(政界地獄耳) オリンピックどころではない菅外交 - 日刊スポーツ(2021年4月19日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202104190000055.html

★日米首脳共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」は菅政権というよりも、バイデン政権の考え方で示唆するものが多いという印象だ。「たたき上げの政治家という共通点がある」「私と似ているような感じを受けたが、本人もそう思っているようで…」などの互いの人生についての“プライベート美談”はどうにもこうにも話題作りと最初に話す外国首脳という名刺代わりの演出といえようが、20分の首脳会談ではハンバーガーに手をつけられないのも無理もなく、片道10分で通訳入れたら1人5分で語りつくせるとは思えない。

★声明では「バイデン大統領は今夏、安全・安心なオリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅総理の努力を支持する。両首脳は、東京大会に向けて練習に励み、オリンピック精神を最も良く受け継ぐ形で競技に参加する日米両国の選手たちを誇りに思う」とした。外務省の涙ぐましい努力の結果だろうが、サキ米大統領報道官は、重ねてバイデン大統領の東京五輪開会式の出席に慎重姿勢を示している。会見では米国選手団の派遣についても具体的な約束や前向きな意向は示されたのかと問われたものの明確な答えはなかった。これでは五輪開催後押しのお墨付きとはならないだろう。

★やはり特筆すべきは首脳会談の共同声明で「台湾」を押し込んできたことだ。日米間で文言の駆け引きが相当あったことだろう。日本は米国側から対中戦略の最前線と位置づけられたのだろう。声明では国連海洋法条約に基づいてと幾度も出てくるが、米国は批准していない。いずれにせよ国家ビジョンを持たない首相の外交など国際社会から評価されることもなく、今度は中国からの攻撃に二枚舌を使うことになろう。できもしない外交で政権が破綻するなど五輪どころではない。(K)※敬称略