【政界地獄耳】訪台は米外交の真骨頂 中国のけん制を米国は無視 - 日刊スポーツ(2022年8月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202208040000037.html

★2日、米ナンシー・ペロシ下院議長は中国の再三の警告にもかかわらず台湾を電撃訪問。午後10時44分、台北市松山空港に着陸した。台湾の外務省に当たる外交部の呉■(■は金ヘンにリットウ)燮・部長(外相)が政府を代表して空港まで出迎えた。ペロシは到着後に声明を発表し、「私たちの台湾訪問は、台湾の活力ある民主主義に対する米国の揺るぎない関与を履行するものだ」と表明した。

★同行メンバーは下院外交委員会のグレゴリー・ミークス委員長(民主党)、下院退役軍人委員会のマーク・タカノ委員長(民主党)、スーザンデルベネ下院議員、ラジャ・クリシュナムルティ下院議員、アンディ・キム下院議員(いずれも民主党)らがおり、一方、共和党のマコンネル院内総務を筆頭とする上院議員26人が同日、声明を発表し「議会が取り組んできた米国の『1つの中国』政策と一致するものだ」とペロシ訪台を支持すると表明した。中国サイドも反発を強める。ペロシの台湾到着直前には中国軍のSu-35戦闘機が台湾海峡上空を通過した。中国外務省はペロシ訪台を「重大な政治的な挑発で、中国は絶対に認めない」と猛反発。中国人民解放軍が4日から7日に台湾周辺の複数の空・海域で、実弾射撃を伴う「重要軍事演習」を行うとした。米海軍も台湾東方のフィリピン海に空母「ロナルド・レーガン」、ミサイル巡洋艦「アンティータム」、駆逐艦「ヒギンズ」、強襲揚陸艦トリポリ」が“通常”配備されている。

★中国内の台湾現状維持派に自信をつけさせ強行外交への不安を高める。戦争で経済低迷すれば国民は不満。いずれも秋の国家主席習近平3選を危うくする。中国政府はけん制だけで軍事行動は何もできない。しかも閣僚ではなく下院議長と同行議員団という顔ぶれ、24時間以内の滞在など、計算された一石を投じたといえる。中国は再三、訪台をけん制したが米国は無視したことも大きい。今回の訪問は米外交の真骨頂ではないか。(K)※敬称略