【政界地獄耳】「差別禁止は逆差別」という理屈 - 日刊スポーツ(2023年2月14日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202302140000039.html

★16年に施行された「障害者差別解消法」の第1条で「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする」や19年施行の「アイヌ施策推進法」の第4条「何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」など当事者への差別禁止を盛り込んだ法律はすでにある。

★ところが超党派で進めてきた「LGBTなど性的少数者への理解増進法案」を自民党保守派が難色を示して頓挫して2年。当時反対派は「『差別を受けた』という訴訟が増えかねない」「男なのに女だと思って温泉に入ることが起こる」などと主張していた。知恵を出さずにつぶしたいのがわかる。7日、自民党総務会長・遠藤利明は会見で「(LGBTなどの)理解を増進することについての反対っていうのは、全くないと思っています」とまとめる方向で進み始めたように見せかけている。

★実際は「理解推進」でまとめて自民党以外が強く推す「差別は許されない」を文言に入れ込むことにはなお反対したい模様だ。同日、自民党政調会長代理・西田昌司は「差別の禁止や法的な措置を強化すると、一見よさそうに見えても人権侵害など逆の問題が出てくる」と差別を禁止すると逆差別になるという理屈を言い出している。つまり差別する側の主張も守れというわけだ。「差別を許すべきではない」。それによって社会の分断も起こらない。こんなことも決められない政党が保守派のとりでかのように言うことに強い違和感を持つ。(K)※敬称略