【政界地獄耳】首相・岸田文雄の判断ミスを総括 誰のための国葬だったのか - 日刊スポーツ(2022年9月28日)

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国葬もつつがなく終わったので首相・岸田文雄国葬に至る判断ミスを総括してみよう。今回の国葬は岸田と前首相・菅義偉が一番納得したのではないか。驚いたのは昭恵夫人、岸田葬儀委員長、儀じょう隊と遺骨をあんなにバトンのようにつなぐものなのかな。さて7月8日、元首相が銃撃で命を落とすという衝撃は政界のみならず多くの国民にもショックを与えた。10日に参院選挙投開票。その直後に国民の動揺、党内の右派や安倍チルドレン、そして何より安倍派の動揺を落ち着かせ、保守派が納得するには14日の会見で「国葬」と言うしかなかったには同意する。

★無論そこに至るまでの官邸内の複雑なプロセスもあったことだろう。一部報道には党副総裁で安倍内閣の副総理を歴任した麻生太郎の「理屈じゃねえんだ」という鶴の一声もあったという。だが最初のミスは「国葬」=武道館という短絡さだ。武道館の空いている最短の日が9月27日で、2カ月以上先の日程を決めたことだ。これが7月中に行われていたら、また違う空気が流れていたのではないか。7月22日に国葬閣議決定。このころには国葬の法的根拠が問われ始めており、一方で説明すればするほど世論調査は反対が増えていった。官邸は学校は休みにしない、国民に弔意は求めないなど規模の縮小に努め、国葬という名の限りなく内閣・自民党葬の拡大版程度に収めようとしたが、結果、中途半端な印象を国民に与えた。

★致命的なのは8月30日、官房長官松野博一が会場周辺の警備費用など、支出を決めたおよそ2億5000万円に含まれないものは、「国葬が終わったあとに公表する」と言い出したことだ。東京五輪汚職のニュースが連日にぎわす中、政府が打ち出すざっくり予算を国民は信用しておらず、税金の運用に不信感を募らせた。結果、官邸は公表せざるを得なくなった。少なくとも岸田は「皆さんが想像する過去の『国葬』とは違う現代版の形を模索している」と一言添えればよかったのではないか。誰のための国葬だったのか。(K)※敬称略