【政界地獄耳】戦争終結のための知恵と外交 - 日刊スポーツ(2023年3月24日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202303240000065.html

ウクライナを電撃訪問した首相・岸田文雄。23日、帰国早々「侵略の現場を自分の目で見、そして悲惨な体験をされた方から直接話を聞かせていただいた」「ロシアによるウクライナ侵略、これは国際秩序を揺るがす暴挙であるということを痛感した」「ゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナ支援の重要性を改めて感じたし、法の支配に基づく国際秩序を堅持しなければならないとの思いを新たにした」と思いを語った。同日午後の参院予算委員会でも首相は「ロシアの侵略を一刻も早く止めねばならず、我が国がリーダーシップを発揮しなければならない」としたが、その処方は語っていない。

★戦争開始から1年のタイミングでは、いささかお粗末な発言ではないか。本人がじかに足を運び、間近で見た戦争現場と被害者の声に思いが至るのはわかるが、G7議長国の首相としての発言としては寂しい限りだ。今求められるのは戦争終結のための知恵と政治外交だ。武器供与を求めるウクライナに対して我が国にはできないことも多い。だからといって経済支援の金額だけがかさんでいくことで国民の理解は得られるのか。首相は「きょうのウクライナはあすの東アジアかもしれない」と危機をあおる発言もしているが、その発言が新たな緊張と対立を生むことを注意深く見極めながら、それを乗り越える外交が本来ならば1年前から求められているはずだ。

★この1年間で我が国は戦争終結のためにロシアや、同国と関係を強める中国とどんな話し合いができているか。そもそもアプローチをする気があるのか。価値観を同じにする各国との絆を強める作業ばかり見せられてきたが、欧米の首脳はロシアへの直接対話も忘れてはいない。少なくとも極東ではロシアは隣国のひとつながら、経済でしかつながっていない資源のない国に、G7議長国として価値観の違う国との協調性や根回し、信頼関係の醸造などの振る舞いができるか。(K)※敬称略