【政界地獄耳】横浜市長選 制するのは組織か無所属か - 日刊スポーツ(2021年7月28日)

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横浜市長選挙は候補者が乱立することで話題だが、こんな事態を呼んだのは横浜財界の脆弱(ぜいじゃく)さと、地元政治の転換期が重なったからではないか。カジノ推進を掲げた現職市長・林文子を地元財界と自民党市会議員団は支援していたが、前国家公安委員長小此木八郎がカジノ反対を言い出して出馬すると多くの議員は小此木に流れた。おかしな話だが選挙になると起こりがちな事象だ。横浜市議団は小此木が当選後、カジノ反対の発言を翻すとでも思っているのだろうか。横浜市民も随分とばかにされたものだ。

市長選挙とはいえ横浜市は日本最大級の政令指定都市で、人口6月現在は377万9890人。21年度の市予算案は2兆円を超える。市外からのイメージは港ヨコハマだろうが内陸部も広い。市長選の構図は8日の告示まで候補者がどのくらい増えるかわからないが、主要候補は政党の支援がつくか、支援母体の構成を気にしていた。自民党も自民系候補が乱立気味だ。立憲民主党は出馬の相談を複数が受けていたようで分裂選挙の様相で連合、市民団体などがどこに相乗りすべきか組織力を売り物に考えていた。

★ところが出馬を表明している元長野県知事田中康夫サンデー毎日のインタビューで城山三郎の「無所属の時間」というエッセーを例に「会社を辞めたら年賀状が来なくなった。残業や宴会もなくなったが、家には居場所もない。無所属の時間だ。その時に初めて自分の居場所を求め、NPOやボランティア、町内会に参加、カントがいうところの『プライベートな時に最もパブリック』な人たちになる。そういう人たちが、今どこの街にも、もちろん横浜にもいて、カジノがきっかけで、いろんなことに気付き始めた」と述べている。政治の1歩は無所属の時間からではないか。そもそも有権者は圧倒的に組織でくくれる人たちばかりではない。(K)※敬称略