてくるという実感を、足音が聞こえると表現してみました。

長崎の社説読者からこんな意見をいただいています。

「毎年八月十五日の社説は一紙の漏れもなく『終戦記念日』ですが、開戦の日を社説で取り上げるのは数紙です。開戦の日の社説が貴紙の伝統になることを期待します」

戦争への道を再び歩まぬよう、読者の皆さんとともに考え続けます。 (と)