(政界地獄耳)「カネと権力」昭和の自民復活? - 日刊スポーツ(2020年9月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202009040000087.html

★首相・安倍晋三の退陣表明の後、間髪入れずに官房長官菅義偉を総裁候補に祭り上げるだけでなく、あっという間に派閥の根回しをして軽量級と見立てた自民党政調会長岸田文雄と同元幹事長・石破茂を追い込みながら総裁選出馬表明前に菅でまとめ上げた党幹事長・二階俊博の電光石火の動きはあっぱれというほかない。首相の総裁選2選、3選もいち早く二階が言い出し党内の流れを作った。その手法がズバリ当たった、かのように見えたが少し首尾がよすぎて流れが早すぎたのではないか。

★5派閥の支持を受けたというものの、2日、菅の出馬会見を待つ形で開かれた細田派会長の元幹事長・細田博之麻生派会長の副総理兼財務相麻生太郎竹下派会長の元総務会長・竹下亘がそろって会見を開き、菅支持を訴えたのは、裏を返せばこの3派がいなければ菅首班はないぞというけん制に他ならない。既に二階派の元官房長官河村建夫衆院議長の空手形が切られたという情報が駆け巡ると主流3派は反発。菅を支持している石原派の国対委員長森山裕は派閥の領袖ではないにもかかわらず、こちらも一本釣りで党総務会長人事の空手形が出たという。

★各派は首相と幹事長はあきらめるもののほかの人事では水面下の激しい駆け引きをしており、主要ポストの外堀も埋められていくのなら菅支持を白紙にするぞという覚悟の会見ということだろう。元首相・小渕恵三死後に森喜朗を密室で首相にした時よりも悪質だ。その意味では派閥の威厳を見せつけようとするものの、その風景は昭和の自民党のカネと権力で政治を進めていたころそのもの。公開で菅や二階にごねて見せ、ポストを得ようとするさまも痛々しい。党内の中堅・若手はこのざまを平気で見ているのかと思うと、自民党の将来も怪しいものだ。(K)※敬称略