【政界地獄耳】この時期しか…綱渡りの外交調整 首相・岸田文雄のウクライナ訪問 - 日刊スポーツ(2023年3月23日)

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★図らずもロシアとウクライナという戦争状態の両国に中国の習近平主席と首相・岸田文雄がそれぞれ訪問する事態になった。首相はウクライナ訪問に強いこだわりを見せたが、最大の問題点は警備問題だった。22日の会見で防衛相・浜田靖一は首相のウクライナ訪問で防衛省自衛隊は首相の移動や警護に関与しなかったと説明。米国がシークレットサービスや米軍を警備につける例などと比較して「自衛隊を我が国の要人警護のみを目的に海外に派遣する明示的な規定はない」としていただけに、そこがネックとなっていた。

★首相のインド訪問は自民党参院幹部が外相・林芳正参院での質疑を優先させたおわびだが、同時期に中国の訪ロが重なり、このタイミングしかない状態だった。時として戦況が悪化すれば訪問自体が問題視されかねず、ウクライナの警備陣にも迷惑がかかる。中ロ首脳会談と同時期ならばと水面下の外交調整の綱渡りがあったはずだ。22日、官房長官松野博一は首相のウクライナ訪問を事前にロシアに通告したかの問いに「外交上のやりとりであり、通告があったかどうかも含め差し控える」とした。また「慎重にウクライナ側との調整を重ね、急きょ準備が整ったため、やむを得ず国会への事前報告なしに訪問することとなった」と説明した。

★問題は会談の意義や中身だが、中ロ首脳会談は連携強化にとどまったものの、21日には米紙「ニューヨーク・タイムズ」(電子版)がこの1年で中国がロシアに総額1200万ドル(約16億2000万円)以上の無人機とその部品を供与したと報じた。これで中国の中立という立場はなくなったといえる。一方、日本は「ロシアの侵攻が続くウクライナへの揺るぎない支持」とこちらも表向きは何もないが、5億ドル(約675億円)の無償支援を決めた。オンザブーツの成果はいかに。(K)※敬称略