<金口木舌>似て非なる - 琉球新報(2023年6月3日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1722150.html

「バイキング」と「ハイキング」、「カレイ」と「ヒラメ」。響きが似ていたり、見た目が似ていたりするが、実際は別ものである

岸田文雄首相が首相公邸内での不適切な行動が報じられた政務担当秘書官の長男を更迭した。当初、更迭を拒んだ首相も与野党からの苦言で重い腰を上げた。ネット上では「親ばか」と指摘されたが、そうだろうか
▼「親ばか」は「親が子をかわいがるあまりに理性を失い、他人からは愚かと見える言動」と辞書にある。首相の言動は「親ばか」に似ていて、実は選挙を意識した「打算」にも見える
▼首相本人は否定するが、会期末の衆院解散・総選挙のうわさは絶えない。野党が弱体化した今、政権を延命させるために選挙に打って出る可能性がある。その前に厄介事を片付けたのだといぶかる声が聞こえる
少子化対策の財源確保や防衛費増額の是非など、山積する課題を有権者から隠して、政権にとって都合のいい選挙戦に突入するかもしれない。更迭がトカゲの尻尾切りなら「親ばか」という表現では生ぬるい。