河井氏の法相辞任 長期政権の弊害露呈した - 琉球新報(2019年11月2日)

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菅原一秀経済産業相の更迭に続き、河井克行衆院議員が10月31日法相を辞任した。2週続けての閣僚の辞任である。長期政権による弊害がなれ合いの内閣改造につながったと考えられる。
河井氏は、参院議員で妻の案里氏に公職選挙法違反の疑いのあることが報じられ、疑義が生じたことに責任を取ったという。
疑いがあるのは、案里氏が7月の参院選広島選挙区で初当選した際のことだ。選挙戦のアナウンス担当の運動員に法定の倍額に当たる日当3万円を支払ったという疑惑を週刊誌が報じた。事実であれば運動員買収に当たるが、疑いについて河井氏は「私も妻も全くあずかり知らない」と否定している。ならば毅然として職務を全うすべきではないか。国会の議論を通して潔白であることを訴えればいい。
妻の案里氏側の疑惑であるにもかかわらず、河井氏は辞表を提出した。案里氏の選挙対策も事実上、河井氏が仕切っていたとも伝えられる。不自然と思う人がいてもおかしくない。
たとえ秘書や事務所職員の行為であったとしても使用者としての監督責任は免れないことを忘れてはならない。場合によっては連座制の適用も想定される事態だ。
河井氏本人にも事務所を通じて有権者へジャガイモなど贈答品を配った疑いがあるという。事実ならこれも公選法が禁じる寄付行為に該当する可能性がある。
だからこそ河井氏の責務は大きいはずだ。説明抜きの辞任は納得がいかない。法相は国民に法令順守を促す立場にある。閣僚としての資質を論じる以前の話だ。
河井氏は沖縄とも浅からぬ縁がある。名護市辺野古の新基地建設をめぐり、建設推進の黒子役として動いたことは広く知られる。
自民党県連が2013年の参院選を前に米軍普天間飛行場の地域版公約に「県外」を掲げる考えを示した際のことだ。「辺野古」明記を迫る首相官邸や党本部と県連との調整役を担った。
14年の名護市長選では保守系候補の分裂を避けるべく調停に乗り出していた。日米同盟の強化を目指す議員連盟を結成したり、米国家安全保障会議のメンバーらに辺野古新基地建設の重要性を説いたりした。県外移設を求めた沖縄の民意に反する行動であったことは間違いない。
河井氏の辞任を受け、安倍晋三首相は「任命したのは私だ。こうした結果となり責任を痛感している」と述べた。
では任命責任をどう取るつもりなのか。責任を果たせなければ、何らかのペナルティーを負うのが一般的な理解だろう。これまで具体的に責任を取った形跡が見当たらない。任命責任の言葉の軽さに国民はうんざりしていよう。河井氏は数々の疑惑に対し説明すべきだ。逃げることは許されない。