【政界地獄耳】バイデンの「常任理事国入り支持」は喜べるのか - 日刊スポーツ(2022年5月25日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202205250000089.html

★米バイデン大統領の訪日中の発言は、国際秩序に緊張をもたらし、思わせぶりで不安定な同盟関係や枠組み、連携のイメージを与えたが、的確に実現するものはさほどない。親米メディアはすべてがうまくいったというような論調だが、岸田政権であっても論評しにくい問題ばかりだ。日米首脳会談でバイデンは「日本が(国連の)常任理事国になることを支持する」と発言。

★日本はこういう発言に弱く単純に喜ぶが、現実的には先の大戦後に生まれた国連の持つ、敗戦国への敵国条項を外す作業から始めなくてはならない。そもそも日本は近隣の韓国、中国、ロシア、北朝鮮との外交がいずれも暗礁に乗り上げている。一部には仮想敵のような扱いもある。そのうち中国、ロシアは常任理事国だ。それを乗り越える外交力と政治的手腕を持ち合わせているか。今の常任理事国はいずれも核保有国だ。日本はそれをどう整理するつもりか。タカ派はここぞとばかりに常任理事国になれば核保有は当然と言い出すだろうが、それも近隣国の理解があってこそだろう。

常任理事国入りを目指すドイツと我が国は目的がかなうなら拒否権を返上するとしているが、そうなれば拒否権を理事国各国が放棄するよりも、拒否権を持たない準常任理事国としての認知が行われ、拡大常任理事国制度になりかねない。これでは本末転倒である。加えてバイデンは台湾有事の際、米国が軍事的に関与すると表明したうえで「我々の約束だ」と述べた。無論、既に同じ発言を2度行っている大統領発言にホワイトハウスのサキ報道官は手慣れた様子で10分後には「米国の台湾政策に変更はない」と打ち消している。いずれのバイデン発言も軍備増強が最大の目的でバイデンの武器商人としての役割は成功したとみるべきではないか。(K)※敬称略