【政界地獄耳】素人のインフルエンサー使い世論誘導か - 日刊スポーツ(2022年12月16日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202212160000078.html

★防衛費増強という議論なのに防衛論は後回しで、その財源を増税国債かでもめる自民党自体の議論の組み立てが既に世論誘導といえる。そんな中、共同通信が「防衛省人工知能(AI)技術を使い、世論を誘導する工作の研究に着手した」と報じた。「インターネットで影響力がある『インフルエンサー』が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、反戦厭戦(えんせん)の機運を払拭したりする」のが目的という。

★防衛の専門家や防衛省詰めの専門記者ではなく素人のインフルエンサーを使うという。この防衛費増強も入り口は「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」という専門家会議が発端だが、ここには安全保障の専門家も憲法の専門家も入っておらず、代わりに日経、読売、朝日の新聞社幹部やそのOBが名前を連ねた。つまりド素人の有識者会議にメディア幹部を送り込み世論誘導をしていることに他ならない。現に各紙はそれに沿った論調を極め、また大先輩の下では現場の記者はぐうの音も出ないということか。

★それでいて防衛省は「全くの事実誤認であり、防衛省として、国内世論を特定の方向に誘導することを目的とした取り組みを行うことはありえない」と完全否定。首相・岸田文雄も「事実誤認であり得ない」と否定した。だが今回のウクライナ侵攻でもロシアの攻撃の口実を作る偽装工作やサイバー攻撃が多用されているし、中国でも「三戦」(世論戦、心理戦、法律戦)にAIを組み込むことは既に行われていて、防衛省にもグローバル戦略情報官がいるといわれる。確証バイアスという言葉がある。「人間の脳は自分が既に信じている事柄とつじつまの合う情報を求めてしまう。または都合の悪い事実、既に下した結論と整合性がとれない事実を意識的に知覚から排除するようになる」。情報の真偽を判断する能力がなければ、世論誘導せずとも誘導は可能だ。(K)※敬称略